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硬い体に家宝をぶつけるとどうなるか

勇者ボルトが撤退した朝、俺たちはダンジョンから出て他な施設をじっくり見ることにした。


が、割と野宿している人が多い。宿屋は重症の治療を終えたものが優先的に使用しているらしく、沖部屋なんてないような状況だった。


「ふーん、それでお兄さんは稼げたのか?」


「おうとも、三日は何もせずに飲み歩くくらいにはな。欲しいものあるからそんなことせずに貯めるんだがな!」


ガハハと豪快に笑うおっさんだが機能にハピから財布盗まれた人じゃん…………なんかごめんなさいと心の中で謝っておく。


なおハピは知らん顔して周りの施設をきょろきょろしている。ここで価値観の違いが出てくるな。ハピにお金を渡したら散財しそうだ。


商店をちょっと覗いてみよう。荒々しい装備をした者たちが歩く中でアクセサリーが売ってあるのは珍しいな。


「はい、いらっしゃい!あら、喧嘩屋さんじゃないの」


「やあ、商売繁盛してるか?」


「もっちろん荒稼ぎさせてもらてるわ!幸運のお守りは効果がとても薄くても重ねがけ出来るから飛ぶように売れる売れる、おかげで在庫が尽きちゃって」


「幸運のお守りは作る人が少ないんじゃないか?」


「ダンジョン以外だとあまり売れないし、普通の狩りには邪魔でしかないからどこでも在庫だけはあるのよ。それに死んじゃったらすべておじゃんだから高くても効果があるのがそこそこ売れるってくらい。ここはちゃんと管理されてるし生還率も高い、潜ろうと思えば毎日潜れるから安いのがよく売れるのよ」


店主のおばさんは嬉々としてお守り事情を話してくれた。中確率で月に一度より低確率で毎日行くほうが、その日しのぎだが生活しやすいということだ。


先ほどのおじさんは三日は遊べるほど稼げたといっていた。これがまさしくこの例に当てはまるだろう。


「ご主人様!これ欲しいです!」


「お前の体に比べてこの髪飾りはちょっと大きすぎないか?」


「ですので部屋に飾ります!」


「あー、なるほど。店主、これ一つくれ」


「ほほっ、まいどあり」


結局この商店でハピが欲しがった小物をいくつか購入した。ああ、こうして普通に買いも祖をするのも久しぶりだな。ずっとダンジョン経営や事件に巻き込まれたりしたからゆっくり買い物できなかったもんな。


元の世界でも…………どうだったかな?この体のせいで妙に狙われてたな。


俺自身が異常なのは自覚している。トラックに轢かれてもトラックだけぶっ壊れたし、ある意味でこの世界は俺にあってるかもな。俺自身でろくに戦っちゃいないけどな!


それじゃあ俺も食べ歩きでもするか。屋台の一つ二つはあると思って外に出たんだが、意外と多くてちょっとした祭りのような状況だ。


ま、外に魔物が出ないと確約されている上に良識ある冒険者も多いから安全なんだろ。裏は知らん。


しかし、こういうところに限っての話ではないが面倒なやつは現れるわけで。


「だーかーらー、今日は休みだつってんだろ!」


「いいじゃねえかよ。ダンジョンに休みとか誰が決めた?魔物しかでないところで修行しても構わねえだろ」


「ここには管理者がいるんだ。まだ始まったばっかだから変に規則が変わると俺らも困るんだよ!」


「だったらぶちのめして従わせたらいいじゃん」


「お前…………言ってることわかってんのか?」


「俺は勇者だ、俺が正しいと言ったら正しいんだよ!」


やっべえ、ダンジョンの入り口でスキンヘッドの世紀末なおっさんと青年が言い争いしてる。しかも青年は自分で勇者って言ってるし。


あいつ昨日の勇者ボルトじゃん、まだここに居たんだ。あの時は見逃したけどここで騒ぎを起こされちゃあな。


おっさんが言うように俺も変な規則を作って制限することは避けたい。ポイントを荒稼ぎできなくなる。


ひとまずここは双方の矛を収めてもらおう。


「2人とも落ち着けって。今ここで揉めてもダンジョンが開くわけないだろ?」


「だから責任者呼んで開けって言うんだよ!」


「あんたらだって休みの日は欲しいだろ?常に戦い仕事するのってきついもんな」


「だけどよ、今やらないと後でレベルが足りないとかなったら終わりだろ!」


「我儘言っても何も変わらないぞ?」


「うるさい!僕の言うことに口答えするな!」


そこからの行動が異常に素早かった。自称勇者ボルトは剣を抜き問答無用で切りかかってきた。


一応勇者と言うべきか、油断していたおっさんは突然の攻撃に対応できずこのままだと斬られる。


即座に俺がおっさんを剣の軌道から外れるやうに引っ張り、剣を腕で止める。



ポッキーン



こんなにコミカルな音で折れる剣なんて見たことないぞ。と言うか腕にぶつかっただけで剣が折れるってどうなんだよ。


「なっ、ば、僕の剣が!?」


「我が家の家宝ーーーーっ!?」


騎士っぽい女の子が叫ぶ。うん、これ折れた剣拾って見たけど普通に硬かった。普通にしたら折れるはずなはい。


俺にぶつかった時の衝撃、つまり勇者の剣を振る力と俺の肉体がぶつかった事に耐えられなかったと言うわけか。


やっべ、あの時の勇者は情けない感じだったけど少し見直した。どこの家宝の剣は知らないけど、それが割と脆かった所為でもなかなかだぞ。


「武器も無くなったところで帰りな。そんなんじゃダンジョン攻略なんて無理だろ」


「……………………そう、だな」


「託された家宝…………」


勇者ボルトは苦い顔をして、女騎士は呆けたような表情で家宝家宝と呟く。フラフラしてるのを勇者の取り巻きに支えられている。


よかった、一応勇者だしチームワークくらいあるよな。一応、俺の敵みたいな立ち位置だけどなんかちょっと可哀想な気がしてきた。


もう喋ることはなく無言で勇者一行はここを立ち去った。折れにくい剣を見つける事を祈っておこう。


「さて、買い物続けるか」


「はーい!」


そして野次馬が集まってきたのですぐに小物を買った商店とは違う店に入って買い物を楽しんだ。


勇者ボルト、この挫折(?)が君の未来の栄光に繋がる礎となってくれ。と偽善的に言っておこう。

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