3. とりあえず街へ
無事に着替え終わり、準備も済んだ俺は、木の上から飛び降りた。昨日の夜のおかげでこんなこともできるようになったんだと考えれば、案外あの時間も無駄じゃなかったのかもしれない。寒かったけど。
「まずはギルド目指すか……」
あの画面は、いつの間にか自由に開けるようになっていた。ただ、開きたい、と思ったら、勝手に眼前に出てくる。物理的に触れることも可能で、便利だ。心を読まれてるんじゃないかと思うと結構怖いけど。
画面を開き、マップを出す。
ここから午後から南東に五キロほど歩いたところにGuildと赤い文字で書かれていた。
どうやらそこに辿り着くまでに二つほど街があるらしく、暴れだした腹の音に気づいた俺は、まずはそこで、腹ごしらえをすることにした。腹が減っては戦もできぬって言うくらいだ。早くギルドまで行きたかったが、こういう時は先人の言葉に従う方がいいだろう。
森を抜け、草原を歩く。そうして四十五分ほど歩いたところで、喧騒が聞こえてきた。街が近いんだろう。
そこからさらに十五分ほど歩くと、おそらく街の入り口らしい門が見えてきた。様子を見る限り、ビザみたいなものは、必要ないようだ。
街はよく見る西洋系で、色んな髪色の人達がいた。なんというか、壮観。それに、いつもアニメや漫画で見ていたものを間近で体験すると、結構感激する。
言語や文字は理解することができたから、地図や標識を頼りにレストランらしきところへ向かうと、中から良い匂いが漂ってくる。中に入ると、木でできた椅子や机が置いてあり、質素なわりに清潔に保たれていた。これは当たりだな。
ウェイトレスがメニューを運んできたので、中を覗き込むと、日本と同じように、料理の写真と説明が書かれていた。シチューから得体の知れないものまで、種類は様々だ。
無難なグラタンを選びとると、案外早く運ばれてきた。
熱々のそれを口に運ぶと、とろりとしたまろやかなチーズと、ホワイトソースの味がした。具も日本とあまり変わらないようだ。うん。美味しい。
俺はこれからの生活に思いを馳せつつ、スプーンを口に運んだ。