Black or White もうひとつの未来【復讐者エランド編】
登場人物
エランド=レグルス (16) ♂
本作の主人公。正義感に溢れ、仲間思いで優しい男の子。
魔龍族の血を引いており、潜在された力は無限大。
家族という何よりもの心の支えが消えたとき
彼には何も残らなかった。
ヴェリス=レグルス (16) ♀
エランドの双子の妹。お兄ちゃん子で
まさに一心同体であったとも言える。
いつも笑顔で明るく、優しかった彼女が倒れた。
それが彼にとって、復讐の狼煙となった。
アイフィス (?) ♀
魔王軍の残党。ルシファーが敗れ、
壊滅していた魔王軍を再構成した本人。
残忍な性格で容易く人の命を切り捨てる。
ヴェランド=レグルス (38)
双子の父。かつて世界を救った勇者、シーナの師。
エランドと同じ、正義感に溢れた性格で
悪を許さんとする彼だったが、戦う力を失った今
アイフィスに太刀打ちする術はなく、剣を託し、倒れる。
シーナ=レグルス (35) ♀
双子の母。16年前、ルシファーを倒した勇者。
かつての力は使えずともまだまだ正義感や剣術に錆は無く。
アイフィスの強さを前に歯が立たず双子をかばい倒れる。
ルシファー (?) ♂
16年前、シーナに敗れた大魔王。
エランドが復讐者と化した4年後、復活する。
倒される、倒すどころかエランドを
仲間として招き入れる。
エランド ♂:
ヴェリス ♀:
アイフス ♀:
ヴェラド ♂:
シーナ ♀:
ルシファ ♂:
『』…マインド
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ヴェリス『これは語られなかった、誰も知ることのないもう1つの末路。そう…お兄ちゃん…いえ。復讐者エランドの原点』
エランド「父さん、母さん!」
シーナ 「ヴェリス…エランド。具合でも悪くなりましたか…?」
ヴェラド「もうすぐ授業が始まる時間じゃないのか…? 引き返してきてどうした、2人とも」
ヴェリス「お客さんが…」
エランド「母さんに会いたいって人が居るよ」
シーナ 「お客様…? どうも、初めま-」
アイフス「こんにちは、シーナさん」
シーナ 「…どうして私の名前を…? 以前何処かでお会いしたことがありましたでしょうか…?」
アイフス「ふふっ…名前なんかどうでもいいでしょう…面倒ごとは抜きにして。シーナ=レグルス…消えて下さらないかしら?」
ヴェラド「! シーナッ!!」
(シーナがアイフィスから放たれた魔弾に吹き飛ばされ)
ヴェリス「お母さん! お母さん!!」
アイフス「フフッ……クフフフフッ……アハハハハハハハハッ!」
ヴェラド「…なんだ…貴様は…!!」
アイフス「あぁら、失礼。まだ自己紹介をしていなかったわね? アイフィス…」
エランド「母さん! 母さん! しっかりして!」
シーナ 「っ…ぅ…ぁ……大丈夫…です…」
アイフス「一発で仕留めたと思ったのに…意外と魔力への耐性は落ちていなくて? おっと?」
ヴェラド「…どういう…事だ…! その魔力…魔王軍で間違いない…だが…魔王軍自体はシーナが16年前に葬ったはずだ!!!」
アイフス「果たして本当にそうかしら? たしかに、根っこが潰えたのは認める。しかし、その根っこの部分に私が居たと…そう言い切れるかしらッ!」
ヴェラド「う゛ぉぁぁっ!? …げほっ……ぐ…くそっ…!」
ヴェリス「やめて! やめてよ! どうして…どうしてこんなひどい事をするの!?」
エランド「…父さん! 俺も…俺も戦うから! ねぇ!」
シーナ 「いけません…! あなた達の歯が立つ相手では…!」
アイフス「そうよ…ねぇ…? ふふっ!」
(ヴェランドが貫かれ)
ヴェラド「あ゛……ぅ……っ…ぉ…」
エランド「…父さん!!!! ねぇ…! 父さん! しっかり…しっかりしてよ! ねぇ…父さん!」
ヴェラド「……っ…エラ……ン…ド……これ……を…」
(エランドに剣を託し)
エランド「ぐすっ…父さん…ねぇ……死なないでくれよ! なぁ! せっかく戻ってきてくれたんだろ…! …ぇ…? 何だよ…これ……!」
ヴェラド「……生き……て……くれ…」
エランド「とう……さん…? 父さん…! 父さん…! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
