17. 旅はまだ始まったばかり
「なぁ、これからどうするんだ?」
「とりあえず街に行く。で、私はギルドで冒険者登録してもらう。聖はもう登録済みなのよね?」
「ああ、まぁな。ほんと冒険者の指輪を残してくれていて助かったよ」
「あ、その銅色のやつ?」
「そうそう」
先程村に行くまでに来た道を引き返し、俺達はここから一番近い街へと向かっていた。
翡翠の計画では、とりあえず一年間冒険者として生きていくつもりらしい。お金も必要だしな。
「まぁ今は夜中だから、どこかに泊まろう。山の中は危険だもの」
「こんな夜中に泊まれるところあるのか?」
「この前偶然見つけたの」
今は大体十一時半くらいだ。そんな予約なしで泊まれるところあるんだな。
ふぅん、と返事をして俺らは翡翠のおかげでいくらか明るい山道を下って行った。
「ここ」
街に着き、十五分ほど歩いたところに、その店はあった。大通りから少し離れた裏手にあり、全体にぴんくぴんくしていて、お城みたいな外観で……
「あ、やってそう。じゃあ、中入ろっか」
嬉々として中に入ろうとした翡翠を、俺は全力で止めた。
「え、どうしたの?」
こてん、と彼女は可愛らしく首を傾けているが、本当に気づいてないんだろうか。
看板に書かれたホテルの文字の前の、loveという存在に。
「翡翠、ちょっと理由は説明できないんだけど、他のホテル探して、どこもやってなかったらここ泊まろう、な? そうしよう」
俺は有無を言わさず翡翠を引っ張り、健全なホテルを探し求めて歩き出した。ていうか、異世界にもあるんだな、こういうの。
「ねぇ、ちょっとどうしちゃったわけ?」
翡翠は不満そうだ。いや、もちろんそういう意味じゃないだろう。後ろからあそこ可愛かったのにだの、ご飯美味しそうだったのにだの、可愛らしいボヤキが聞こえてくるから。
結局一時間近く辺りをさまよったが、他にやってそうなところはなかった。諦めるしかないか。それに、よく友達同士で泊まりに来る人もいるって言うじゃん。いや、男女の間はないか。
まぁでも、部屋も違うだろうし、さすがに……
「あの、部屋は同じでお願いします」
ホテルの受付でにこにことそう告げた翡翠に、思わず溜め息をついた。一応説得しようと試みるが、だってお金足りないじゃん、と至極ご最もな答えを返された。いやまぁそうなんだけどさ。
「やった! ね、お風呂上がったあとアイス食べよう! それくらいのお金はあるよね。これから貯金するつもりだし……」
部屋へと向かいながらはしゃぐ翡翠を横目に、俺は悟りを開いた。
翡翠、いくつだっけ。確か十六だったよな。
意外と子供っぽい主人との旅は、まだ始まったばかりだ。




