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お前は殴りたいほど嫌いだ


「え、なにここ…………」


「見たことない木に花が何故ダンジョンに」


「あやつの趣味か?妾の扇の模様に似てる花びらだのぅ」


「美しい…………」


四人の反応は様々だった。一瞬ここがダンジョンだということを忘れて散りゆく桜の花弁に魅入っていた。


恐らくはダンジョンマスターの趣味だと思ってるだろう。ま、これも全部仕込みなんだが。


花びら一枚一枚に武闘傘・桜吹雪の効果を持っている。一枚付着すればほんのちょっとだけ弱体化してしまう。


だが、それは数字ではなく割合なので高いステータスを持っている奴ほど効き、低いステータスならそこまでという感じだ。


特にステータスカンストしてる魔王にとっちゃよーく効く品物だ。


さて、あいつらが桜に見惚れているところで…………


一撃、バガンを背後から武闘傘で殴り飛ばす。バガンは殴り飛ばされた瞬間に強制転移された。死んではないだろうがさっきのパンチは彼にとって一撃必殺だったようだ。


二撃、ヴァルキリーのお偉いさんの横っ腹に勢いよく廻し蹴りを放つ。これも食らったお偉いさんは一撃で外に強制転移された。


「ごめんなさいっ!」


「があっ!?」


『ケツァルコアトル』のギルマスには一言謝り傘で頭をたたく。やはり一撃で強制転移でこのフロアから消えた。


「むぅ、不意打ちを打ってっ来るとわぉっ!?」


「チッ、無駄に反応速度がいいな」


派手にやりすぎたせいか魔王にだけは避けられた。動きは桜の花びらがいくらか付着していて、ほんの少しだけ鈍っている。これだけでもアドバンテージがあるもんだ。


「ここまで来たら最後はヌシとの決着よのぅ!さあさ負けてダンジョンごと妾のモノになるがよい!」


「ハッ、やなこった!」


これも想定の範囲内だ。どうせ魔王だけが残る、というのはどうやら世の節理らしいからな。まったくもって理不尽だこの野郎!


魔王は距離をとって高速で何かを唱えている。間違いなく魔法を唱えて何かしようとしている。そんな隙を俺が見逃すと思っているのか!


俺も負けじと高速で魔王に接近し傘を振る。詠唱は止めずに腕で受け止めた魔王だったがミシリ、という音が腕から聞こえた。


普通なら骨にひびが入りそうな音だったが魔王は平然とした顔をして続ける。浅かったか!


「さあ喰らうがよい!『ビックバン』!」


直後、とても大きな爆発が部屋を包んだ。明らかにオーバーキルどころか灰も残らない消滅の一撃だろうが…………おれにとったてだぬるい煙にしか見えねぇんだよ!


傘をとっさに開いて防いだせいでもあってダメージは無し、そのまま魔王の鳩尾に傘の先端をぶち込む。今度は手ごたえアリだ。


「ぐふうっ!?」


「吹き飛びやがれ、このはた迷惑な魔王が!」


勢いよく決まった傘での突きで魔王はこの階層の壁まで吹き飛び、さらに壁にめり込んだ。そんな隙を俺が逃すはずは無い。


直ぐに間を詰めてめり込んだ状態から脱しようとする魔王を滅多殴りする。それはもう反撃など許さないという勢いで、だ。


ドゴドゴドゴと、ドゴドゴドゴと、何時間かと思えるほど、時間の感覚が無くなるほど殴りまくった。


だが、殴られている魔王はこたえている様子は無い。むしろニヤリと笑みを見せているほどだ。


「なかなかやるではないか!それがヌシの本気かのぅ!」


「こいつ…………」


殴られていてなお話しかけてくるか!という前に今度は俺が吹き飛ばされた。なんとか着地に成功したんだが…………


「さあさ、妾の花びらよ、舞うがよい!」


嘘だと言いたい。本当に嘘だと言ってほしい現象が眼の前で起きている。まあ、簡単に言っても分かると思うんだが…………



『散っている全ての桜の花びらが魔王の持つ扇に操られている』



お前も桜吹雪シリーズ(おそらく桜系統のものとされてるからシリーズだろう)持ってるのかよ!?つーことはこの階層は完全に魔王のポジション!


