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異形

竪穴式住居など古代の集落を丸々再現したテーマパーク?

というようなところに

両親に連れられて行った時のことだ。


竪穴式住居が綺麗に横に並ぶ集落内の道を

それほど多くない他の客の背中を見ながら

自分は歩いていた。

父親か母親に手を繋いでもらっていて

とくに、楽しくも、つまらなくもなかったと思う。

遠くには、集落を大きく囲う木造の柵が見えていて

この光景に似つかわしくない大きなアドバルーンも浮かんでいた。

五歳くらいだったはずの自分は

たぶん、お腹すいたなとか、遊ぶ場所は

ここにはないのかなとか、そういう他愛のないこと

を考えていたような朧げな記憶がある。

着ぐるみのマスコットキャラクターが

遠くから歩いてきて

自分に手を振りながら、すれ違った。

緑色だったか、オレンジだったか記憶は定かではない。

たぶん、獣人だった気がする。

テーマパークのテーマとは、合ってない。

なので、もしかすると記憶違いかもしれない。

ボーっとその着ぐるみと

すれ違ったすぐ後だったと思う。


三メートルほどの……いや、もっと高かったかもしれない。

その異形は現れた。

小学校低学年の子供が、図工で粘土で造ったような

長い粘土を組み合わせて作ったような

身体と手足、そして頭、その頭には

落書きのような黒髪と目鼻が"描かれていた"

その異形の人型は、やたら長い手を伸ばして

普通の格好をした五十台後半の母親らしき人と手を繋いでいて

細長い手足をブラブラと揺らして

自分の横を悠然と通り過ぎて行った。

唖然として、見上げて、それからショックで

家に帰りついても、家族には何も言えなかった。


小学校高学年くらいになり、言葉もそれなりに使えるようになり

それとなく、あの遺跡のテーマパークで

変なものを見たんだけど、見てない?

と両親に尋ねても

「疲れてたんじゃないの?」

と気にもされなかった。

その後、色々と知っていくにつれ

子供のうちは、頭蓋骨に隙間があって脳の働きが

大人とは違うと知った。

幻覚や幻聴を見やすいらしい。

隙間が閉じられると、そういうものも無くなるとのことだ。

さらに、記憶は取り出すごとに

都合よく書き換えられていくということも知った。

つまり、自分が見た異形は

最初は違う形だったのかもしれない。

二メートルくらいの長身の男性を見て

見慣れていないので驚いてしまい、その後思い出すたびに

記憶が歪められ、最終的にはあのような異形だと

思い込んだのかもしれない。

そうだと思いたい。


という、特にオチの無い創作怪談。

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