10. ダークホース、というスキルについて
「一体どうしたの?」
「翡翠、ほんとに魔法、使ってないのか?」
「どういうこと?」
俺は、後ろを振り向いて言った。
「レベルが、999になった」
しばらく呆然としてから、ワンテンポ遅れて翡翠がはぁぁぁぁ!? と叫ぶ。クールに見えたのに、意外な反応だ。
「使えるスキルも増えたみたいだ。ちょっと見てみる」
口を開いたまま固まっている翡翠にそう告げ、俺は赤く点滅するスキルの画面をタップした。けれどスキル一覧、という表示がされたところには、ダークホース以外は誰もが持ってる超基本的なものばかり。新たに増えてるスキルなんてない。
ねぇちょっと、どういうこと? ねぇほんとどういうこと? と言いながら、俺をがくがく揺らす翡翠はとりあえず置いといて、何でこんな現象が起きたのか考えるのが先決だろう。
俺のチートになったレベルの起爆剤となったものーーそれはもちろん翡翠と手を繋いだ、ということで間違いないだろう。あの瞬間に、俺のレベルやスキルが急上昇し、そしておそらくその変化についていけなかった体が、異変を起こした。その結果が、あの全身の痛みや嘔吐だった、と考えれば、辻褄が合う。
じゃあ次は、どうして翡翠と手を繋いだらレベルが、上がったのか、という議題になるのだろうが、それは今のところ不明。翡翠も本当に魔法を使ってないようだし。
最後に、あのダークホースのスキルカンストと、上限解放について。それはダークホース、というスキルが、"共闘している仲間の灯りを消すことができる" というものだけではないと考えるべきか。
もしダークホース、というスキルがその言葉通り、"内容はよく分からないが、有力だと思われるスキル" だとしたらどうなる? つまり、あのスキルはーー
思い至った瞬間、俺はまだ俺の肩を揺らし続ける翡翠をどうにか止め、彼女に結論を伝えた。
「合っているかどうかは、分からない。けれど、一つだけ頭を掠めたことがある」
彼女は、こくこくと頷いた。長い翡翠色の髪が揺れる。
「俺の持っているスキルーーダークホースは、チートなのかもしれない」
は? と言う言葉が、彼女の顔にありありと浮かんだ。
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