短く爆発の花を咲かす決闘
これは後の『ランクコロッセオ』のちょっとした歴史に残る戦いだった。
まず、ランクコロッセオという場所について説明しておこう。
ランクコロッセオとは単純に言うと闘技場である。しかし、剣闘士が戦うわけではなく、ギルドの小競り合いや決闘などの争いをするために造られた。
これが造られる前は街中でもギルド同士の争いで血生臭い事件が起こる時もあり、昔に起きた惨事を繰り返さない為にランクコロッセオが造られた。
ちなみに、名前の由来は決闘により自分と相手の優位性、もとい『ランク』を決めるために『ランクコロッセオ』と名付けられた。
そして今日、決闘という名の集団戦が行われた。
「うっしゃぁ!喧嘩屋つーくらいだから強いんだろ?」
「少しは落ち着け。というか、お前のワガママに私達を付き合わせるんじゃないぞ」
「いーじゃんさ。どうせ興味あったんだろ?まあ、あたしらより弱いって」
彼女は豪語しているが、今回参加するランク3〜4のメンバー14人が誰も倒れることがないと信じていた。しかし、この数秒後に空から降ってきた相手に絶句する。
ズゥゥゥン…………
とても重いものが地面に着地する。それと同時に大きな音も鳴り土煙が上がる。
ヴァルキリーのメンバーは突然の事に唖然とし、混乱していた。一体何が落ちてきたのか、それは土煙が晴れなければ分からない。
まずそれぞれの武器を構えて警戒する。何が飛んでくるか分からない状況になってしまったのだ。
あと、ここら辺は緩やかなので忘れがちだが人間と魔族は戦争をしている最中だ。もしかしたら大型の魔族かもしれない。
「シュコー…………シュコー…………」
騒然となる中、『奴』は現れた。3mほどの巨体に似合う巨大なハンマーを持って土煙から現れた。
まず何というか、威圧感が半端ではなかったと後にヴァルキリーのメンバーの1人が語った。そして、皆即座に思った。勝てる相手なのか、と。
『ただいまより、ヴァルキリーチーム対喧嘩屋の決闘を開始します』
「「「「はぁっ!?」」」」
この化け物が現れて1分もしないうちに決闘が開始するアナウンスが流された。よーく見たら、端っこの方に喧嘩屋がポツンと優雅に傘をさして立っていた。
「あ、あれ喧嘩屋じゃ」
「つーか何だよアレ!?」
「シュコー…………シュコー…………」
ズンズンと近寄ってくるアルに向けて刃先を向けるが臆すことなく真正面から歩いてくる。
そして、ハンマーを振りかぶり…………
「『エアバレット』!」
1人が放った魔法が魔法がハンマーに当たる。当たった瞬間にハンマーが爆発した。
「よし、これで」
隙ができた、と最後まで言えなかった。アルが一気に詰め寄りハンマーを爆発させたのと同時に、逆方向へと回転して勢いを増した状態でハンマーを振ってきたのだ。
そのなぎ払いで6人が為す術なく一度に吹き飛ばされた。かなりの距離を飛び、観客席にまで突っ込んだ者もいた。これが個人的な決闘でなければ観客もいたかもしれないので惨事は免れた。
吹き飛ばされた方はたまったもんじゃないが。
「お、臆すな!私達がヴァルキリーだ!」
「あんなデカブツ、数発も打ち込めば倒れるって!」
大剣を振り回している、会食の時にもいた女がそう言って突っ込んでいった。
「ばっ、馬鹿!もう少し連携を!」
「らっしゃぁぁぁぁっ!」
ガキィンッ!ドォンッ!