いや、まだ慌ててはいけない。幾ら何でもここは俺のダンジョン、そう簡単に効果まで上書きされーーーあ、これ上書きされてるやつだ。そういやダンジョンも御都合主義で上書きされてたの忘れてたははは。


冗談じゃねぇぞクソッタレ!


なんか体に当たる桜の花びらがベチベチと花びらじゃない音を立てて身体にぶつかってくる。これ鉄くらいの強度あるんじゃないか?


まあ、これくらいで押し負ける俺ではない!人間舐めるな都合の塊がぁっ!


「うおおおっ!迷惑かけてんじゃねえぞこの馬鹿!」


「妾に向かって馬鹿とな!?誰が馬鹿じゃ!馬鹿って言った方が馬鹿なんじゃぞー!」


「うるせぇ!とっとと隠居して面倒なこと起こすな!」


「隠居したら自由になるから爺から止められてる!バーカバーカ!」


「はぁ!?あっ…………」


自由になるということで察した。そもそもこいつ隠居の意味が分かってないっぽい。


こんな小学生みたいな言い合いしつつも4発/sで互いの武器がぶつありあっている。それでも魔王は弱る気配すら見せない。


「こんのぉっ!斃れろぉ!」


「妾は倒れぬ!欲しいものが手に入るまでなぁ!」


「告白まがいな事言いやがって!俺はプライスレスだ諦めろ!」


「よく分からん単語で妾を誤魔化そうとするでない!ダンジョンマスターよ、ヌシを寄越せぇぇっ!」


「ダンジョンの権限使ってでも拒否する!」


「黙っとれバーカバーカ!」


「テメェ自分で言っといて馬鹿っていうのかよ!」


「魔王特権だ!大抵それ使えば何とかなる!」


本当に何とかなってる節が多すぎるのが困りものだと俺は思うのよ。一回討伐されて心折った方がいい。今ここでなぁ!


「ふぬぅんっ!何故だ!何故そこまで拒む!顔も知らん神の言いなりになるなんて下策中の下策であろぅ!」


「神がどうか知らん!俺はやりたいようにやるだけだ!お陰で今の仲間達に出会えた!」


やる気になってるのは割と楽しくなってきてるからだとは大声では言えんが、現状でも良くやってるし今さら何処かに転身するのは嫌だ。


というのは建前でずっとこいつの相手させられるのが目に見えて分かるから嫌だ!


ああ、もうこういう輩にはガツンと言わなきゃ一ミリも聞かねぇ。ほとんどヤケだが本音をぶつけてやる。


決してポロっと本音をこぼすラノベ主人公みたいにではなく、あえて本気で本音をぶちかますから誤解はしないように。


「やっぱり俺は…………」


「うむ!やはり妾の目は確かだ!この気分も!」


もはや傘もいらねぇ、明確な拒否をするのに武器なんか必要ない!


傘を力の限り投げるが、やっぱりあっさり避けられる。そしてしたり顔な魔王がイラつく。


「お前が嫌いだ!」


「妾はヌシがすっ…………す…………」


俺の拳が魔王の頬に入った。手応えはあったが効いてる様子がほとんどない。何か言おうとしてたがどうでもいい。


このまま力を込めて殴り抜く!


思いの外あっさりというか、力が抜けたように魔王が吹き飛んでいった。そしてそのまま何かが折れたような音がしてダンジョンによる強制転移が行われて…………


「……………………ゑ?」


最終手段ということでアルと一緒に戦ってた割に無傷でいつの間にか居たメジェドさんが俺を近くで見てるなか、呆気なさすぎる結末を逆に受け入れられなかった俺がいた。

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