4. 初めてのクエスト
グラタンは銀貨六十枚分だった。この世界の通貨についてはよく分からないが、銀貨一枚で十円といったところだろう。そう考えるとここのレストラン、結構リーズナブルな価格設定だ。
さて、腹も満たされたし、ギルドまで行くとしようか。とりあえず冒険者として登録してもらって、これからの生活について考えなければ。天界から貰ったあのスキルは、冒険者をするには不安そうなものだったけど、どうせそのうち金も尽きるんだし、それなら自分に最適であろう職についた方がいいだろう。
ギルドは、画面上の地図の文字が示すとおり、赤レンガ造りの建物だった。いくつか天使の絵が描かれたステンドグラスの窓がついており、門にはギルド、と書かれた立て札が置いてある。
ここから新たな生活が始まるんだ。
そう思いうと緊張するが、俺は意を決して、赤いドアを開けた。
「あら? 新しい方ですか?」
ギルドのお姉さんは、これまで読んできたラノベと同じように、美人だった。
長くて赤い髪を高い位置でくくっていて、笑うとできるえくぼが可愛らしい。
「あ、はい。そうなんです。登録してもらいたくて来たんですけど……」
「そうなんですね! じゃあ、そこの魔法陣の上に立っていただけますか?」
お姉さんが指さした方向には、青い魔法陣があった。異世界っぽいなぁと思いつつ、言われた通りにそこに立ったら、青い光が全身にぴたっと張り付く感じがした。めちゃくちゃなことを言っている気がするが、本当にそんな感じなのだ。
しばらくするとガガっと言う機械音が聞こえてきて、お姉さんにもういいですよ~、と言われる。
「そうですね。ダークホースっていうスキルが高いみたいですね。他は平均かな? 最適な役職は……冒険者ですね」
お姉さんは怪訝そうな顔をしつつも、俺のステータスについて書かれた紙を、渡してくれた。
「こんなステータスは初めて見たので、少し驚きました。ダークホースっていうスキルも初めて見ましたし」
お姉さんは、にっこりと笑うと、指輪を渡してくれた。銅色のもので、これがおそらく階級値になるんだろう。
「そちらの指輪は、あなたの冒険者としての身分証となります。絶対に無くさないで下さいね。ちなみに銅色は初心者のもので、ランクが上がるごとに、銀、金となっていきます」
指輪を指にはめると、丁度いい感じにフィットした。すごいな、異世界の技術。
そのまま俺は、礼を言って立ち去ろうとして、そして思い出した。聞かなきゃいけない事があったんだった。
「ちなみに今だったら、どんなクエストがオススメですか?」
一応この職業には、これからの俺の生活がかかってる。身分に相応しいクエストを知ることは、役立つはずだ。あと、自分で選ぶのが少し不安だった。
「山賊を捕まえることかなぁ。初心者にはスライム捕まえるのとかが良いんだけど、そんなクエストは今無いし、それにあなたのステータスだったら、行けるだろうから。もうちょっとステータスが上がれば、中級モンスターの討伐とかしてもいいと思うけどね」
バッチリウインクをしたお姉さんに、今度こそ俺は礼を言って、クエストの内容を確認し、ギルドを出た。
山賊かぁ。やっぱり異世界っぽいなぁ。俺は嬉嬉として、山へと向かった。