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三人の英雄  作者: C-na
-第一の世界線・弦- 【剣の誓い】 -主人公-ヴェランド=レグルス/エランド=レグルス
5/59

Siblings Episode 新たな英雄物語【天魔の残党編】

登場人物


エランド=レグルス (16) ♂

ヴェリスの双子の兄。戦士である両親に鍛え上げられ

二人に勝らずとも劣らない力を身に着け、

騎士学園にヴェリスと通っている。


ヴェリス=レグルス (16) ♀

エランドの双子の妹。魔術と剣術を学び、

いつもエランドと手合せをしているが、

毎回のことながら惜しくも勝てない。

騎士学園に通っており、成績はトップクラス。


エリス=シーナ (故) ♀

かつて、エランドの父であるヴェランドを教えていた者。

天使との契約の力を譲渡するためにこの世を23年前に去った。


ヴェランド=レグルス (38) ♂

エランド、ヴェリスの父。

かつては退魔人たいまびとであった。今でも剣術は超一流で

教えを求め、やってくるものがいるほど。


シーナ=レグルス (35) ♀

エランド、ヴェリスの母。ヴェランドの教え子で、かつて天魔てんまの力を有し

魔王軍を討ち破った。今はもう能力は使えないが、剣術はまだまだ捨てたものではない。

夫であるヴェランドをマスターと今も呼び続けている。


ゾルダート=クロー (故) ♂

退魔人だった男。悪魔との契約が切れ、

現世を他界してしまった。

大きな戦闘力をもっていたが、アイフィスには及ばなかった。


アイフィス (27) ♀

シーナと同じ、魔龍族まりゅうぞくの血を引く者。

魔王軍の臣下の一人であったが、魔王軍そのものが壊滅してしまったため

残党として一人勢力の回復を企んでいる。


エラン ♂:

ヴェリ ♀:

エリス ♀:

ヴェラ ♂:

シーナ ♀:

ゾルダ ♂:

アイフ ♀:


『』…マインド


---------------


エリス 「そういえば、ゾルダート」


ゾルダ 「なんスか、先生」


エリス 「悪魔との契約が切れるってどういう事なのか、興味あるわ」


ゾルダ 「? 変わった質問スねぇ、まぁ興味あンなら話しますけド。シーナ=レグルスと最後に会った日の少しあとッス」




アイフ 「あら、ゾルダート。こんなところで会うなんてね」


ゾルダ 「…やりにくい奴だなァ? 会うなんて、なんて白々しいねェ。ここのとこ3日3晩俺の首を斬りおとそうとずっと見てたじゃねぇか」


アイフ 「クスッ、あら。ばれてたのならどうしようもないわね」


ゾルダ 「何が目的だ、もう魔王軍のために尽くすこともねンだぜ?」


アイフ 「逆よ、私はむしろ魔王軍の復活を計画しているの。魔王はもちろん、わ・た・し」


ゾルダ 「ッハ、シーナ=レグルスに負けたんだろ? どれだけがんばったところで、あの女にゃかてねぇよ」


アイフ 「負けたなら、どうして私は今ここにいるのかしら?」


ゾルダ 「何だと…? うぐぅぉっっ! っっがはっ………なんだ…テメェ…」


アイフ 「魔王軍の本部が潰されているとき、私は本部にいなかったの。だから生きてるのも当たり前なのよ。フフフッ、立ちなさいよゾルダート。悪魔と契約した力を見せて頂戴」


