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1ー2

反射的に扉を確認すると、立っていたのは先ほどまで修羅場の当事者だった男だった。

180を超える身長に、整った顔立ち。少し吊り上がった目元が冷たさを感じさせる。髪はくせ毛かパーマをかけているのかは分からないが、色は金色に染め上げられており、少し長めだ。制服も適度に着崩しており、不真面目な印象を受ける。

間違いない、「佐倉全」だ。


パッと見は女ったらしのチャラ男というよりは、不良に近い。

図書室に来るようなタイプには見えないが、何をしに来たのだろうか。

取りあえず軽く会釈をして、カウンターから出て本を探す。

図書室に入ってきて一番目に付く場所に、新しく入荷した本やおすすめなどが置いてある。そこにざっと目を通し、興味を惹かれる本を探す。

最近映画化されたばかり恋愛小説が置いてある。なかなか評判はよかったはずだ。友達が映画を見て頻りに私に進めてきたことを思い出す。

これにしようかと本を手に取った。


「それ、面白いの?」

「え?」

後ろから手にある本をのぞき込むように佐倉全が立っていた。慌てて距離をとる。

いつの間にこんなに近くに来ていたのだろうか?

「映画化されてるよね。見た?」

「い、いや。見てないです…」


私の戸惑いをよそに、佐倉は気軽に話しかけてくる。

これがモテ男の実力か

ただ少し赤くなっている頬がもったいない。


「そっか。…よかったら一緒に見に行かない?」

「は?」

「興味はあるんだけどねぇ、ほら、恋愛ものって男一人じゃなかなか見れないでしょ」

「はあ…」

「で、どう?」

「いや、遠慮しときます」

「そ。残念」


一体なんなのだろうか?何故私は話しかけられているのか分からない。

先ほどの修羅場を盗み聞ぎした手前、少し気まずいし、仲良くなりたい人種でもない。話しかけられても困るのだ。


「あ、じゃあさ。おすすめの本はどれ?」


佐倉は名案だと言わんばかりに、顔をほころばせる。


「おすすめ、ですか…」

「うん。おすすめ。僕あんまり本とか読まないから簡単なやつね。」

図書委員をしている限りは、こういう頼みは断れない。

「えーっと、じゃあ…好きなジャンルとかありますか?」

「特にないかなあ。あ、でも恋愛ものは苦手かも」


さっき恋愛ものの映画見たいとか言っていた人のセリフとは思えない。まあ、でも恋愛ものは私も読まないので助かった。

簡単なものがいいと言っていたので、児童文学とかがいいかもしれない。


「ファンタジーは大丈夫ですか?」

「大丈夫だと思うよ」

「じゃあ…」


同じくおすすめの場所から、海外の児童文学の本を探す。


「これとかどうですか?」

「面白いの?」

「私は好きですね。児童文学なので簡単ですし、読むのも時間はかからないとおもいます。でも、ストーリーとかもすごく面白いです」

「じゃあそれ借りる」

「わかりました。こちらへどうぞ」


佐倉をカウンターへと案内する。カウンターが間に挟まるのでなんだか安心する。


「学生証はお持ちですか?」

「学生証がいるの?うーん。ちょっと待ってね」


お尻のポケットから財布を取り出し、学生証を探している。一瞬だけど財布の中が見えた。お札が凄い枚数だった。あれが千円札だけだったとは思えない。高校生が持つ金額ではなかった。

佐倉は一体何者なんだろう?


「あ、あった。はい」

「お預かりします。」


学生証のバーコードを読み込み、続いて本に張り付けられているバーコードを読み込む。

佐倉は私の動作をじっと見ている。少し居心地が悪いが、気にしたら負けだ。


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