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9. チートになった件について

  少女に買われることが正式に決まり、色々な説明を受けた。例えば、俺が奴隷である証拠として、首輪をつけなければならないということ。飼い主の意思に反した場合、これが首を締め、奴隷を殺してしまうのだそうだ。なんとも恐ろしいものである。

  それから、俺の詳しいレベルやスキルなんかの説明。体力や筋力に関しては、思ったより上がっていた。まじであの液体何入ってたんだろう。

  そういえば奴隷商によれば、俺は約一年半、あの奴隷小屋にいたのだそうだ。俺がこの世界にやってきたのは、十五歳と六ヶ月だったから……丁度俺は今、十七歳だという計算になる。

あと、お互いの自己紹介。彼女は、翡翠というらしい。苗字はないようだった。

 

  こうして全ての段取りを終え、あとは翡翠の家に帰るだけになった。





 *

  外の世界は、さすがに眩しく見えた。

  今まで冷たい温度の鉄に塗れて生活していたから、余計にそう感じるのかもしれない。夕日を見た暁には、まるで地球の神秘に出会ったような感動を覚えた。涙さえ、出そうになった。

 

  俺も大人になったなぁ。


  ふとそう感じる。今までの俺ならきっと、夕日を見て感動などしなかった。もし一年前の俺なら、あのボロ小屋から出てきたところで、早くゲームしたいなぁ、なんて思ったことだろう。一年半で、随分荒波に揉まれたもんだ。


「どうしたの? 早く行こう?」


  数歩前を歩いている翡翠が、振り返って言った。

  心の中で夕日に包まれた奴隷小屋に別れを告げ、彼女に続いて歩きだす。


  こんなに歩くのが久しぶりで、俺の速度はかなり遅めだった。

  翡翠は根気強く付き合ってくれていたが、途中で痺れを切らしだした。分かる。分かるよ。だって自分でも遅すぎて歩くの嫌になる。

  翡翠が、そっと俺に手を差し出した。とりあえず引っ張るから、早く歩けということらしい。

  けれど、一つ問題があったんだ。俺は、奴隷。彼女は、主人。果たして、これで良いんだろうか。翡翠が良いなら、助かるんだけど。


「あの、翡翠様……」

「様は、入らない。それに敬語はやめてくれても、大丈夫。というか、そっちの方が、ありがたい。私はあなたのことを、奴隷として買ったわけじゃないの。もちろん、払ったお金の分は働いて貰わないと困るけど」


  驚いた。だから俺に対してずっと、あんな態度だったのかもしれない。

  俺は頷き、彼女の白く細い手に俺の手を重ねた。





  その瞬間だった。





  急激な目眩が襲ってきて、思わずしゃがみこんだ。目がどくどくと脈打ち、痛い。全身が燃えるように熱く、気持ち悪い。目を瞑り、その場に蹲ると急に込み上げてきた嘔気に耐えきれず、少し吐いてしまった。隣で翡翠が慌てた声を出し、背中をさすってくれる。大丈夫? や、手を握るのが嫌だったんなら言ってね、などと彼女が言う声も聞こえた。目の振動は次第に全身に伝わってきて、筋肉が痙攣する。上手く息ができずに過呼吸気味になり、もう死ぬかもしれないと思ったその瞬間だった。


  突然、全ての症状が収まり、開けた目の前に翡翠の心配そうな顔と、あの画面が現れた。


  ただそれは、いつもと同じようなものではなくて、真っ白なまま、固まっていた。


  『深刻なエラーが、発生いたしました』


  しばらくしてそんな画面がいくつも、まるでパソコンのエラーのように、重なった。


「翡翠……」


  震える声で呼びかけると、彼女は大袈裟に首を傾げた。


「何か魔法、使った……?」

「私は魔法、使えないわ」


  きっぱり言い切った彼女に、そうなのだろう、ととりあえず納得する。


  いつの間にか画面は、黒くなっていて、真ん中を翡翠色のボールが弾んでいた。一体何なんだ。


  見守るしかないな、と腹を括り、もうちょっとだけ待って、と翡翠に告げ、辛抱強く待つことにした。仕方がない。不安要素は全て取り除いておくべき、というのは、この世界に来てから俺が、一番身に染みて感じたことだ。


『ダークホースのスキルが、カンストしました』


  しばらくして画面にそんな文字が現れた。どういうことだ?


『ダークホース、の上限が解放されました』


  続いて、そんなことが表示される


『たくさんのスキルを、獲得しました』


  いや、適当だな。


『聖さん、あなたのレベルは、999になりました』


  俺は叫び声を上げ、腰を抜かした。これは今生で一番、驚いたことかもしれない。

 





読んでくださってありがとうございます。

続きが気になると思っていただけましたら、ブクマ、評価、感想、レビューをぜひお願いいたします!(全力の土下座)(•ᵕᴗᵕ•)


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