14. 発光人間
夕日が落ちかけた山の中を、翡翠に手を引かれながら俺は歩いた。
翡翠は先程の件から何も喋らず、俺と彼女の間には、妙に重ぃ空気が流れている。
「なぁ、翡翠」
けれどこのまま二人黙りっぱなしと言うわけにも行かないので、口を開くと、翡翠は不機嫌そうな顔をして振り返った。
「何?」
「あのさ、さっきあの金髪が言ってた"発光人間"ってどういうこと?」
グダグダと色々考えたが、結局率直に聞くことにした。
翡翠はため息をつく。
それからまた俺の手を引いて歩きだすと、分かった、と呟いた。どの道話さなきゃいけないことだし。
「あのね、私達は、普通の人間じゃないの」
「あ、それは分かる。さっきからなんか翡翠、光ってるし」
暗くなるにつれて彼女の体はぽやぽやと発光していた。
「これは、私達の村にある伝記に書かれていた話なんだけどね。昔、ここから西に遠く離れた地域で、大規模な飢饉があったの」
翡翠はそっと話し出した。
「そこでは全然食べるものがなくて、一日生きるのにも精一杯。それで、生存競争が盛んでさ、そんな状況の中で、ある一つの生物が生まれた」
そこでまた立ち止まり、俺の方を振り返る。
「白夜族ーーすなわち、"発光人間"」
「その種の生物はね、体力とか走る速さとかの身体的能力が、普通の人間に比べて凄まじく優れていた。だけど、いかんせん数が少なかったのね。結局普通の人間達から迫害されて、自分達の村を作り始めた」
思ったより壮大な話で驚いた。
「それでね、私はその村の村長で、あなたには一つして欲しいことがあって、買ったの。その内容は今話せないけど。村人達には話は通してあるから、大丈夫。けれど、もしかしたらしばらくは危ない目に合うだろうから、私から離れないで。彼らは人間を憎んでる」
翡翠が言い切った瞬間、日が落ちて、周りが真っ暗になった。彼女の輝きが、一気に増す。
「もうこんな時間か」
呟いた彼女は、おそろいだね、と笑いながら、白いフードロープを着た。自分が発光人間であるということを、カムフラージュするためのものだろう。




