表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/22

2. 神様からのプレゼント

 ……これからどうしよう。

 

 深い森の中、俺は途方に暮れていた。理由は簡単。金がないからだ。よく考えればあの爺さん、こちらに転生してからのことは何も教えてくれなかった。

  あれ以来あの画面の開き方も分からずじまいで、装備品すら分からない。


「普通だったらギルドとか行くんだけどなぁ。けどたぶん今深夜なんだよなぁ」


  爺さんよ、時間と場所のことは本当に考えてほしかった。


「とりあえず森から出ないとどうしようもないか」


  俺はゆっくりと立ち上がった。ひんやりとしていて生温いという絶妙なバランスの風が、体を撫ぜる。こんな風を味わったのは、小学校のプール開きのとき以来だ。

  そこまで考えて、俺ははっと、気づいた。


  ーー俺、水着のまんまじゃん。しかも、濡れてんじゃん。


  このまま街に行けば、確実に痴漢扱いされるだろう。


  爺さん、出来れば服のことまで気を回してほしかったです。


  *

  結局俺は、街に出ることもできず、かと言って森に留まるわけにもいかず、という最悪な状況のせいで、森の出口付近で朝まで過ごす羽目になった。

  ついでに地面にうずくまっていたらモグラみたいなのが襲ってきたから、木の上で過ごすことになった。武器の材料探しをしようにも、真っ暗でほとんど周りが見えず、それも叶わなかった。楽しい異世界ライフじゃなかったのかよ。

  収穫は木の上は案外安心できるということが分かったことと、木登りのリアルなスキルが上がったことだ。


  木の上でうずくまりながらため息を吐き、寝不足でガンガンする目を血走らせながら開いていると、突如あの画面が戻ってきた。

  待ちに待った再開に、おおっ、と声が漏れる。


『こんにちは。聖さん』


  浮かび上がった画面に、そういえばさっきはこんな挨拶出てこなかったなぁ、と思い出す。


『ただ今から、この画面を自由に使えるよう設定されました』


  まじかよ。神様。そんな設定さえもしてなかったのかよ。道理でずっと使えなかったわけだ。


『聖さん、貴方の役職は冒険者です』


  なるほど。やはりギルドに行くというので正解だったらしい。


『天界で習得したスキルは、ダークホース。共闘している仲間の灯りを消すことができます』


  あれ? あんまり意味なくね? ダークホースとかいう強そうな名前のスキルの割に、全然意味なくね? それともあれか、一見無意味に見えるけど、実はめちゃくちゃ有能でしたってオチのやつか?


『また先程神様からメッセージとプレゼントが届きました。ご確認ください』


  プレゼント、かぁ。一体何なんだろう。画面に表示されているメッセージマークを押すと、メールボックスの様なものが開いた。隣にはプレゼントのマークがついている。どうやらここを押せば、プレゼント一覧が開くらしい。


『聖へ


  プレゼントのお金と服を送るのを忘れていました。感慨深いことに、今日からあなたもその世界の住人です。

 じゃあ、頑張ってねぇ』


  神様、なんてもの忘れてんだ。おかげでこっちは夜通し水着で木登りするっていう何かよく分からないプレイに興ずることになったんだぞ。


  俺はメッセージを閉じると、プレゼントマークを押した。中には、銀貨1000枚と白いフードローブに、黒い戦闘服、それに短剣が入っていた。


  爺さんは、案外太っ腹で案外センスが良かった。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