窓の外には沢山の
宿屋 渡り鳥のねぐら亭のテーブル席で床につかない両足をブラブラと揺らしながら窓の外をぼーっと眺めているハーフリングの男。 故買屋エド 小鬼のエド うっかりエド 裏社会では様々な呼び名で呼ばれる男。
「外はいい天気だねー。他の客は朝から仕事に出てったがあんたは相変わらずだねー。退屈じゃないのかい?」老店主が男の前に生ぬるいであろうエールをそっと置く。
「まぁ人それぞれだよ。」エールを手にとり窓の外を眺めながらエドは話す。
老店主は店のカウンターに戻り宿の帳簿の確認をしながらエドという男に目をやる。かれこれ3ヶ月になるだろうか、この男が宿にやってきたのは。宿に来た日に2年は泊まれるだろう金額を私に渡して「これで部屋を貸してほしい。期限はわからんから足りなくなったら言ってほしい。」そう言って宿に来てからは外には殆ど出たことがなく食堂の窓際のテーブルに一日中座って外を眺める男。たまに男に会いに来る者が訪れる事があるがそれでも来客に目を向けることも少なく窓から外を見ながら話している。不思議な男だと思いながらら老店主は再び帳簿の確認をしだした。
エドは窓の外を見ていた。外には様々な種族の者で賑わっている。誰と誰が話をしている 誰と誰が争っている 今日も誰が通った 誰が来てない 何人通って誰を見かけない 見たこともない奴がいないか ギルドの奴がいないか 美味しい匂いをした奴はいないか 金の匂い 楽しいことはないか 窓の外には沢山の情報が行き交っている。
エドは外を見ながらそんな事をぼーっと今日も考えている。