名前はエド
「なぁあんた、今日もぼーっとしてるだけだが何やってる人なんだい?」とテーブルに生ぬるいであろうエールを起きながらヒューマンの老店主が俺に声をかける。
「んー、まぁいろいろだよいろいろ。」
俺は老店主を見ることも無くエールを手に持ち窓の外を眺めながら答えた。
俺はエド。種族はハーフリングで盗賊ギルドに入るかたわら個人で故買屋をやってる。まぁ最近ではギルドの仕事も片手間しかやっていなくて故買屋がメインではあるのだが。
「ちょっといいかしら?」窓から外を眺めていると俺が座っているテーブルの向かいに1人のダークエルフの女が座る。
「あぁ。」俺が短く答えると女は俺に向けて一振の剣をテーブルの上を滑らせた。
「それを買って欲しいのよ。それ相応の剣だと思うのだけれど私には扱えないし手っ取り早くお金に変えた方がいいしね。」
俺はテーブルの上に置かれた剣に目をやり鑑定をかける。
『戦鬼の剣 盗品 持ち主 バートン卿』
まぁ俺の所に持ち込む自体が普通のものでは無いことぐらいはわかってたのだが。
「 クックック・・・これはまた厄介そうなものを持ち込んできたな。お前、これは元々がギルドからの依頼されたもんだろう?」俺は思わず笑いながら女に言う。
「そうよ、でもギルドの奴ら私が目撃されたからって安く買い叩いてきたのよ!バカにしてるは!こっちは命からがら仕事してきてたのに!だからあんたに売ってその金で違う国に移ってやり直すのよ!」と女は俺に向けて声を荒らげて言う。
まぁギルドの奴らからしたら目撃されたら買い手がつくまでの時間もない為、安く買ってしまいたいのだろう。目の前の女がアホなだけだし。でも俺ならまぁ捌けなくもない。「良いだろう。買ってやるよ。値段は300万、それとエストワール公国まで身柄の安全だ。逃がしてやる代わりに向こうで仕事を頼みたい。仕事内容は追って連絡する。」俺はそう言い女に金を渡すし、窓から店の外に待機していたビースト種の男女の2人組に合図を送る。
「店の外に俺の知り合いのビーストが2人待機してる。そいつらは公国に商隊のメンバーという形で向かうのだがその商隊メンバーにお前も登録してある。ほらほら急げ、領主がお前を探してるぞ、エルシヤ嬢。」俺は初めて女に目を向けるとダークエルフの女 エルシヤは大きく目を開き驚いていた。
「なんで私の名を知っている。話からすると私がここに来ることを知っていたのか!」
「俺は故買屋だ。色んなものを扱っているよ。盗品に人に、それに情報さ。」俺はそれだけ伝えると興味をなくしテーブルの上の商品をストレージにしまい、さらにぬるくなったエールを一気に飲み干して再び窓の外を眺めた。