不穏な集団
ざっざっざっざと全く乱れずに歩く集団がいる。
身は純白の鎧で包み、顔も包む兜で素顔すら見えない。はたから見たら何かの軍事訓練に見えるが明らかに不自然である。
全身を防具で包んでいるため男か女かすら分からず、その鎧から神秘的な力を発している。それが道行く人に対して余計に不気味さを与える要因になっている。
そんな彼等が道行く見知らぬ人達同士で話し合う話題に上がらないわけがない。
だが、彼等に話しかけようとする者は誰1人いない。何故なら全く乱れぬ動きでひょこっと道に出た狼を肉塊残さず文字通り血飛沫に変えて放置していったからだ。
「おい、何だあれ?騎士みたいだが見たことあるか?」
「いや、あんな集団いたら忘れられねえよ」
「向こうから来たってことは王都?しかし、あの鎧高そうだな」
「うわぁ、なんか狼に同情しちまうぜ…………」
「この方向ってダンジョンがあったところだよな?何か討伐依頼でも出たのか?」
知らない人同士で話し合うも、結局何もわからなかった。一体なんだったのか、誰が仕向けたのかすらも不明のままダンジョンへ向かって行く。
ざっざっざっざと乱れぬ足音が響くだけだった。
〜●〜●〜●〜●〜
「マジでなんなんだあれ」
「怖いですぅ…………」
「…………………………………………」
俺はハピとメジェドさんと一緒に地上の様子を見回っていたらすごい集団に遭遇した。
見た目はまさに純白の騎士って言葉が似合うがなんか違う。なんつーか、中身が空っぽ?
集団行動だと満点を取れそうだが、全員が同じ人物みたいというかクローン騎士と言ったほうが間違ってない気がする。
俺の記憶が正しければとあるSF映画でクローン兵士とかいたな。雰囲気がまさにそれっぽい気がする。
恐らくはうちのダンジョンが目的だとは思う、けれどガチガチに装備しすぎていないか?一応中級ダンジョンとして通っているけど武具に素人な俺でも明らかに強いとわかる装備をしてくるなんてどういうことだ?
もしや、ひそかに討伐命令が!?もしそうだったらギルマスらの所の直接乗り込んで問い詰めなければ。
「ご主人様ぁ、なんかこっちを見てますよ」
「ん?なんでそんなことを…………ほんとだめっちゃ見てきてる」
「なんか嫌な予感がします」
「奇遇だな、俺もだ」
「……………………」
いやー、なんでだろうねぇ。どうしてあの鎧マンズ俺たちの方を向いて歩いてくるのかな?俺というよりハピを見ているような気がしたけど。
ねえねえ、なんで囲むのかな?俺はまだ悪いことしてないのにさ、ちょっと考えようよ、な?
そんな願いも届くはずもなく奴らは剣を抜き、俺に切りかかってきた。いや、この剣筋は俺を狙っていない?
もちろん、と言ったらおかしいかもしれないけど真剣白刃取りで受け止めた。うちのもんに手を出しやがって、相応の覚悟はできてるんだろうな?
「おいコラ、問答無用で切りかかってくるのはどういう了見だってメジェドさんバリア!」
「……………………」
「問答無用にもほどがあるってのに、どうせ何言っても喋らないだろうからやってやる!周りは避難してろ!」
まさか魔法まで放ってくるとは驚いた。メジェドさんがバリアで守ってくれたものの殺意が高すぎるぞ!
もはやこれは俺に売られた喧嘩だ。ハピだけを狙ってるようだが看過することはできない。なんせおれはここのダンジョンの責任者で問題起こしたら痕が面倒だからな。
「かかってこい!10分、いや5分で終わらしてやる!」
「やりますよー!ご主人様が!」
俺がやる気になったのに便乗するハピさん、肩の上に立ってるからその大声俺の耳にダイレクトアタックするんだけど?
そこからは語ることはない、向かってくる敵から殴り倒したりジャイアントスイングで蹴散らしたりと対集団戦法で戦う羽目になった。あの鎧は意外と軽くてぶつけた時の感触がいまいちだった。
20人ほどいた騎士もどきだったがどれだけ張り倒そうが妙にしぶとく立ち上がってくる。
「……………………」
「せめて何か喋ったらどうだ!気味が悪すぎる!」
「……………………」
「クソが、メジェドさんじゃあるまいし」
そういったらメジェドさんからの視線が刺さる。感覚的魔物じゃなくてチクチクと物理的に刺してくるような感じだ。
もしかして拗ねてる?後で豚の心臓あげるから大人しくしてくれないかな?