ゾルダ 「あんまり俺の事を舐めんじゃねぇぜ…? サタン!」


アイフ 「それが悪魔との契約の力なのね……サタン…悪魔を総べる王すら取り込むなんて流石というべきか…それとも……」


ゾルダ 「!? 消えた?」


アイフ 「こっちよ、ゾルダート」


ゾルダ 「クソッたれ…! 動きが見えねぇ…!」


アイフ 「魔龍族の血を引いたのがシーナ=レグルスだけではない、わからないかしら?」


ゾルダ 「そこか! 何ッ!? 隠れてないででてきやが……れ?」


アイフ 「隠れているなんて人聞き悪いわね、ゾルダート。ただ単純にあなたの目が私の速度に追いつけていないという事よ」


ゾルダ 「お前まさか天魔のちか……ぅぐっ………ぁぁ……かはっ……」


アイフ 「その悪魔の力、私に頂戴? あなたなんかが持ってても、意味ないでしょ? ね♪」


ゾルダ 「あ゛あ゛ァぁ! ぅん………っぐ………」


アイフ 「天魔の力にさらに悪魔の力が加わったら……どうなるのかしら……? ね、サタン? フフッ」




エリス 「アイフィスですって!? ………まさか」


ゾルダ 「知ってるんスか? アイフィスを」


エリス 「知っているどころか……私はアイフィスが生まれた瞬間に立ち会っているのよ…」


ゾルダ 「は!? どういう関係なんだよ、先生」


エリス 「私が17くらいの頃に、魔人村を訪れた時に一人の子が産まれると聞いて…立ち会わせてもらったの。その時に生まれた子がアイフィス。魔龍族の血は伊達じゃない…。生まれてきたとき母体は消し飛び、私を除く立ち会った人は皆死んでしまった」


ゾルダ 「死ぬ……? なんで…!?」


エリス 「それほど大きな魔力を持って生まれてきているの。魔人村の人たちは魔族の血を引いているだけであって、悪魔であるわけでもないし、能力が使えるわけでもない。いわば人間と何一つ変わらないの」


