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雑魚の威勢と虚勢

書いていて面白かったです。

頂いた意見を参考に書いてみました。

◎第二話 雑魚の威勢と虚勢


 時刻は六時半。いつもと同じように設定してあるアラームに起こされて一日が始まった。

 だがいつもと違うことが二つある。

 顔を洗いに洗面台に向かって、寝ぼけた顔で鏡を見た。


 「やっぱ腫れてるわぁ」

 一つはこの痛々しい顔。

 これは俺が昨日、暴力沙汰の事件を起こしてしまった動かぬ証拠だ。

  朝起きて、「あっれー今日は顔がむくんでるー」って誤魔化して現実逃避できるようなレベルの腫れ方でない。

 尚且つシンプルに痛い…

 手のひらを当ててみるとヒリヒリした。顔全体に熱を帯びているようにも感じる。


 途中で俺が正気に戻った時には、なんの抵抗も出来なくてただ、ぼこされるだけだった。

 それにしても、あれは何だったんだ。あの力がみなぎる様な感覚は。

 実際、途中まで奴ら二人にも引かず太刀打ちできてた、、これってもしかして俺の能力?

 いや、痛い妄想はやめよう。中二病じゃあるまいし。


 顔を洗って手早く朝食の準備を始めた。

 八神家は四人家族。

 親父は単身赴任で家に居ない。

 母さんは家にはいるが看護師で早番やら遅番で忙しく、俺と妹で家事を分担して行っている。

 作った料理をテーブルにセッティングしたとこで、妹も起きてきた。

 

 八神瑞樹、中三だ。

 とにかく口数が少ない。小学生の高学年辺りから、瑞樹が感情的になっているところも一度も見てない気がする。

 「今日、当番私、」

 「おはよ、瑞樹。いいんだよ。どうせ今日暇だし。」

 「ありがとう。」

 俺なんかより真面目でとてもしっかりしているが多感な時期だ。

 親父や母さんがいない分、瑞樹が安心できるように悩みや相談も聞いてあげたいんだがなかなか腹を割って話してくれない。

 やっぱ俺が頼りないせいか、そうなのか、

 「顔、」

 「ん?顔?」

 「大丈夫なの」

 「あ、う、うん。大丈夫。心配してくれてありがとな。」

 「そう」


 瑞樹から声かけて心配してくれるなんて、どんだけ俺の顔酷いの。

 「瑞樹は最近学校どうだ?」

 「普通」

 「そうか、なんかあったら俺に言えよ」

 瑞樹は無言で頷いた。


 「あ、あのよ瑞樹…」

 「なに?」

 「あの、実は俺な昨日…」

 「知ってる、喧嘩で先に手出したんでしょ」

 「み、瑞樹、お前なんで知ってんだ?」

 「昨日和樹がここで夜遅くにお母さんに怒られてたから、聞こえた。」

 そうか、なるほど。

 学校に親も呼ばれ担任と校長に怒られて、情けない、俺は何してんだホントに。

 「でも意外。」

 「俺も意外だよ、こんなことしちまうなんて。」

 「なにか大きな理由があったんでしょ?」

 「いや、こんな事件起こしちまったら、言い訳なんて通用しない。傍から見たら喧嘩吹っ掛けてボコられた痛いやつだ。」

 確かに奴らがやったことは、だれが見てもムカつくし許せないことだ。

 殴られても文句は言えないと思う。

 だけどそんなこと、言い訳するのは、見苦しい。

 自分でやったことだ。後悔はしたくない!

 もう俺は、ぼっちで生活していくことを覚悟した。

 花の高校生活、終了のお知らせ。


 「ごちそうさまでした。」

 「おう」

 「…兄さん、大変だと思うけど…がんばって。」

 「お、おう。ありがと、瑞樹。」

 頑張って。

 何気ない一言だけど瑞樹の色々な思いを感じた。

 いや、例えそんな思いが無かったとしても、なかなか自分から口を開くことがない瑞樹が発してくれた言葉なんだ。

 そう考えると、少し心のもやが晴れた気がする。

 

 「でも頑張れって、何をだ?」

・・・・・

  

 「おい」

 誰かが呼んでる?

 「おい!」

 ドスの効いた男の声で起こされた。

 「な、なに?」

 怖かったから寝ぼけた声ですぐに応答した。

 てかなんでそんな怒ってんだよ…?

 寝ぼけた顔で周りを見渡した瞬間、冷汗が出ると同時に意識が覚醒した。


 二度と対面したくないと思ってんたんだがな…

 俺が殴った男子二人が俺の机の前で鬼の形相で立っていた。

 この前とは違って今日は最初から激オコだ。

 「いつまで寝てんだよ、はやく購買買ってこいや!」

 「え、えぇ…どういう状況…」

 「寝ぼけてんじゃねーよ、売り切れたらどうしてくれんだよ!」

 こいつらやっぱ頭おかしい!

 なんで俺がお前らの飯なんて買いに行かなくちゃいけないんだよ、俺は怒ったぞ!

 「な、なんで僕が買いにいくんですかね…?」

 べ、別にビビってる訳じゃない。返り討ちにあうのが怖いとかじゃない。

 「あぁ?お前は俺らの生き奴隷だからに決まってんだろ!」

 …そんな設定聞いてないです。

 というか、なんですか生き奴隷って、世紀末?


