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出会いの味

1 出会いの味


放課後、図書室の当番をしている時だった、廊下から女の子のヒステリックなわめき声が聞こえてきた。

この学校の図書室は、準備室や美術室しかない3号棟にあるため、他の校舎に比べて人が極端に少ない。そのため、大きな図書室であり、本も豊富にそろってはいるものの、訪れる生徒は少なかった。今日も、図書室を開けて30分経ったが、真面目そうな男子生徒が一人、本を返しに来ただけだった。

そんな場所で、大きな声が上がるのは珍しい。静かだから声は聞こえるが、反響して何を言っているのかは聞き取りづらいが、どうやら痴情の縺れのようだ。

ほんの少し興味が湧いて、カウンターから足音を殺して扉に近づく。十センチほど扉を開けると、声が聞こえやすくなった。


「そういうこと言ってるんじゃないのよ!」

「じゃあ、何?」

「誠意を見せて欲しいのよ…!」

「誠意?」

「私、全のことが好き。付き合って欲しいだけなの!」

「僕は嫌だなぁ」


全、って名前は聞いたことがある。隣のクラスのイケメンだ。女遊びが激しいという噂はよく出回っているが、この様子だと本当なのかもしれない。何となくだが、声もチャラく感じる。


「どうして?だって、私のこと抱いたじゃない…!」

「それは、君が身体だけでもいいからって言ってきたから」


なかなか大人の会話だ。高校生でそういうことをしている人がいるのは知っているが、自分にとっては遠い話な気がしている。


「それはっ、貴方に私を知ってほしかったからよ。貴方の唯一になりたいの」

「唯一?」

「そうよ。」


女の子が甘くなった。先ほどのヒステリックな声とは大違いだ。これが女って奴なのだろうか。器用なものだと感心してしまう。


「んー…。でも、君だって他に男いるよね?」

「え?」


女の子がすっとんきょんな声を上げた。

私も同じ声を上げそうになり、慌てて口に手を当てる。


「僕が知らないと思った?残念、知ってるよ。」

「え、何を?何のこと言っているの」

「まあ、別に君が誰と寝てもいいけどね」

「でも、でも!私が好きなのは全だけなの!」


女の子の方も遊び人だったんだ…。今の高校生って私が思うより進んでいるのかもしれない。



「嘘つき」



男の冷たい声が降った。先ほどのおちゃらけた声とは違う。

だけど温度の感じられないその声は、先ほどまでよりよっぽど感情がこもっているように思えた。


「とにかく、この話は終わりね。僕はもう君とは遊ばないし、関わる気もないよ。」


再び、声の明るさが戻った。


「全…!」

「僕、しつこいのは嫌い。ヤりたいだけなら他の男を捕まえて」

「…最低」

「君もね」


女の子が低い声で言うと、男は楽しそうにそう返した。なかなか良い性格なようだ。

これでこの修羅場は終わりだろうと、扉をゆっくりと閉める。そして、カウンターに戻ろうとしたが、廊下に響いた乾いた音に動きを止めた。どうやら頬を引っぱたかれた音のようだ。


「アンタなんかこっちから願い下げよっ。」


そんな捨て台詞を吐いた後、女の子はバタバタと走り去たようだった。

男の声や動きは聞こえない。

一応足音に気を付けながらカウンターに戻った。

音だけしか聞こえなかったが、何だか漫画や映画のワンシーンのようだった。実際にこういう修羅場が存在しているのだと知れて、少し大人になった気分だ。

さて、まだ閉室まで時間がある。何をして時間を潰そうか。

せっかく本が多くあるのだから、本でも読もう。何か本を探そうと立ち上がった時、扉が開いた


読んでくださった皆様ありがとうございます。完結に向けてマイペースで頑張りたいと思います。温かい目で見守りください!

誤字脱字などがあれば優しい言葉でお教えください…

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