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E01 怪盗ブルーローズの予告

 女の子の証拠、ばいんぼいんを揺さぶりながらモンローウォークで行く美女。

 その名は、白咲(しろさき)ひなぎく……!

 バーンと、七十億ポーズをキレッキレに決めた。


 ――ように(えっちー)黒樹悠(くろき ゆう)には見える。

 実際の物腰はやわらかい。


「プロフェッサー黒樹。私が、国費留学で、パリのアール大学大学院にいた頃を覚えていますか?」


 黒ぶちメガネの奥に吸い込まれそうな黒い瞳で日本人らしい美しい長い髪を高く結い上げている。

 ひなぎくは、ビビッドな赤のスーツをきりっとしたタイトスカートで、顔回りにはノンブランドの赤いスカーフをチョーカー風にして着こなしていた。

 ボンッキュッボンのお手本みたいなスタイルは観光客に時々じろじろと見られるから困ったものだ。


 黒樹は、まるい瞳をまるい銀ぶちメガネから覗かせ、小さなお口に口髭をつんつんさせて、細く白いストライプ入りのグレーのスーツをスマートなスタイルで着ている。

 黙っていれば、一見紳士だ。


 ひなぎくは、二人分の白と黒のマグをコトリと『アトリエデイジー』の休憩コーナーにあるウッドテーブルに置く。

 午後のおやつ時に黒樹は甘いものを欲しがると分かっている。


 可愛い顔をして、オレンジ色を多用したステンドグラスにはめ込んだ窓ガラスから外を眺めて考えている。

 日差しの映える山間の二荒神温泉郷ふたらしんおんせんきょうは美しい。

 このアトリエも紅葉の頃には、再び沢山の人を潤すだろう。


「おお、ひなぎくちゃん。大好物のカフェオレマックスお砂糖、サンクスな。パリー? うん、よく覚えているよ。ぴっちぴちだったな、ひなぎくちゃん。まあ、そろそろ、今月には二十九歳になるのではないかいな?」


 ひなぎくは、ぴっちぴちが気になったが、にこりと流した。

 それよりも、どきどきしているのは、ツンツンと当たって来る視線だ。

 いつもポニーテールのうなじを見られているのは感じている。


 一方、黒樹は得意の妄想モードに入る。

 ひなぎくはEカップでぴっちぴちに決まっている。

 大好きなビキニ、できれば白!

 まだ、見せてくれなくて残念至極。

 顔は好みなんだよな。

 眼鏡で隠しているがくりくりとよく動く瞳に流れる髪。

 うーむ、眼福、眼福。


「五月十五日の私のお誕生日を覚えてくださって、ありがとうございます。プロフェッサー黒樹は、翌十六日ですものね」


 ぺこりとお辞儀をして、今の気分、ビターなコーヒーをこくりと飲む。

 こんな風に大抵はまったりなので、黒樹はからかい甲斐がそれ程ないと感じているが、ワンピースならダックスフンドの女の子でも話すのを止められないたちなので仕方がない。


「あら、そうしたら、かれこれお付き合いも長いプロフェッサー黒樹は、おじさま推定年齢四十六歳になられるのではないですか?」


 黒樹は、しみじみ思った。

 昨年とは一つ違う壁を越えてしまったこと。

 多分アラフォーとごまかしていたのとアラフィフ決定の違いってヤツだ。


「むむむ……。アラフィフ入りたてだもの。ハゲはないもの。薄いだけだもの」


 黒樹は、カフェオレマックスお砂糖をスプーンでくるくると混ぜた。


「ごめんなさい。いじけないで」


 ひなぎくは、からかったようで悪かったと眉を寄せて謝った。

 小声で、ハゲてないわと呪文を唱えた。


「まあ、その話は置いておいて。例の怪盗から、青いバラの予告状が『ピカソ』の前に置いてありました」


 今さっき撮って来たばかりの証拠写真をスマートフォンで見せた。


「またか。大損害はごめん被るぞ」


 黒樹は、いぶかしんだ。


「事実なので仕方がないです。でも、困りましたねー」


 ひなぎくもいくらおっとりしていても、多少は困るものだ。

 割り切った考えに切り替えようとしているが上手くは行かない。


 ひなぎくと黒樹は、二人の大切な『アトリエデイジー』で、ある懸念事を抱えていた。



 それは、怪盗(かいとう)ブルーローズ。

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