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え、戦うんですか?

7年ぶりらしいです

サワッディー 、目が覚めると、俺の目の前にはボロボロになったナイフ男が倒れていた。


「……なんで?」


いや、マジでわからん。何が起こったんだ? 俺は何もしてない。むしろ、ナイフがこっちに向かってきたのを見て、終わったって思ったはずだ。

 周囲を見渡せば、他の男たちが俺を見て怯えたように後ずさっている。ついさっきまでこちらをバカにしていた連中の顔が、驚きと恐怖に変わっていた。

 なんか……俺、やばいことしちゃった? そう思ったのも束の間、俺の横にいた女騎士が小さく息を飲んだのが聞こえた。そして、彼女は俺の方をじっと見つめ、何かを確信したような顔をしている。

「……?」 何か言いたげな表情をしているが、当然俺にはわからない。会話ができないって不便すぎる。 とりあえず、このまま突っ立ってるのはまずいかもしれない。ギルドっぽい建物の奥に受付みたいな場所があったし、女騎士もそっちに行こうとしていたから、俺もついていくことにした。 ギルドの奥には受付らしきカウンターがあり、そこに座っている女性が俺たちに気づいて顔を上げた。


「☆×$÷◇?」


「※〒〆々◎……」


女騎士が受付の人と何か話し始めた。相変わらず何を言っているのかわからないが、どうやら手続きをしてくれているらしい。 すると、受付の人が何かの紙を取り出し、俺の前に差し出した。

紙には何やら文字が書かれているが、当然読めない。 受付の人はペンのようなものを手に持ち、紙の一部を指差した。どうやら、ここに何かを書けと言っているらしい。 名前……なのか? とりあえず、俺はカタカナで「ソラノ」と書いた。

 これで通じるのかは知らんが、他にどうしようもない。


「◆×◎□!」


受付の人は俺の書いたものを見ると、少し驚いたような顔をした。そして、すぐに何かを机の上に置いた。

――小さなプレート。

何かの証明書みたいなものか?


「☆◎◆……」


女騎士が俺の方を見ながら何かを言ってくる。どうやら、これを受け取れということらしい。 言われるがままにそれを受け取ると、女騎士は頷き、再び歩き出した。 どうやら、これで手続きは終わったらしい。 俺はまたしても女騎士についていく形で、ギルドの奥にある広場のような場所に連れてこられた。 どうやら、ここで何かをするらしい。 ……なんとなく察した。 たぶん、ここで戦闘訓練みたいなのをやるんだろう。異世界モノでよくあるやつだ。 周囲を見渡せば、いかにもな屈強な冒険者たちが訓練している。明らかに戦い慣れた雰囲気の奴らだ。 そして、その中の一人が俺たちに気づき、近づいてきた。


「◆×◎?」


「※〒……!」

女騎士とその男が何かを話している。 ……うん、たぶん俺が戦う流れだな。 その男が手に持っていた木剣を俺に向かって差し出した。


「……」


どうやら、これを使えということらしい。 俺は言われるがままに木剣を受け取った。正直、剣なんて触ったこともないが、ここで拒否しても仕方ない。 男が戦闘の構えをとる。 ……よし、やるしかないか。 俺は適当に構えてみた。 すると、男はニヤリと笑い、俺に向かって突っ込んできた――。



女騎士視点


目の前の勇者様が立っている場所に目を向けると、ボロボロになったナイフ男が倒れている。その姿を見て、私は一瞬、状況を把握するのに時間がかかった。どうしてこうなったのか、私にも全くわからない。けれど、勇者様の姿勢は変わらず、ただ目の前の倒れた男をじっと見ているだけだった。

ナイフ男が勇者様に近寄った瞬間、私は斬り伏せようと剣を抜いたがそれは無駄だった。勇者様がブレた瞬間に目の前の男が倒れた。周りの連中は怯えて後ずさり、顔に恐怖の色を浮かべている。

私は勇者様の様子をじっと観察しながら、何が起こったのか考えたがよくわからなかったのでここにきた目的を優先することにした


「勇者様、行きましょう」

私は彼にそう声をかけ、ギルドの奥へ向かって歩き出した。彼が私に続くのを確認すると、私はすぐに受付の場所へと案内した。たとえ異世界から来た勇者様であろうと旅に出るためにはギルドの一員として受け入れてもらわなくてはならない。

受付での手続きが終わると、彼に渡されたプレートを手に持って、私は再び広場へと向かう。周囲の訓練中の戦士たちを見渡し、これからどうやって戦闘訓練をさせるかを考えていた。たとえ勇者の力を持っていたとしても元々は普通の()()なのだ。剣の振り方や力の使い方など知るはずもないだろう。

広場に着くと、訓練中の冒険者達がが私たちに気づいて寄ってきた。そのうちの一人が勇者様を見て、にやりと笑ってから、挑戦的な態度で言葉をかけてきた。


「ほぅ、コイツが先ほどギルド内で騒いでた奴か」


「ギルドマスター!」


冒険者たちの中でもひときわ威圧感のある男、ギルドマスターであるトンダ・カマセイッヌさんが近づいてきた。彼は勇者様をじっと見つめ、その目はまるで何かを試すかのような鋭さを持っている。

ギルドマスターは少し間をおいてから、口を開いた。


「なるほど、見たところ普通の少女には見えんが、何か特別な(スキル)でも持っているのか?」


その言葉に私は緊張を覚えた。ギルドマスターは単なる冒険者ではない。このギルドを束ねる長なのだ、彼のような人物が試す相手として選んだということは、何かしらを確かめたいという意図があるのだろう。

勇者様は、ただ無表情にギルドマスターを見つめている。しかし、その目には戦いを挑む者の静かな決意が宿っているように感じた。

だが、彼と勇者様を戦わせるわけにはいかないのだ勇者様はつい先程この世界に召喚されたばかりなのだから、ここは私が納めなければならないのだ。


「ギルドマスター、無駄な挑発はやめてください。この方はただの少女ではありません。今しがたこの世界に顕現された勇者様です」


私はギルドマスターに警告するように言ったが、彼は少しだけ笑みを浮かべてから、再び勇者様に向かって木剣を差し出した。

「ほう、勇者か。それなら尚更これで一度試してみようじゃないか。 普通の冒険者だって、ギルドの規定に従って戦闘訓練を受けるんだ。力を見せてみろ」

私はその瞬間、ギルドマスターが何をしているのか理解した。これは、勇者様が戦えるかどうかを見極めるための試練だ。しかし、いくら勇者様が強い力を持っていても、この世界に来たばかりなのだスキルの使い方は愚か武器の振り方を知らない。余りにも危険すぎる、この試練に乗るべきではない。

だが、勇者様は木剣を受け取ると、少しだけ動きを止め、そしてそれを握りしめた。

「……」

勇者様は何も言わず、ただ木剣を構える姿は、あまりにも決然としていて、私が何か言う余地を与えない。

ギルドマスターはその様子をじっと見守りながら、軽くうなずく。

「よし、それでは始めようか。お前の力を見せてみろ」


私は勇者様に向かって、どうか無理はしないでほしいと心の中で願いながらも、どんな風に戦うのかを少しでも知りたくて、見守ることにした。

そして、ギルドマスターの掛け声とともに、戦いが始まった。



つづく

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