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売られた喧嘩は買い潰す

「ねぇ、喧嘩屋さん」


ギルドに来たらアンに声をかけられた。俺のダンジョン攻略しかパーティを組んでないが、たまーにレインと飲んだりしてるので縁が切れてない状態だから声をかけたのか?


「よぉ、元気にしてるな」


「ええ、お陰様でね。はい、これギルドマスターかは渡してって言われてたのよ」


そう言って一枚の封筒を渡された。


とりあえず、封筒を開けなきゃ話にならない。とゆうか、でち公とハピはどこ行った?ちなみにメジェドさんは陰が薄いけどちゃんといる。金時はマスコットとして受付に1時間2ゴールドで鎮座している。


どれどれ、中には手紙が入っていた。俺が住んでた地球みたいなような真っ白な紙ではなく古い時代の羊皮紙で作られた手紙だな。しかし、ギルドマスターの口から言わずに他人を介して渡される手紙って何だ?


さて、何て書かれてるんだ?



『喧嘩屋殿、お前の強さに興味あるから5日後に決闘するかランクコロッセオに来い。来なかった場合、お前は逃げたという噂を流し、強制的にランクを降格させる』



えぇ…………なにこれ脅迫文?


つーか誰がこれを俺に向けて送ったんだ?名前が俺の喧嘩屋しか載ってないぞ。いや、もしかしたら封筒に名前が書いてるかも…………


淡い期待を持って調べたが名前は何もなかった。


「これ、誰が俺に宛てたんだよ」


「『ヴァルキリー』のとこよ。この字は女性が書いたものだろうし、喧嘩屋さんに喧嘩売る女性なんてあそこしか考えられないわ」


「戦乙女ねぇ…………」


ヴァルキリーと言ったら神話の中に出てくる戦乙女の事だよな。確か女性しかいないし、もしかしたらあの時の会食にいたやつらか?


いやいや、恨みなんて買った事もないし!あいつらがただ勝手に暴れてただけだし!


いや、もしかしたら俺が参戦してなかったから?いやー、そんな理由で決闘なんて……


「行きたくねーな」


「行きたくなくても行ったほうがいいわよ。本当に言った事をやりかねないわよ?」


「何でそんな事するんだよ?メリットも特にないくせにさ。それに決闘内容が全くわからんこが一番気になる。何人でするかとか誰が代表でやるかが全く書かれてない。こんな説明穴あきだらけの文書に結構しようなんて言われても信用ならんわ」


「へ、へぇ、貴方がそう言うならそんなのね。そんなこと言っても行かなきゃいけないわよ。貴方の面子もあるけど、このギルドの面子もあるのよ?」


「むぅ、そう言われるとなぁ……」


この決闘に行かなければ『あのギルドの冒険者は腰抜けだ』と言われて貶される。迷惑極まりないぜ。


無駄にやりあう必要も無いのに何で争うんだ?あいつらは本当に脳が筋肉で出来てるのか?命知らずの戦乙女ならぬ戦馬鹿なのか?


言い出したらキリがない。軽く捻ればいい話…………いや、待てよ?


「あの、喧嘩屋さん?悪い顔をしてるけど、どうしたのかしら?」


「いや、さ。喧嘩屋とか言ってるけど実際の職業はテイマーだ。俺が戦わないが、あいつらを従えてるってだけでもそれなりの宣伝にはなるよな」


「そうだけど、その、馬鹿にしてると思われるかもしれないけど貴方の使い魔達はとてもじゃないけど『ヴァルキリー』に勝てるように見えないわ」


「俺の使い魔が3人だけって誰が言った?」


「えっ?ハピちゃんに金スラくん、でち公じゃないの?」


この時にアンが『使い魔って3人って言うんだっけ?』思ったのは俺の知らないところである。


「実はある場所に何人か置いてるんだ。かなり目立つから置いてきたんだが、この際だ。あと金スラじゃない、金時だ」


そう言って席に座る。まだ朝飯を食べてないからな。今日は軽く済ませよう。




〜●〜●〜●〜●〜




ここから語る視点は三人称と言えるだろう。


「ふわぁ、夜に門番が回ってくるのは暇だぜ」


「おい、俺ら2人しかいないから無駄口叩くなよ。何かあるかもしれないぞ?」


「ないない、前に魔物が来たのって確か10日前だったろ?なら俺らが担当になってる間は来ないって」


昼間はそれなりの人々が街へ入ろうと並んで検閲を受けるが、流石に夜になるとほとんど来ない。


そのため極々稀に魔物が来るが、それでも門番で対処できる範疇なので気が抜けているのもいつもの事だ。


特にする事もなく、ただ立ってるから暇だ。それが2人の考えだった。


だが、今日は別だった。



ズンッ…………ズンッ…………



「おい、なんか足音が聞こえねぇか?」


「奇遇だな、俺も聞こえたぞ…………」



ズンッ…………ズンッ…………



重い足音がだんだんと近づいているのを門番は感じていた。近づくにつれて門番達は不安に駆られていく。


「な、なあ、応援呼んだ方がいいんじゃないか?」


「ば、馬鹿野郎!お前でも俺でも1人で止められる気がしないぞ!」


「だ、だよな、何が来るんだよ…………」


暗闇の中、門につけられている明かりに照らされて足音の正体が現れた。


「シュコー…………シュコー…………」


体長は約3mほどの大きさの大男、いや、門番は知っていた。ここに現れたのが奇妙な仮面をつけたタイタンだという事を。


「と、止まれ!」


槍を持って威嚇するが、タイタンは一向に泊まるつもりがない。


「お、俺らでやれるのか?」


「…………やるっきゃねぇだろ」


剣を抜き、槍を向けたその時だった。


「よし、お疲れさん。歩いたらこんなもんか」


1人の男がタイタンの背中から降りた。まさか誰かがこの巨体を持つタイタンにおんぶされてたなんて門番は思いもしなかっただろう。


「お、お前、このタイタンは…………」


「ん?俺の使い魔だが」


「使い魔ぁ!?」


驚愕するのも無理はない。タイタンという種族は巨体で怪力だが、いかんせん知能がはるかに低い。まさに暴力装置と言ったところだ。


超高価な洗脳アイテムを使わなければテイムできないタイタンをこの男は従わせている。


「あ、あんたもしかして喧嘩屋…………?」


「ああ、そうだが?」


「どうやってタイタンをテイムしたんだ…………いや、アイテムだろうな」


勝手に納得してくれている門番達は彼にとって都合が良かった。


「こいつをなかにいれたいんだが、ダメか?絶対に暴れないからさ」


「ま、待ってくれ!今回は上と相談させてくれ、な?」


「そりゃそうか。早く終わらせてくれよ」


1人の門番が走って中へ入っていくのを門番と喧嘩屋、そしてタイタンが見送っていた。


「…………………………………………」


「シュコー…………シュコー…………」


「(何だこの気まずい空間は!早く戻ってきてクレェ!)」


残された3人はずっと無言のまま許可が下りるまで待っていた。


なお、許可が下りたのはこれから3時間後の事で残された門番は胃に穴が空きそうなほど辛い時間を過ごしたという。

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