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21. アオハル

「そんな噂は知りませんが……」


  ドアを開けるとあの赤髪の女ーーオリヴィア・ミラーは目を見開いた。


「いや、その……」


  口をもごもごさせたあと、気まずそうに人間違いでした、と言って、去っていく。


「一体何だっていうの?」


  隣で翡翠が呟いた。






 *

「じゃ、これで。今までありがとうございました」


「ありがとうございました」


  礼を言い、翡翠と共に頭を下げると、目の前にいる切りっぱなしのおかっぱの男が、にや、と食えない笑みを浮かべた。我が素晴らしきアパートの大家だ。


「いやぁ、星賀さんもだいぶ丸くなられましたね」


「はぁ」


  突然変なことを言われ、怪訝な顔をすると、彼はさらに大きく口を歪める。


「翡翠さんの、おかげですかね」


「どういう意味ですか?」


「そのままの意味ですよ。近頃アオハル、なんて言ってるやつです」


  アオハルって言葉、この国にもあるんだな。


「やだなぁ、そんな」


  そして翡翠は何で照れてるんだ。


「また手紙、くださいね」


「良いんですか?」


「ええ、是非。もちろん」


  いつの間にか仲良くなっていたらしい翡翠と大家が、意気投合している。ていうか、文通してたのかよ。そして話は、近頃起きた事件やへ噂話、今日の天気へと発展していっていた。


「行くぞ、翡翠」


  翡翠と大家の止まらない世間話にどうにか中断し、大家に頭を下げてから、翡翠の手を引いて歩き出した。


「いやぁ、青春とはやはり素晴らしい」


  一人残された大家は、そんなことを独りごちた。





 *

「懐かしいね、この道も」


  山の中の、村までの道を辿りながら、翡翠が感慨深げに呟いた。


「そうだな。もう半年になるからな」


  この道を最後に通ってからの毎日は、決していい思い出ばかりではなかった。けれど、どうしようもなく素晴らしい日々であったことは確かだ。最後の方は安定していたし、それにたくさんのことを経験できた。

  たとえこの先本当に翡翠の村が戦場になるとして、実戦の前に、シュミレーションとしてゴブリンやスライム、それに中級モンスターなどと戦えたことも大きい。


「そういえば、あの件についての詳しい話については、村についてから話すわね」

 

「作戦とかか?」


「えぇ、そうよ。熊五郎さんとかと一緒に考えたの」


「でも余裕なんじゃないの? 翡翠だってあれだけ身体能力高いんだし」


「そんなことないわ」


  翡翠がぶんぶんと首を振る。


「私達白夜族は総勢五十人。それに対して相手は推定数万人ほど。しかも、向こうは銃を使える」


「白夜族の村にはないのか?」


「あるわけないじゃない。万年金欠なのに」


  ちょっと待て。それ結構やばくないか?

 

 

 

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