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12 友達の味


次の日、私は美子と近くのショッピングモールの中のカフェに来ていた。全くんとのことを美子に報告するためだ。ついでに服も選んでもらいたいと思っている。


「全くんのご家庭が複雑なのは風の噂で知ってたわ。」

「え、そうなの?」

「ええ。詳しくは知らないけどそういう噂はちょくちょくあったのよ。でも全くんは、誰が聞いても答えてくれなかったみたいよ。」

「…美子に言っちゃったけど、大丈夫かな?」

「後で謝っとけばいいわよ。」

「そうするよ」


やがて、美子の頼んだパンケーキと私の頼んだスフレが来た。それを食べながら、話を続ける。美子との話は変に気を使わなくていいからとっても楽だ。


「そういえば、大丈夫なのかしら?」


美子が何かに気が付いたように言った。


「何が大丈夫なの?」

「だって全くんと付き合うことになったんでしょ。」

「そうだけど、それがどうしたの?」


美子の言いたいことが分からない。付き合うことになったからどうだというのだろうか。


「あれだけ女遊びの激しかった全くんよ?急に一途になれるのかしら」

「…あっ」

「バカねえ。それに、全くんと関係あったり狙ってる女狐に付き合ってるなんて知られたら、何をされるか」

「考えてなかった…」


確かに美子の言ったとおりだった。付き合うなんてものは当事者の同士の事柄だが、何かと目立つ全くんのことだ。周りは放っておいてくれないだろう。女関係は…どうなのだろうか。女遊びが激しかったのは知っているし、現場を見たこともある。しかし、昨日の全くんを見て、もうそういった軽薄なことは止めるのではないかと感じたが、結局のところ私の主観でしかない。やはり、浮気とかされてしまうのだろうか


(いやいや、私が信用しなくてどうするの…)


うっかりとネガティブな思考に陥りそうになる。


「ま、なんにせよ全くんと話し合うことね。」

「そうするよ。」

「でも、たぶん大丈夫だとは思うわ。」

「え?」

「実希は知らなかったけど、貴方のこと見てたもの。」

「…どうういうこと?」

「何時からかは分からないわ。でも、全くん実希のこと見てたの。」


過去のことを思い出しても、全く持って気がつかなかった。私が鈍感なだけなのだろうか。いや、美子が鋭いのだ。彼女は人をよく見ている。


詳しく聞きたかったが、美子はもうパンケーキに夢中になっていた。

私のスフレもいつの間にか最後の一口になっている。甘すぎないスフレは、口の中ですぐに溶けた。


「食べ終わったら、服を買いに行きましょ。せっかくのお家デートだもの、スカートはかないとね。」

「スカートかあ…」


あまり着ないので、似合うかどうかの自信はない。でも今回は美子に任せようかと思う。私は美子の服のセンスが好きだ。私には合いそうもない可愛らしい服が多いが、彼女はその人にあったコーディネートをしてくれる。

美子はパンケーキの最後のかけらを口に放り込んだ。

そんな仕草も女らしくて、可愛らしい。ミーハーじゃなければ完璧な女の子なのに。


でも、そんな美子だから友達になれたのだ。



ここまで読んでいいただきありがとうございます!

誤字脱字などがあればご報告いただけると嬉しいです

13話+αだと言っていたのですが、14話+αの間違いです

申し訳ありません

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