シーナ 「まさか……マスター…マスターッッ!!!!」
ヴェリス「お父さん…目を開けて! 開けて! ねぇ! お父さん!」
アイフス「呆気ないわね。全く面白くもなんともない。まだ死にかけのネズミの方が見応えあるもの」
シーナ 「許しません……あなたは……あなただけは…ッ!!!!」
エランド「か…母さん…!?」
シーナ 「退がりなさい……」
ヴェリス「…待って! お母さん、私も-」
シーナ 「母の言う事が聞けませんかッ!!!!!」
アイフス「あら…こわーい。そこまで戦力にならないのなら……先に葬ってあげる」
ヴェリス「えっ…助け-」
アイフス「さようなら、君たち」
(凄まじい爆風があたりを覆い)
ヴェリス「…おか…あ……さん…?」
シーナ 「ぅ……ぁ………」
アイフス「戦う力を失っても子供だけは絶対…とでも? あははははははっ! 笑えてくるわね…滑稽滑稽」
エランド「母さん…まで……?」
シーナ 「……ヴェリ…ス……エラ……ンド………生きて……くだ…さい…」
ヴェリス「嫌だ…嫌だ! 死なないで! お母さん! お母さん! どうして! どうして庇ったの!」
シーナ 「……私…の……命に…代えても………あなたたちを……護る…と……誓って…いました…」
エランド「逝かないで……逝かないでよ…ねぇ……母さんッ…!!」
シーナ 「さっきは……強い言い方を…して…ごめんなさい……私の……かわいい…かわいい……ヴェリス…エラ…」
アイフス「死ぬとわかっているのならば、言い切れないような長台詞を選ばないでほしいわね?」
(シーナの剣を引き抜き)
ヴェリス「あ………ぁ………うああああああああああああああああっ!!!!!!!」
アイフス「怒りに任せれば勝てる、そんな物語は小さいころの絵本だけよ? フフフッ」
ヴェリス「う゛ぁぁっ!?」
エランド「ヴェリス!? ……アイフィス……お前だけは…許さないぞ……!」
アイフス「私もあなたたちの家系を赦すつもりは無いもの。レグルスさん?」
エランド『ヴェリス…だけでも……絶対に…護る……俺は……俺は…!!!!』
アイフス「邪魔よ」
ヴェリス「おに…い…ちゃ……」
エランド「………え…?」
アイフス「お父さんたちより弱いじゃない。あなた
(両棟を貫かれその場に倒れて)
ヴェリス「…っは…」
エランド「ヴェ……リス……嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!!!!!!!!!!!」
ヴェリス「ごめ……さ…………」
アイフス「結局最後に残ってたのはあなただったはね、4人の中で最もなにもできずに…ただ叫ぶことしかできなかった…エランド君? あら…まだ生きてたの…?」
ヴェリス「……おに………生き…」
エランド「……」
アイフス「…ついにショックで言葉すらも失った?」
エランド「あああああああああ!!!」
アイフス「何……? 魔力が……? 増幅してる!?」
エランド「赦サナイ…赦サナイ……例エ俺モ地獄行きだったとしテモ…!!!」
(ヴェリスの手に握られたもう1つの剣も手に取って)
アイフス「空の色が!? ……くっ! しまった!」
エランド「後ろだ」
アイフス「嘘ッ!? くぁぁぁっ!? 見えなかった…」
エランド「見えなかった…? 笑わせるな」
アイフス「……ふふっ…アハハハハハッ! そうね…確かに私があなたを倒すのは無理がある…でも…カーリー様ルシファーさ-」
エランド「消えろ」
ヴェリス『復讐者と化したエランド。復讐の対象が消えても、彼の闇の力はどんどんと膨れ上がっていった』
(天界)
ヴェラド「…エランド…」
ヴェリス「なに……あの…姿…」
シーナ 「まさか……エランドが…」
ヴェラド「…私たちが現世を去ることで…エランドの力の引き金になったのは事実だ…。だが…私たちが引いた引き金は人としての強さではなく…魔龍族の…悪しき力を引いてしまった」
ヴェリス「あれは…お兄ちゃんじゃない…違う…違うよ……あんな目…してない…してなかったよ…!」
シーナ 「誰か…エランドを…止めて下さい…!」
ヴェリス「いや…いや……いや…!!」
ヴェラド「ヴェリス…私達にはどうすることもできない! もう…私たちが現世に干渉することは許されないんだ…!」
ヴェリス『エランドが振るう2本の剣は…どんどんと赤黒く染まり、果はどちらがどの剣か判別できない程だった』
