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オフパコをしにきたら異世界に飛ばされました。

 俺はオフパコしにきたはずだった。それがどうしてこんなことに。


 深い霧が立ちこめる熱帯のような植生の森の中。俺——大口宗五おおぐちそうごは一人つぶやいた。

ガサゴソと足下をこぶし大のゴキブリみたいな甲虫が走り抜け、頭上にはケタケタと笑う蛍光ピンクの人面鳥が飛び回る。


 俺は、異世界にいた。




 きっかけは、1通のDMだった。

 DMといっても、お家のポストに投函されるヤツじゃない。某つぶやく系SNS内のものである。


『私とオフパコしませんか?』


 黒髪ショートの露出度高めな美少女の自撮りアイコンから送られてきた、そんなDMに、20歳童貞大学生の俺が反応しないわけがなかった。


 釣りだろ、と思った。

 よくて美人局だろ、と思った。

 けれど、1ミクロンでも可能性があるんじゃないか、と思ってしまった。


 だって彼女は、俺のつぶやきをファボる唯一のアカウントだったから。



 ご存じの通りネット弁慶の俺は、SNS上では無敵だった。

 ありとあらゆることをこなす超人だった。

 もちろん、1を100ぐらいに盛ってつぶやいているので現実はご想像の通り。

 ただのなんの変哲もない大学生だ。

 それなりに友人がいてそれなりに学業をおさめて、それなりにバイトして、恋愛だけはトンと縁がない。

 ごく普通の大学生が、ネット上でちょっと痛い発言しちゃってるだけだった。


 そんな俺のつぶやきを、彼女はちょいちょいファボった。全てではなくて、ちょこちょこなのが、俺の心を動かした。


 だから、呼び出しにほいほいと反応してしまったんだ。


 指定された路線を乗り継ぎ、隣県にある郊外の駅へと行く途中。

 路線表には書いていない、きさらぎ駅、とかいう駅で電車が止まった。

 どう考えてもヤバいから絶対に降りるもんか、と思っていたが、迫り来る便意に勝てず、俺は電車を降りた。


 俺が電車を降りてトイレへ駆け込む中、待っていたかのように電車は発車してしまった。


 仕方なしに用を済ませ、駅を出ると携帯が鳴った。


『駅前で待っています』


 例の子からのDMだった。


 もうコレ絶対にホラーじゃん、俺死ぬしかないじゃん。

 泣きべそをかきながらも、こうなったら幽霊相手でも一発ヤッってから死のうと決意した俺が改札を抜けて指定された場所へと向かうと、そこに、美少女がいた。


「こんにちは! 初めまして。大言壮語さんですね?」


 俺をハンドルネームで呼んだ彼女は、アイコンの自撮り通りの子だった。

 黒髪ショートでネコ目気味の、イタズラっぽい口元をした、露出度高めなバンギャっぽい女の子。


「ええと……nonaさん?」

「はい、そうです!」


 彼女はそう答えると、俺の手をぎゅっと握って胸元に抱えこんだ。

 自撮りアイコンではわからなかった彼女の豊満な胸の感触に思わずひるむ。


「来てくれて良かった! 絶対に来ないと思ってました」

「い、いやいや、むしろ俺の方がそう思ってたよ。っていうか本当にアイコン通りの可愛い子がいるなんて思ってなかった」

「可愛いなんてそんなぁ」


 えへへ、と照れたようにマジ可愛く笑う彼女に俺は身を堅くする。

 絶対に男が待ってるだろう、と思っていた。

 だけど違うって事はきっとこれは美人局。今現在も絶対にどっかで男が見張っているに違いない。


「えへへ……さて、と。あのあの、どうですか壮語さん。実際に会ってみて、私とオフパコしたいですか?」

「えぇ、そんな真っ正面から聞く?」

「スイマセン、回りくどいのってちょっと苦手で」


 てへ、とあざとく舌を出しながらそういう彼女に、俺の心が叫んだ。


「ぶっちゃけ超したいです」

「よかった〜!」


 ぎゅ、っと。


「壮語さんとオフパコするの、わたし的にもアリなんですけど……ただ、一つだけお願いがあって……それを聞いてくれたら、してあげたいなって思うんですけど」


 ほらね、来たよ。これ。お金か。お金だろ。それか宗教? はいはいわかってましたわかってました。


「わたしの世界を、救ってください!」

「は?」

「救ってくれたら、もうハメ放題! 好きなだけシてしいいですよ!」

「ま、マジで?」

「はい! モチのロンです! だから……わたしの世界、救ってくれますか?」


 上目遣いで潤んだ瞳に、儚げな表情。


 ヤバいぞ、と本能が告げていた。どう考えても頷いたらダメだと。


「お願い……」


 彼女は俺に身体をピトッと寄り添わせた。柔らかい感触が、匂いが、俺の全身を襲った。


「わ、わかった!」

「本当に?」

「もちろん! 約束する、きみの世界を救うって!」

「やったー! ありがとうございます!」


 チュ、っと。頬に柔らかな感触を感じた。


「ふふ、これはちょっと前払いです」


 イタズラっぽく笑う彼女に、俺の頭はクラクラとする。


「そしたら、世界征服、よろしくお願いしますね!」

「え? 世界征服?」


 聞き返そうとした俺の声は上手く出なかった。

 比喩ではなく、本当に頭がクラクラとして、意識が急激に遠のいていった。

 そして視界はホワイトアウト。




気がつくと俺は密林の中に一人立っていたわけだ。


ヒロインの名前空欄になってたので更新しました。

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