ゾルダ 「んで……魔力とかに耐性がある先生は生きてたってことスか」


エリス 「そうなるわ…。天使と契約せざるを得なかった」


ゾルダ 「! ……先生が契約した理由、それだったんスか。」


エリス 「このままじゃ……現世はまた魔王軍に染まってしまう……。誰かがアイフィスを止めないと…」




シーナ 「エランド、ヴェリス。遅刻してしまいますよ」


ヴェラ 「今日から2学期だろう、初日から遅刻するんじゃないぞ」


エラン 「わかってるよ! 父さん、母さん!」


ヴェリ 「あ、お兄ちゃん待ってよ!」


エラン 「遅刻しても知らねーぞ!」


ヴェリ 「もー! 待ってって言ってるのにー!」




ヴェラ 「もうあの子たちも、立派な学園の生徒だな」


シーナ 「そうですね……毎日平和でとても幸せです、マスター」


ヴェラ 「何かあれば、次はあの子たちが戦う番だ。無論、平和であることに越したことはないが」



エラン 「ヴェリスはすげぇよなぁ、学年で成績3位だろ? 勉強の方はやっぱりかてねぇや」


ヴェリ 「ふふっ、そういうお兄ちゃんも19位でしょ? そんなことないよ、勉強は、ってなーに!」


エラン 「いや、べつに大した意味はないけどさ…ははっ」


ヴェリ 「あれ…、お兄ちゃん。あの人誰…?」


エラン 「さあ……? 見たことないけど……きれーな女の人だなぁとは思うけど」


ヴェリ 「綺麗ってなぁに、お兄ちゃん?? いっつも私の事は褒めてくれないのにー。それにお母さんのほうが綺麗だよ!」


エラン 「どうして妹の事を褒めまくる兄貴がいるんだよ………」


アイフ 「ねぇ、君たち」


エラン 「あ…はい」


アイフ 「騎士学園の生徒?」


ヴェリ 「そう、ですけど……」


アイフ 「レグルスっていう名前の人を探しているの」


エラン 「えっ、それって……」


ヴェリ 「私たち…ですけど…」


アイフ 「……そう。なら………シーナさんの所に連れて行ってほしいの」


ヴェリ 「どう……する? お兄ちゃん、学園に間に合わなくなるけど…」


アイフ 「大丈夫大丈夫、すぐに終わるから」


エラン 「………案内しますよ、こっちです」





ヴェリ 「お父さん、お母さん」


シーナ 「あら、ヴェリス…エランドも…どうしたんです? 具合でも悪くなりましたか?」


エラン 「母さんに会いたいって人がいるよ」


ヴェラ 「シーナに?」


アイフ 「どうも、シーナさん」


シーナ 「初めまして…どうして私の名前を…?」


アイフ 「名前なんてどうでも良いではありませんか」


シーナ 「えっ?」


アイフ 「面倒事は抜きにしましょう、シーナさん。いえ…シーナ=レグルス。死んでくださらないかしら?」


シーナ 「!? なに、言っておられるのですか…?」


アイフ 「わかりやすく言うと、魔王軍の残党…とでも言えばよいのかしら? 私の魔王様を殺したあなたを許しはしない」


ヴェラ 「逆恨みが過ぎるだろう、君。魔王軍はどれだけ罪深い行いをしたと思っているんだ!」


アイフ 「だから仇を討ちに来たんじゃない………はぁっ!」


シーナ 「っ!? うぁぁぁぁっ!」


ヴェラ 「シーナ! 大丈夫か、シーナ! 貴様…シーナになんてことを!」


アイフ 「おかしいわね? 天魔の力を持っているって聞いてたのに…なぁにぃそのザマは?」


シーナ 「ごめんなさい…マスター……油断していました……」


エラン 「母さん! 大丈夫!?」


アイフ 「言っとくけど、魔王様の恨みはまだまだこんなものじゃないわよ」


ヴェラ 「お前たち、下がっていなさい……私が戦おう」


ヴェリ 「お父さん! 今はもう魔術は……」


ヴェラ 「私の心配は大丈夫だ、母さんを安全な所へ」




ゾルダ 「派手に暴れてやがンなぁ」


エリス 「まずいわね、もうシーナもヴェランドも魔術すら使えないというのに」


ゾルダ 「現世に戻ると同時に魔力を剥奪されたんでしたっけ、ヴェランド=レグルスは」


エリス 「そうね、現世に戻るために妥協しなきゃいけない点がそこだったの」


ゾルダ 「戦えるやつもいねぇこの状況で、お前はどうするんだ? ヴェランド=レグルス」



アイフ 「ヴェランド=レグルス、だったわよね? なに? そんなもんなの? 剣術は最高レベルかもしれない、でも…魔術すら使ってこないなんて、手加減のつもり? それとも、舐めてるのかしら?」


ヴェラ 「はぁっ…はぁっ…はぁっ……手加減など…するものか……私はもう…魔術を使えないんだ…」


アイフ 「まぁ、魔術を使えたところで…天魔の力を持った私に敵うわけないのよ」


ヴェラ 「てん…ま…だと…? まさか……シーナ以外にも力を持つものがいたとは……」


アイフ 「戦う力のないあなたにはもう用は無いわ、さようなら」


ヴェラ 「……ここまでか……!」


ヴェリ 「お父さんからどきなさい!」


ヴェラ 「よせ! やめるんだ! お前たちの敵う相手ではない!」


アイフ 「良い目ね、でもね。良い事を教えてあげる……無謀と、勇敢は違うの」


ヴェリ 「そんなのやってみないとわ………ぅっ……ん……ぁぁっ……!」


ヴェラ 「ヴェリス! 大丈夫か!」


アイフ 「どうする…? あなたは」


エラン 「なんだよ……なんで……こうなったんだよ……母さんたちが何したって言うんだよ…」


アイフ 「邪魔をしないって言うのならあなただけ、助けてあげる。別にあなたを殺す理由も価値もゴミに等しいんだから」


エラン 「ぐっ…………」


アイフ 「そうよ、本性を見せなさい。人なんて結局己が可愛いんだから。あなたの命か、それともお父さんたちの命が惜しいか。どっちかだけ、助けてあげる……フフフッ」


エラン 「俺……か……父さん…達……」


ヴェラ 「私は構わないが、シーナや子供たちはやめてく…うぐっ………ぅぁっ」


アイフ 「あなたに発言権は無いの。今私はあなたの息子と話をしてるんだから」


エラン 「俺は…俺は……俺は………」



(回想)

