11. 運命ってやつじゃない?
「待って、どんなスキルが増えたの?」
混乱したような表情のまま翡翠がそう言った。
正直俺だって事の顛末をよく理解してはいないのだが、と前置きして口を開く。
その瞬間、背中に強い衝撃を感じて俺は気を失った。
目が覚めると、天国にいて、椅子に座っていた。ロリ声爺のいたところだ。いや待てよ。あそこで死ぬのかよ俺、ついてなさすぎだろ。まぁ今まで散々酷い目にあってきたから、あの世界に関してもう何も思うことはないのだが。せめて翡翠ともうちょっとしゃべってもうちょっと仲良くなってから死にたかった。
「おい爺」
姿のないあいつを呼ぶ俺の声は、自分でも驚くほど低かった。よくよく考えてみれば、間違いはここに来たところから始まっている気がする。
「何が爺よ」
果たして現れたのは、豪奢なフリルのついた水色のドレスを着た少女だった。髪も水色で長く、細い三つ編みにしたりそれを二つ括りみたいに括ったりと結構手の込んだ髪型をしている。可愛い。
いや待てそうじゃなくて、あの爺はどうしたんだ。
「あの、前の方は?」
「あたしよ」
堂々と胸を張って言う彼女に、俺ははぁ、ととりあえず頷く。全く話が飲み込めない。
「あまりに年取っちゃったから、神の力をもってして転生したの」
あれ? もしかして。
俺の頭には恐ろしい考えが浮かんだ。
「あの、女性だったんですか?」
「ええ、そう」
あのロリ声爺は、ロリ声婆だったわけだ。
「もしかして今まで勘違いしてたの?」
「いや、まぁ、はい」
「全く」
女の子はため息を吐いた。可愛い。
「とりあえず貴方の今の状況を見せるよ。あ、大丈夫。あそこの世界の時は止めてるから」
さらりとチート発言をした後、神様はどこからかリモコンを出し、ボタンを押した。
俺の目の前に監視カメラのような画像が浮かび上がる。
その中の俺は翡翠に抱えられていて、翡翠が睨んでいるその目線の先には、あの憎むべき金髪碧眼と、前よりもさらに増えた女達がいた。
彼の姿を目に収めた瞬間、無意識の内に手を握りしめたせいで爪が掌に突き刺さり、血が流れ出した。
「相当お怒りね」
神様が言う。
そりゃそうだ。彼らみたいな人間には、今まで酷い扱いしかされていない。
それに、俺はあいつらに俺という何かを、殺されたんだ。
恨みが募るのも、仕方ないと思う。
「貴方の表情筋、久しぶりに仕事してるわよ」
神様は俺を横目で見たあと、不意に人差し指を立てた。
「さてここからが本題」
俺が画面から視線を戻し、彼女と目を合わせると、にっこりと笑う。
「今日貴方は翡翠ちゃんと手を繋いで、レベル999になったじゃない?それで、貴方のスキルの上限解放されたでしょう?」
こくり、と頷く。
「そのことについていつかは夢枕にでもたって説明しようと思ったんだけど、丁度いい感じに死にかけてくれたから、今説明するわね」
また頷く。……いやちょっと待て、俺死にかけてんのかよ。
「あのね、貴方のスキルはね、どんな神スキルでも手に入れられる素晴らしいものなのよ」
「じゃあ俺の仮説は合ってたのか?」
「たぶんね。ただちょっと違うかも」
怪訝そうな顔をしていたのか、神様が吹き出す。
「ダークホースは、貴方が思い描いたスキルが、手に入れられるっていうものよ。だからスキル一覧には何も書かれてないし、だけどレベル的には超ハイスペックだから、999っていう風になってる。ただこのスキルを使うには、二つ条件がある」
神様は先程まで上げていた人差し指に、中指を加えた。こちらから見れば、ピースしているように見える。
「まず一つ、翡翠ちゃんのいるところでしか、発動できない」
「えっとそ……」
俺が口を挟む前に、神様は続けた。
「次に、翡翠ちゃんのいるところ以外で発動するには、そのスキルを百回使わなければならない。大変そうに聞こえるけど、これでもかなりのチートだと思うわよ。たぶんここが貴方の思い描いていたものと違うんでしょう」
俺は頷いた。全くその通りだ。
ただ、納得できないことが一つ。
「あの、聞きたいことが一つあって……何で翡翠なんですか? 何で翡翠と手を繋いで俺のスキルは覚醒したんですか?」
神様は顎に手を当ててしばらく考えるような表情をした。それから、ぽんと手を叩く。
「運命ってやつじゃない?」
神様がそう言った瞬間、俺は下界に戻るための眩い光に包まれた。
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