それにしてもこいつらは諦めることを知らないのか!どんどん騒ぎが大きくなっていくというのに止まる気配が一向にない。流石に一人じゃハピを守りながらだと危なくなってきたぞ、主にはピが。
「こっちだ!喧嘩屋が奴らを食い止めてる!」
「奴らを止めろ!何者か知らんが喧嘩屋に喧嘩を売ってこれ以上問題を起こさせるな!」
「まだ借金があるのにダンジョンを閉鎖されてたまるか!」
「もっと宝箱の中身をよくしろぉ!ポーションだけしか出ないのはこりごりなんだよぉ!」
まさか、ダンジョン攻略をメインにしている冒険者まで集まっただと!後半から欲望が漏れてたし、宝箱の中身がポーションしか出ないのは運が悪いからだ。
でもポーションはそれなりにいいのが出るように設定してるんだけど、今気にしても仕方ない。
しかし、借金抱えてるやつとかたまに欲望が出るのはいかがなものか。最近は治安が悪くなってきているし警備を増やしてと言ってるけどなかなか来ないんだよなこれが…………
「ぐわぁぁ!」
「なんだこいつら!妙に強いぞ気をつけろ!」
「いでぇ!俺の手がぁ!」
ってマズい!想像以上に被害が膨らんでいる!妙に反応とか早いと思ってたが一般の冒険者と比べてここまで差があったのか。くそっ、俺の見る目はない、いや奴らが強すぎるんだ。俺が異世界産かつ体が特別性だからこうしていられるわけでもあるし、あの鎧共も何かかかわってるんじゃないか?
だけどここでグダグダ言っても仕方ない、加勢しないと!
「ハピ!メジェドさんと一緒に帰れ!できるだけ素早く認識されずに!」
「はいっ!大人しく逃げますーーーーー!」
あ、おい。メジェドさんだけ残して自分一人だけ逃げていったぞ。一緒に帰れと言ったものの、やっぱり怖くてはやくにげたかったんだろうな。
「…………………………………………」
メジェドさんが悲しそう(に見えたが実際は分からない)にとぼとぼと歩きながらダンジョンの方へ帰っていった。徒歩で帰るのか…………
気づけば喧騒がどんどん大きくなっていく。そろそろ俺も本格的に参加しないとな。
バッサリ斬りかかられそうな冒険者の横から謎の騎士の腕を掴み他の騎士の方に投げ飛ばす。それだけで終わるものか、今度は近くにいた騎士の兜を鷲掴みにして横から思いっきり殴りつけてダウンさせる。
けれども奴らは堪えていないように立ち上がる。そうか、うちのもんを狙った上に関係ないのを巻き込んでなお立ち上がるか。結構頭に来たぞ、この厄介共め。
「さっさと終わらせる…………死にたい奴からかかってきな!」
大声をあげて奴らを挑発して少しでも気を逸らせてから殴ろうとした、いや細かく言えば殴り飛ばしたかったんだけど。
「……………………」
興味を失ったかのように、何事もなかったかのように倒れた冒険者を何もない地面として踏んでいきながら奴らが来た道に進んでいった。
「…………は?ちょっと待てや!」
流石に逃がすわけねえだろ!どんだけ被害が出てると思ってるんだこっちは、最低でも三人はとッ捕まえてどこから来たか聞き出してやる!
だが、そんな俺の意気込みは虚しく転移魔法という形で消えてしまった奴らに手が届かなかった。
「転移!?しかも個人個人で発動してたぞ!」
「あんな化け物集団見たことがない。あんなのがいたら少しは噂になってに」
「ジェフ!こんなところで死ぬわけにはいかないって言ってたろ!しっかりしろ!」
残ったのはちょっとした地獄、重軽症だけでなく既に死亡している奴までいる。くそっ、良くも俺のダンジョン周りを荒らしやがったな!あいつらと俺の稼ぎ、そして将来性を大きく削ったんだ、奴らには覚悟してもらおう。
この騒ぎは瞬く間に広がり、王国にあるほとんどのギルドが例の騎士集団のことをすぐ知ったが何も成果はなかった。奴らはいったい何者なのか、そしてこれが嵐の前触れという事はごくごく一部という予知スキル持ち以外を除いて知る由もなかった。