シーナ 「エランド、絶望的な状況こそ。落ち着いて物事を整理してみるのです」


エラン 「どういうこと、母さん」


シーナ 「頭の中で整理しきれないこと、あらゆる場面であることでしょう。そんな時は、落ち着いて根底から一つずつ整理をしてみなさい」


エラン 「根底から……?」


シーナ 「与えられた選択肢の中に必ずしも正しい答えがあるとは限りません、その時は自ら新しい選択肢を生むこともできるんですよ」




アイフ 「待ちくたびれたわ。もう、殺しちゃうわね。お父さんたち」


ヴェリ 「お兄ちゃん………!」


エラン 「……………!」


ヴェリ 「…………助けて…」


エラン 「…………………名前を教えてくれよ……あんたの」


ヴェラ 「エランド! よせ!」


アイフ 「アイフィス。私の名前を知らないまま死ぬのなんてお父さんたちもかわいそうでしょうから」


エラン 「アイフィス、俺と……戦え」


アイフ 「今のを見ていなかったのかしら? あなたのお父さんは私に全くかなわなかったのよ?」


エラン 「…………聞こえなかったのか、戦え」


アイフ 「生意気な子にはお仕置きしないとね、後悔しても知らないわよ? はぁっ!」


エラン 「っぐ! 早い! くそっ!」


アイフ 「結局言葉だけなのね、せやぁぁ!」


エラン 「重く、早い……! ぐぁぁっ! 見えないっ…!」


ヴェリ 「お兄ちゃん!」


エラン 「ヴェリス……あぐぁぁっ」




(回想)

ヴェラ 「いいか、私の動きが早いのではない。目で追おうとするから追いつけないんだ」


シーナ 「ふふっ、マスターも久しぶりに教えるとなって張り切っていますから、二人とも頑張るんですよ」


ヴェリ 「そんなこと言われてもお父さんとても早いんだもん……」


エラン 「そーだよ! 父さん本気出し過ぎ!」


シーナ 「私もマスターの動きには目ではついていけませんよ」


ヴェリ 「えっ、お母さんでもついていけないの?」


シーナ 「はい、私だって目で追おうとしたらマスターの姿すら見ることは難しいです」


エラン 「でもさ、母さんいつも父さんの動きに合わせて立ち回れてるじゃん! あれはどう説明すんのさ!」


シーナ 「人は必ず魔力を有しています。たとえ魔術の使えない一般の人でも」


ヴェラ 「生まれたばかりの赤ん坊でも微量な魔力を有している」


シーナ 「退魔人などの大きな魔力を扱える人間ほどに魔波まはを発する量が多くなります」


ヴェリ 「ま、は?」


ヴェラ 「気流のようなものだ、魔術を行使できるものは大抵魔波を体内から発している」


エラン 「その魔波が、どうしたの?」


シーナ 「魔波は感じることができます、今だったら………はぁっ! 戦えるような大きさではありませんが、何か……感じませんか?」


エラン 「なんか、ビリビリ来る…身体中になんか……小さい小さい静電気が流れてるみたいなのが……母さんの右手から…すごく感じる」


シーナ 「よくできましたね、そうです。私は今右手に魔波を集中させました。今の場合、私はもう戦う魔力が無いので、魔波を集中させることしかできませんでしたが…魔力を扱う者達はこれを常に放出しています」


ヴェラ 「目で追うのではない、魔波の微妙な流れを感じることで相手の次の動き、移動場所がわかるんだ」


ヴェリ 「でも……戦ってる途中にそんなの集中できないよ…」


ヴェラ 「たしかにそうだ、戦っている時は神経がそちらに集中できないからな。魔波の流れをつかむのは基本戦っていない時でないと不可能だ」




アイフ 「どうしたの? 全然戦う気が感じられないわ?」


エラン 「うぐっ…あ゛あぁっ……ぅっ…!」


シーナ 「マスター…、ヴェリス…あれは…」


ヴェラ 「動いて大丈夫なのかシーナ…? 今…エランドが戦っている」


ヴェリ 「戦ってなんかないよ……ぐすっ…ひぐっ……このままじゃ…お兄ちゃんがやられちゃうよ…!」


シーナ 「……マスター…このままではエランドが……」


ヴェリ 「うわぁぁぁぁん…お兄ちゃんが死んじゃう……勝てっこないよ……」




ゾルダ 「ヴェランド=レグルスの息子、こてんぱんだなぁおい……」


エリス 「………なるほど……」


ゾルダ 「先生、全く手出しできてないッスよ。あの息子」


エリス 「いえ………手出しできないんじゃない……」




ヴェラ 「簡単な話、エランドはわざと手を出していない…」


シーナ 「どういう…ことですか…?」


ヴェラ 「エランドは戦わずに魔波の流れを掴む事に集中しているんだ。つまり……」


ヴェリ 「今お兄ちゃんは計算してやられてるって事……?」


シーナ 「しかし…そんなこと…、諸刃極まりありません」


ヴェラ 「たしかにそうだが…間違いなくエランドの戦闘センスだ。エランドが魔波の流れを見切った時……」



アイフ 「そろそろ終わりにしましょう? 何も攻撃してこないあなたをこれ以上いたぶってても楽しくないわ…。死になさい、はぁっ! ……………何!? 攻撃を…受け止めた…?」