 仕方ない。

 ここは一旦奴らの言うことを聞いて、あとで今後の対策を練ろう。

 毎日あいつらの飯なんて買ってたら俺の財布が死んでしまう。

 嫌々、重い腰を上げて席を立とうとしたその時、急に男に首根っこ掴まれ、廊下に出された。


 なんなんだ!なんなんだ!なんなんだよ!

 廊下や教室にいる生徒はみんな、この騒ぎを見てクスクス笑ってる。

 何がおかしんだよ。こんな非日常的な光景見てなんで笑ってられんだよ。

 くっ、訳が分からない!誰か説明してくれよ!

 「いちいち、ノロノロすんな」

 「くっ、」

 別にに俺はなに言われようが馬鹿にされようがスルーできる。

 だけどこれはあまりにも情けねぇ…。

 こんなに好き勝手やられて何も反論すらできないなんて、俺はとんだチキン野郎だ。

 「なに?またボコされたい?でしゃばりヒーローくん」

 「お、喧嘩すんの?頑張れーでしゃばりヒーロー」

 一人の野次馬が声をあげたのを合図に他の生徒がどんどん集まり俺らを囲んだ。

 「い、いやだ、喧嘩なんてしたくない、」

 周りからのでしゃばりヒーローコールがどんどん大きくなる。

 「やっちまえーでしゃばりヒーロー」「かましちまえ、でしゃばりヒーロー」

  その声援は狂気。ただの恐怖でしかない。

 「やめてくれ、いやだ…こんなのおかしい…」

 俺は、でしゃばりヒーローなんて嫌だ。


 「お前は力がない。力がないやつは何も救えないし、何も変えられない、何も正せない、それができないくせに出しゃばるお前はただの偽善者なんだよ!」


 でしゃばったわけじゃない。

 俺があの時、行動を起こしたのには確かな信念があったからだ。

 偽善なのは、わかってる。あそこで行動を起こさなくても。穏便に解決できたっかもしれない。

 身の程知らずの行動だったってことも充分わかってる。陰キャだし喧嘩も弱い雑魚だ。

 でしゃばりなことしたとも思う。

 だけど毎日、中庭で高宮さんのあの笑顔を独り占めしてる俺は、俺には、

 「あの子の笑顔を守る義務と責任がある!そうしないと俺には彼女の笑顔を独り占めする権利がないっ!」

 そうだ、俺は誰かに賞賛されるヒーローになりたいわけでもない。

 自分のためにやったことだ。だから、

 「偽善だとか、身の程知らずだとか、でしゃばりなんてお前らに言われる義理はない!」

 「……」

 周りのヤジは無くなり、辺りは静まり返った。

 言ってやった。


 いや、言ってしまったというべきか…

 男二人が酷くこちらを睨めつけくる。

 オワッタか…?

 「遺言は終わったかぁ?」

 オワッタァァーー!

 「い、いや。遺言というか今のはこれからの学校生活をより良くするための自分えの喝というか…死んでしまったら元も子もないというか…」

 「意味わかんねんだよ!死ねやー!」

 

 「うわぁーー!」

 「あれ、家?」 

 ソファーで寝てしまっていたらしい。

 「夢だったのか…それにしても酷すぎる夢だったな。」

 服のびしょびしょ具合が夢の酷さを物語っている。

 最悪の気分だ。これはきっと正夢だ。

 停学明け、きっとあんな仕打ちが待ってるんだ。

 それに耐え続けなくちゃいけないのか?

 「いやだー学校行きたくないよ、あの調子だと高宮さんにも嫌われてそうだし、なんのためにこんなことしたんだよ!」

 今になって自分のやったことの大きさと馬鹿さ痛感した。


 「結局、本当にただの俺の自己満足だったのかな…?」

 「…はぁ、考えても仕方ないか。夕飯の買い物行くか。」

 汗でぬれた服から着替えて手早く準備を済ませて玄関の扉を開けたその時

 『ゴンッ!』

 うわぁ、やべぇ!この時間だと瑞樹が帰ってくる時間か、これは痛いぞ…。

 扉の前の安全確認をしてから、恐る恐る扉を開いた。

 「悪い!瑞樹、大丈夫か?…て、あれ…」

 瑞樹じゃない?


 頭を押さえてうずくまっている女子がいる。

 や、やべぇ相当痛がってる…。

 「あの、すみません。大丈夫ですか?」

 「こ、こちらこそ家の前ですみません!あっ!ややや八神くん⁉」

 なんなんだ、どうして高宮さんが俺の家の扉の前にいたんだ?

 もしかして、これ俺の錯覚?だとしたら相当末期じゃね?


 「た、高宮さん、どうしたの?」

 「急に来てごめんなさい。でもどうしても八神くんと話したいことがあるの。」

 高宮さんが俺に話?なんだろう、全く見当がつかない。

 ど、どうしようなんか言わないと、でもどうすれば…!

 「立ち話もあれだし、家あがりますか?」

 「う、うん。じゃあお邪魔します…」

 ってなに言ってんだ俺はーーー!!!

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