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8 慟哭の味

申し訳ありません!!

投稿内容が間違っておりましたので投稿しなおします!!

読まれてしまった皆様申し訳ございませんでした。

話し終えた佐倉は膝を抱えたまま、ソファーの手すりにもたれかかるように斜めになり虚脱した。

佐倉の過去は大変なものだった。きっと私が思っているより、辛くて悲しい思いをしながら育ったのだろう。


佐倉が分かってほしかったのは、愛されなかった虚しさだろうか。

愛されないのはどんな感覚だろう

私は、きっと愛されて育ってきた。確認なんてしなくていいぐらいに、それらは普通に与えられていた。


佐倉のそばに行きたくて、彼の座っているソファーの前にしゃがみこんだ。足を固定している手に、そっと手を重ねた。佐倉はピクリと体を小さく跳ねさせたが、手をほどくことはしなかった。


「君にキスをしたのは…八つ当たりだった。」


泣き出しそうな小さな声だった。


「八つ当たり?」

「君は、僕が欲しいものを持っていると思ったんだ。」

「・・・」


その言葉には答えることができなかった。おそらく、私は佐倉の欲しいものを持っている。

佐倉の視線はいつのまにかこちらに向けられていた。だけど、私を見ているのかは分からない。


「親父には別の女がいるって言ったよね。そっちが本命なんだ。俺のお袋とは、政略結婚らしくて…。ホントはその人と結婚したかったんだよ。」

「うん。」

「…見たんだ。親父がその人と歩いているところ。初めてじゃなかったけど…、けど…!」

「うん」

「今回は、子どもも一緒にいたんだ…。」

「…うん。」


きっと子どもというのは腹違いの兄弟ということだろう。

佐倉は私の手を握り返した。痛いぐらいに強く握りしめられた手は震えている。


「僕は…家族で一緒に歩いたことなんてないのに…あの人に笑いかけてもらったことなんてないのに…!意味わかんない!あの子は僕にはないものを持ってる!全部!!」


大きな声を上げて私の手を振りほどく。佐倉は私を睨みつけ、胸倉をつかんで、床に押しつけられる。佐倉は膝で立ち、私に跨る。


「どうして!?どうして!!僕じゃなくてあの子だったんだよ…!じゃあ何で僕を生んだんだよ!?

爺さんも婆さんも父さんも母さんも!皆大っ嫌いだ!僕をアクセサリーにする女も僕が嫌いなくせに友達面する奴らも!全員嫌いだ、死んじゃえばいい!!」


襟首をつかんだまま私を揺さぶり、叫ぶ。


「どうすればよかったのさ!この髪を切ればよかったの!?もっと頭が良ければよかった?この顔じゃなければよかった?どうすれば、どうすれば僕は…!」


佐倉は頭を私の肩に押し付ける。いつのまにか襟首をつかんでいてた手の力は抜けていた。


「ただ僕は…普通の幸せが欲しかっただけなのに…。皆が持っているような普通の幸せが。

家に帰れば誰かが『お帰り』って言ってくれて、母さんが手料理を作ってくれて、父さんと将来のこととか話して…。そんな日常が、どうして僕にはないんだろう…?」


佐倉の涙で肩が熱い。


ゆっくりと、頭を撫でる。できるだけ優しく、何度もなでる。

きっと佐倉がずっと心の中に留めてきた言いたい言葉なんだと思う。彼の辛さを理解したいけれど、佐倉のいう『普通の幸せ』を持っている私には想像することしかできない。

だから私は、佐倉の頭を撫で続けた。




読んでくださった皆様ありがとうございます!

誤字脱字などがあればご報告いただけると嬉しいです。

ちなみに、13話+αで終わるつもりです。


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