エラン 「はぁっ……はぁっ……はぁっ……ぅっ……アイ……フィス…………見えてるぜ…?」


アイフ 「調子に………調子に乗ってんじゃないわよ! たった一回のまぐれで……!」


エラン 「まぐれ……じゃ……ねぇよ……もう…あんたのターンは終わりだ……」


アイフ 「なん……ですって……半分意識の飛んでるあなたに何ができ…うぐっ……!」


エラン 「はぁっ……はぁっ……俺が生きるか……家族が…生きるか……だっけ………?悪いな……どっちの選択肢も……選ぶつもりはねぇよ……!」


ヴェリ 「すごい……お兄ちゃん……」


シーナ 「エランド……」


アイフ 「最強の力を持ってる私が負けるわけ……ないでしょうがぁぁぁぁぁぁぁ!」


エラン 「なら………最強じゃなかったってだけの話だ」


アイフ 「ぐっ……ぅく……かはっ………」


ヴェラ 「魔波がどんどん小さくなっていく……!」


エラン 「まだ……生きてんのかよ……女のくせ……なんて…タフな…やつ…だ……ぅぐっ……」


ヴェリ 「お兄ちゃんが倒れた………!?」


アイフ 「………く………覚えていなさい………必ず………次こそ……叩きのめす……」


シーナ 「エランド…! 大丈夫ですか! しっかりしなさい!」


エラン 「はっ……うん……大丈夫………悪い……父さん、母さん……倒せなかった……」


ヴェラ 「上出来だ…追い返しただけでも充分だ…。すぐに……村の先生にの所に連れて行ってやる」


ヴェリ 「ごめん、お兄ちゃん…私…なにもできなくて……」


エラン 「いんだよ……肩を押してくれたのは……ヴェリスなんだからさ……」




ゾルダ 「なんて奴だ、エランド=レグルス。まさかアイフィスを撃退しちまいやがった」


エリス 「最強の母とその師匠の息子なんだから、あまり驚くことではないわ」


ゾルダ 「しっかし、アイフィスの野郎はまだあきらめてねぇンでしょ?」


エリス 「そうね、傷が癒えたら魔王軍の復活を先に行うんじゃないかしら」


ゾルダ 「どうしてそう思うんス?」


エリス 「勢力を広めてから一気に潰しにかかる、なんてことも考えられるんじゃないかしら」


ゾルダ 「なるほど、まぁ…どのみちこれで諦めるような女じゃねぇでしょうなァ」




ヴェラ 「稽古、気合入っているな。ヴェリス」


ヴェリ 「うん! 今度あの女の人が来たらお兄ちゃんと一緒に戦ってやるんだから」


ヴェラ 「そうだな。この前は運が良かったものの、次戦うときはエランド一人ではどうもならない可能性の方が高い」


エラン 「ってか、ヴェリス。いい加減そのお兄ちゃんってのやめてくれよ…恥ずかしいし」


ヴェリ 「えぇっ…そうかなぁ……じゃ……エランド…?」


エラン 「その方がしっくりくる!」


シーナ 「本当、仲がいいですね…ふふっ」


ヴェラ 「あぁ…。こんなにも幸せに過ごせているのに…戦わせないといけないとは。胸が痛いな」


シーナ 「いえ…。あの子たちなら大丈夫でしょう…私とマスターの子ですから」


ヴェラ 「はははっ、間違いないな」



エラン『こうして俺たちはさらに腕を上げるべく3年を過ごし、騎士学園の卒業式を迎えた』



シーナ 「もう卒業ですか、早いものですねエランド、ヴェリス」


ヴェリ 「うん……なんか、改めて思うと寂しいかも…ふふっ」


エラン 「べっつに生活が変わるわけじゃねぇんだからそんなことねぇって」


ヴェラ 「まぁ、なんにせよ……お前たち。卒業おめでとう」


ヴェリ 「えへへ……ありがと……」


エラン 「ありがと、父さん」


シーナ 「…………行くんでしょう」


エラン 「あぁ、魔王軍とこ、だろ」


ヴェリ 「………行くよ」


ヴェラ 「…………お前たちに、父さんと母さんから渡す物がある。父さんからはエランドにこれを」


エラン 「! これ、父さんの剣じゃないか…こんなの貰っていいの……?」