(4年後)
エランド「おい、魔王軍はどこだ……! 答えろ! おい!!!!!」
ヴェリス『毎晩悪夢に魘される。日を重ねるごとに彼の生気と狂気は反比例した』
ルシファ「貴様の活躍は聞いていたぞ、小僧」
エランド「……」
ルシファ「美しい目だ…いや。だったと言うべきか。左には青の光を宿し、右には碧の光を宿す…俺がかつて見た悪夢に出てきた男にそっくりだ」
エランド「お前が居なければ……父さんたちが倒れることは無かったんだ…!!」
ルシファ「フハハハハハハハハハッ! 復讐か、そうか……! 復讐だけを糧に生きてきた人間のその…禍々しい力……俺に預けるつもりは無いか?」
エランド「黙れ……! 俺は…俺自身が地獄に落ちる運命であったとしても…魔族に加担するつもりは無い!」
ルシファ「…お前の家族を蘇らせてやる、そう言ってもか?」
エランド「…何…!」
ルシファ「俺に忠誠を近い、俺のために動けるのであれば…貴様の家族を蘇らせてやろう…貴様の心に無数に絡みつく贖いという鎖を…取り払ってやろうと言っているんだ」
エランド「……本当か」
ルシファ「嘘をつく理由は無い、優秀な僕に相応の物が贈られるのだ」
(天界)
ヴェラド「…悪夢を見ている様だ」
ヴェリス「どうして…お兄ちゃんが……人を…殺すの…」
シーナ 「…エランド……あなたの行いは…間違っています……!」
ヴェラド「……あれは……もう…私たちの知る…エランドではない…何を…誤った…!」
シーナ 「エランド…あなたが罪を感じる必要など…無いと言うのに…!!!」
ヴェリス「罪を償うために……罪を…?」
ルシファ「よく戻ったな、アイフィス」
アイフィ「また僕としてこの世に呼び戻していただけようとは、ありがたき幸せ」
ルシファ「確かに俺の一存で呼び戻したのは間違いない…だが、呼び戻した本人は俺ではない」
アイフィ「…? なんと」
エランド「俺だ」
アイフィ「! エランド…」
エランド「口を慎め、俺の名を口にするな」
アイフィ「何…!!」
ルシファ「エランド、残すはフォーリエの里だ。焼き払え」
エランド「…!」
(天界)
ヴェリス「フォーリエの里…って…!」
シーナ 「私たちの……里…」
ヴェラド「……もう…手遅れだ」
エランド「消えろ…! フハハハハハハハッ…これ…は……俺の……家………母さん…父さん………ヴェリス……もう少し……で…会える…会える…アエル…遭える…逢える…AERU…アエル!!!」
アイフィ「狂ってるわね」
エランド「……フフフ…あっはっはっはっは…! 狂わないと…おかしくなっちまうんだよ! 毎晩魘される! 殺した人間、父さん、母さん、ヴェリスが皆俺を殺そうとする!」
アイフィ「だから今現実になる…はっ!」
エランド「っ! 何の真似だ……!!」
アイフィ「……ルシファー様からの命令なのよ、エランドを殺せと」
エランド「待て……これが済んだら……ヴェリスたちを…蘇らせてくれるんじゃなかったのか!!!」
アイフィ「まだそんなことを言ってるの? いつまでも頭はおとぎ話なのね」
エランド「ふざけるな……ふざけるなァァァァァァッ!!!!!!」
アイフィ「ここで終わりよ…それに…あなたに負けた時から腹が立っていたもの!」
エランド「もう一度ここで殺す……DesperaySplit!!」
ヴェリス『魔王軍の手に堕ちた世界を見ても、今の世界を見ても何も違いを感じられなかったのかもしれない』
(天界)
ヴェラド「ルシファーが本当に魔王だったのだろうか」
ヴェリス「………もう…見たくない…見てられない…」
シーナ 「……エランドが……魔王だと…?」
ヴェラド「里を襲った時のみんなの顔。私がシーナ。君に初めて出会った時に逃げていた魔人達と同じ顔をしている」
シーナ 「……そん…な………」
エランド「なぁ…父さん…母さん…ヴェリス…どっかにいるんだろ…? なぁ…ははははっ…出てきてくれよ…なぁ…俺…何か間違ったことしたかな…? 誰か…いるだろ…? …返事してくれよ……おい!!!! ははっ…あはははははははははははっ!!!!」
ヴェリス『誰かがどこかにいても返事は無い、なぜなら目の前に立っている男は魔王だから。彼の行いが間違いだと確信していても誰も教えることはできない。もう、この世界には…復讐者エランド。彼しかいないのだから』
終