ハンマーと大剣がぶつかった瞬間、高い金属音が聞こえたと思ったらハンマーが爆発して一気に弾かれた。
「おんどれぇぇぇっ!」
「シュ、コー…………」
何事もなかったかのように両者は再び互いの武器を振るう。そしてぶつかり合い爆発して弾かれる。
何度も、何度も何度も何度も何度も彼女は自分より二倍も大きいアルに対して臆すことなく大剣を振るって攻撃を相殺した。
「ハァ…………ハァ…………や、やるじゃねぇかデカブツ!」
「シュコー…………シュコー…………」
しかし、彼女の疲労の色はかなり濃くなっていた。相手は伝説級のタイタン希少種、普通ならランク4の冒険者が50人いて半分以上犠牲を出すか出さないかのレベルでなんとか倒せる相手に、手加減されてるとはいえ彼女は何度も打ち返したのだ。
「こっんっのぉぉぉぉぉ!」
最後の一振りになったこの一撃はアルの身体に命中した。だが、服と皮は斬れても肉を斬るまでには至らなかった。
そして、アルからの反撃の一撃は振りきった大剣を構えの体勢に戻せずモロに喰らって吹き飛び、地面に着いたあとは動きもしなかった。
死んではない。そう、手加減してるからだ。
「ロザリーが殺られた!」
「このひとでなし!」
いや、アルは人じゃないんだけどな、という喧嘩屋、もとい北町健五の小さなツッコミは誰も気に留めなかった。
もう戦力を半分も削られたヴァルキリーは意を決して何としてもアルに一矢報いようと頑張った。しかし、どう頑張ったかは語るまでもなく1人ずつ瞬殺されていった。
というか、彼女達は連携というものをほとんどしなかった。ロザリーに連携が崩れるとか言ってなはずなのに連携ができていなかった。
彼女達は焦りすぎていたのだ。開始10分も経たないうちに残り2人しか残っていなかった。
「シュコー…………シュコー…………」
ズンッ、ズンッ、と余裕を持ってアルが残った2人に近づいていく。健五は離れて見ていたがその時点で2人の戦意は全くないように見えた。
その予想は当たり、2人は武器を手から落とした。
「もう無理です!」
「勝てないよぉ〜」
これは降参の意味を表していた。こうしてヴァルキリーのメンバーは喧嘩屋の使い魔1人の前にやられてしまったのだった。
〜●〜●〜●〜●〜
「いやー、勝った勝った。ついでに賭けにも買った」
「くやしい」
ギルドマスターの応接間で俺とギルドマスターはいた。ちなみに、ギルドマスターは机に突っ伏していた。
ちなみに、俺とギルドマスターがどういう賭けをしていたのかというと『相手が降参するか、それとも全滅するまで戦うか』の賭けだった。
賭けをする前はアルを連れてきた後、ギルドマスターに少し問い詰めてなぜ俺に決闘なんかをしに来たかを聞いた。
理由は単純でロザリーという女性、あの会食の時にいた品がない女が俺がランク4に相応しいか、というか私より強いのかを確かめたいというワガママ言ったのが始まりだった。
ったく、傍迷惑な奴だ。これでギルドマスターから100ゴールド取れたから別にいいけどな。アルも俺のダンジョンのボスとしての対人経験も少しは養えたことだし、それなりに儲けたな。
「残念だったな、ギルドマスター」
「100ゴールド毟り取られるのは、辛い」
「文句言うなよ。元々はギルドマスターから提案したんだからさ」
「むー」
このお婆ちゃんは机に突っ伏してむーなんて言うのかよ。どれだけ若作りしてんだ?
「そういえば、あのタイタン、アルだっけ、どこに?」
「ああ、あいつなら」
バンッ、と勢いよくドアが開けられた。振り返ると1人の男が息を切らしてドアを開けたようだ。
「ぎ、ギルドマスター大変です!宿屋の前で揉め事が」
「………………………………」
「…………俺が悪いのは確かだが、こっち見んな」
アルを俺が泊まってる宿屋の前に待たせていたせいで誰かに絡まれたんだろう。そして喧嘩売られて返り討ちにしたら警備を呼ばれた、という感じになったんだろうな。
俺は深いため息を吐いて立ち上がり、嫌々現場に向かうことにした。
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