シーナ 「ヴェリス、これを。この剣はマスターの師匠であるエリス様から継がれた剣です」


ヴェリ 「えっ………これ………私が……?」


ヴェラ 「私たちは戦うことはできない。だが…お前たちに戦う意思を託すことはできる」


シーナ 「行きなさい。なに、あなたたちなら大丈夫です」


エラン 「………行ってくる!」


ヴェラ 「必ず帰ってこい。必ず………!」





エラン 「なんだよヴェリス。要塞を前にビビってるのか?」


ヴェリ 「べ、べつにそんなんじゃないもん………」


エラン 「おま……髪……切ったのか……? どうしてそんなばっさり…」


ヴェリ 「……ふふっ。髪短いと……ほら、エランドにそっくりでしょ」


エラン 「……言われてみれば……ほとんど見た目…変わらねぇな……」


ヴェリ 「どこ見て言ってるのか具体的に説明してほしいんだけど……」


エラン 「俺に似せる必要なんて、あったのか?」


ヴェリ 「…………別に。なんとなく、かな」


エラン 「そうか……。一人じゃできねえこともあるから…」


ヴェリ 「うん。二人でしかできないこともある、だよね」


エラン 「あぁ…。生きて帰るんだ」


ヴェリ 「そう……だよね……!」


エラン 「剣の誓いを…」


ヴェリ 「ここに……」



アイフ 「来たね…二人とも…。3年ぶりぐらいかしら?」


エラン 「今度こそ、俺が勝つ」


ヴェリ 「いいえ、俺達が、でしょ。エランド」


エラン 「はっ、悪かった」


アイフ 「二人仲良く、死になさい…! はぁぁぁぁぁ!」


エラン 「ヴェリス、右だ!」


ヴェリ 「うん……! せやぁぁっ!」


アイフ 「見切ってるよあんたの動きは…って挟まれた!?」


エラン 「悪いな、今の俺は…」


ヴェリ 「二人いるってことなんだ」


アイフ 「双子……面倒ね……! 消えなさい!」


ヴェリ 「エランド、下よ!」


エラン 「了解ッ! うおりゃぁぁぁ!」


アイフ 「今度は上と下で挟まれた!? くっ……!」


ヴェリ 「私たちは今……」


エラン 「二人いるって言ったじゃない」


アイフ 「この前の様に好き勝手できると思わないでよ…!」


エラン 「好き勝手なんて、できるわけねぇだろ?」


ヴェリ 「だって、二人三脚なんだから……。はぁっ!」


アイフ 「くっ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ぅ…ぐっ……」


エラン 「俺が足りない力は…」


ヴェリ 「私が埋める、私が足りない力は…」


エラン 「俺が埋める……」


アイフ 「終わりよ……! 今度こそ二人もろとも消えてしまいなさい……!」


ヴェリ 「エランド!」


エラン 「ああわかってる!」


アイフ 「また回り込まれた…!? どうして読まれるの!?」


エラン 「たしかに天魔の力ってのは規格外だって父さんたちから聞いた、だけど……」


ヴェリ 「合わさった力は何も天魔の力だけじゃないんだって………!」



アイフ 「……そん……な……私……がっ………負ける……なんて………」



エラン 「……やったか………はぁっ……疲れた………」


ヴェリ 「完璧だったね、私たち……!」


エラン 「髪切った理由って、これか?」


ヴェリ 「さぁ……ね……」


アイフ 「こんな……ところで…………終わる…わけには………サタン……! 食い殺しなさい!」


エラン 「あの野郎まだ生きて…! ヴェリス! 後ろだ!」


ヴェリ 「えっ…!?」


エラン 「どけヴェリス! くたばれ! ぅっぐ……ぁっ…………」


アイフ 「さた……ン…? 上あごから……貫かれたの………? まさか……あの子……」


エラン 「ぐっ…………ぅぁっ……・」


ヴェリ『サタンにとどめを刺したエランドだった…。上あごから頭を貫いた剣はいつまでも左手に握られていたが、次私がエランドに目を向けた時には………エランドの左肩から先が無かった』


エラン 「これで………今度こそ……お前の負けだ…アイフィス……!」


アイフ 「そんな……私が……おぼえていなさ-」


エラン 「終わった…な、ヴェリス………左肩……貸してくれ……」


ヴェリ 「…え……? エランド……? どうして……どうして私をかばったの!? ぐすっ……確かに勝てたかもしれない…だけど……エランドの左腕が………うわぁぁぁぁぁん」


エラン 「兄貴が妹護るなんて、当たり前だろ……? それに、剣の誓いは絶対だ…。生きて帰るんだって…誓っただろ…?」


ヴェリ 「そんなの……ぐすっ…ひぐっ……うっ…うっ……私なんかのために……私の命より…エランドの腕の方がずっと重いんだよ…!」


エラン 「………ふざけんなよ……!」(頬を叩いて)


ヴェリ 「いたっ…………」


エラン 「命に軽いも重いもあるかってんだ! ふざけた事言うんじゃねぇ……」


ヴェリ 「………ごめんなさい………」


エラン 「わかってくれたら、それでいい………それに……私なんかのためにとか…言ってんじゃねぇよ」


ヴェリ 「でも本当にその通りだし……」


エラン 「でも、とか言ってんじゃねぇよ。バーカ」




ゾルダ 「見せてくれるもんじゃねぇか、エランド=レグルス……いやぁ。サタンも最後に余計な事をしたもんだ」


エリス 「あの兄妹はただの退魔人のたまごに過ぎない。しかし、天魔の力にさえ勝って見せた……素晴らしい事よ」


ゾルダ 「左腕、どうすンすかねぇ? これから」


エリス 「シーナとヴェランドの子よ、そんな事で絶望してしまうような子では無いわ」


ゾルダ 「仮にあん時死んでたら、ここもまた賑やかになってたかもしんねッスよ」


エリス 「ふふふっ、天界なのに賑わうなんて…そんな展開もありね…………どうかしら…?」


ゾルダ 「滑ってるッス」


エリス 「あら………難しいわね」



エラン『俺達が家に帰ったら一番最初に左腕の話になった。父さんたちに事を話したらよく、家族を守ったなって言ってくれた。俺に悔いはねぇし無論、ヴェリスを恨むわけもない』


ヴェラ 「エランド、左肩の調子はどうだ?」


エラン 「まだ腕が喰われたって感じがないかな……変な感じだ」


ヴェリ 「エランド…………」


シーナ 「ヴェリス、いつまでも悲しんでいてはいけません。身体を張って助けてくれたエランドの為にももっと元気にしていないと。それに、笑っていた方がとてもかわいらしいですよ」


ヴェリ 「……うん……わかった………」


ヴェラ 「片腕だけでも剣は扱えるだろう、エラン。まだまだ稽古を怠るんじゃないぞ」


エラン 「ああ、幸い利き腕は右腕だから。もちろん、父さんにだって負けねぇから!」


シーナ 「ふふっ……あの頃の私を見ているようですね…」


ヴェリ 「あの頃…?」


シーナ 「マスターに背中を預けてほしくて、毎日強くなることに必死だったんです」


ヴェリ 「そう……だったんだ……」


シーナ 「ほら、ヴェリスも稽古を始めなさい。学園を卒業したからと言って稽古は終わりではありませんよ!」


ヴェリ 「う…うん! わかった…! 私も…きっともう誰も怪我をしないように強くなるから…!」


ヴェラ 「シーナ、これは…すべてが終わったのではなく…すべてがまた新しく始まったのかもしれない。そう思わないか?」


シーナ 「そう…かもしれませんね。私たちがいつかこの世を去っても…またあの子たちの子孫がきっと…また次へと繋いでくれるのかもしれませんね」


ヴェラ 「あぁ、次はあの子たちの出番だ。これからも、見守っていくとしよう」


ヴェリ 「エランド…!」


エラン 「どうした、ヴェリス!」


ヴェリ 「……手合せ、しよ!」


エラン 「……懐かしいな……なんか」(独り言のように)


ヴェリ 「ん? 何か言った…?」


エラン 「いや………へへっ……また、負けても知らねーぞ!!」


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