俺のダンジョン 一階
「ここが例のダンジョンか…………」
俺たちのパーティは俺のダンジョンの前まで来た。色々とゴタゴタがあったがどれもくだらないものだったので省略させてもらう。
ここに来るまで大体二時間くらいかけてダンジョンまで来た。途中で狼の魔物に襲われたが特に何も問題なく撃退させた。その時は俺は何もしなかったので観察してたが、連携も取れてるいいチームだと俺は思った。
前衛のケームとレインが敵を食い止め、中衛のスミスが矢を放ってある程度打ち取って、後衛のアンとチョコが残りにトドメを刺していた。
これ、俺いらねぇんじゃねぇの?と思ったが金を稼ぐためだ。別方向から現れた複数のゴブリンをハピに命令して首を置いてもらった。
ハピが使ったのはウインドカッターという魔法で風の刃を放つ魔法だとか。ちなみにこの方法をやったら何故かみんなに引かれた。
解せぬ。
「いつも通り気をぬくんじゃないぞ。油断してたらトラップで死ぬ事になるからな」
「耳にタコができるくらい聞くね。用心に越したことはないけど」
ごめんなさい、トラップはまだ設置してないんで。後々死なない程度に心を殺すトラップを置けたらなーと思ってます。
さて、自らのダンジョンに突入する事にいくつかの心配事がある。
道中での問題はさほど無いが、あの骨が間違った教育で今日いきなりあの四人の幼女が現れるかもしれない。
一応、レジェンドレアの分体みたいなもののはずだけど中身が赤ちゃんじゃ戦力になりゃしない。
少なくとも出てきませんように…………!
「よし、全員突入するわよ!ゴッサムは一番後ろで警戒してて!」
「了解したッ!」
ゴッサムはマッスルポーズをとって返事をした。見えてる筋肉がテカってて眩しい。あと、このダンジョンの裏に魔族の転移魔法があるのは伝えないでおこーっと。
確か地下一階はスライムスポーンしか置いてなかった。スライムは体が液体な上に物理軽減のスキル持ちだからあまり殴り切りは効かない。でも、魔法に滅法弱いので軽い魔法でも通常の何十倍もダメージを受けるとか受けないとか。
まぁ、魔法をかましたら即死すると言う訳だ。一応、こっそり端末でテイマーの事を調べたから知識も入っている。
もし亜種のスライムて見つけたらテイムしてみるか。魔力がなくても懐けば後は代理人に頼んで刻印を刻み込んで言うこと聞かせるようにしさせる事もできるって。
ガチャから出た場合はもう既に刻印が刻まれてるらしい。四体の魔物をテイムしてる主はその刻印が見たことが無いけどね!
はぁ、言ってて虚しくなってきた。ダンジョンに入って数分しか経ってないけどスライムの一匹も見つかりはしない。
迷路だからまだ見つかってないだけだろうけど。
「っ!上!」
上だと?スライムが天井に張り付いてたのか。上から落ちてきて顔に張り付かれたら呼吸が出来なくなるからたまったもんじゃ無い。
さっき言ったようにスライムの体は核以外は液体なので掴めない、さらに言うと物理はともかく魔法で剥がそうとするのがベストだが、魔法で殺すと蒸発するので中の顔を傷つけない為の加減が物凄く難しいと思う。
でも、スライムはそんな知能を持ってない筈だ。そんな知識を誰かが入れ知恵しない限り…………
テロテロテロレン♪テロテロテロレン♪
危なっ!俺は魔法が使えないから引き剥がせないから避けるしか無い。降ってくるスライムはアンとチョコの魔法使いコンビが対処してる。
それより何だ!?懐にしまってる端末から俺が設定したメールの音が聞こえた!こんな時に何だよ!
差出人:デス
宛先人:北町健五
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どうですか?
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不肖ながら私、名誉挽回に昨日のうちに全ての魔物に知恵を与えました。魔物のレベルは低いですが厄介になってるでしょう?四人の教育はまだイマイチですがダンジョンは強化されたと思ってます。
これは
この時点で読むのをやめて端末を叩きつけたかったがそれは理性で止めた。
あの骨何してんだよ!何で余計な事をして重要な事をしないんだよ!職務怠慢かこのやろう!いや、分体は幼女だから女かもしれない。
どうでもいいわそんな事!
「走れ走れ走れ!思った以上に危ない!」
「うわぁ!また行き止まりだ!」
「喧嘩屋!その傘貸して!」
「魔法使えない俺に死ねというのか!」
いや、息を止めるのは結構得意だけど。
「我が筋肉でもスライムは無理だっ!」
「そう言いながらスライムに立ち向かおうとするなよ!あんた荷物運びだろうが!」
もう俺たちはヤバイとしか言いようがなかった。宝箱らしいのはチラッと見えたがスライムが絶え間なく降ってくるのであいつらはどうしても開けられない。
だが、頑張って走ったおかげで何とか地下一階と地下二階を繋ぐ階段にまでたどり着いた。そこまで来たらスライムは追ってくなくなった。
「はーっ、あのスライムは厄介だったな。少し休んでいこう」
「あんなの初めてだったわ。何アレ怖い」
ごめんなさいうちのバカが本当に。これじゃあ強い冒険者しかこないじゃ無いかくそっ!確かに強かったらダンジョンポイントががっぽり入るけどそれじゃあいかんのよ!何かよく分からないがいかんのよ!
「恐ろしい」
「ところで、珍しそうなスライムを確保しておいたぞっ!」
「「「ぎゃーっ!こっちよせんな!」」」
ゴッサムが金ピカのスライムを捕まえたらしい。トラウマになってるのか一部が怯えてる。チラッと見たけどあのスライムは亜種じゃ無いような気がする。
欲しーなー、あのスライム欲しーなー。
「ゴッサム、そのスライムくれない?」
「おっ、テイマーとして珍しいのが欲しいかっ!」
「まぁ、確かにそうだけどな。金ピカかっこいいじゃん?」
「そうだなっ!ほれっ!」
マッスルポーズを決めながら金ピカスライムを俺に投げてきた。ちょっと投げるのはこの子にとって辛いんじゃないか?
ぷるぷる
何を言いたいのか分からないがぷるぷる震えてる。よし、ハピに刻印を入れてもらうか。
「ハピ、この子に刻印を刻んでくれるか?」
「了解しました!」
金ピカスライムに手を突っ込んで核に触れて刻印を刻んだ…………らしい。だって金ピカだから本当に核に刻印を刻み込んでるのか分からない。でも、忠実すぎるハピだからちゃんと刻印を刻んでるんだろう。
ぷるぷる
腕の中でぷるぷる震えてるスライムはヒンヤリしていて気持ちいいな。はぁーっ、癒される〜
ぷるぷるりんりんぷるぷるりん
スライムってこんな震え方するのか?ぷるぷるりんりんってなんだよ。
「よし、休憩はとったな。次の階に行くぞ」
「え〜っ?もうちょっと休みたい〜!」
「無茶、でもチョコの言い分、正しい。ダンジョン、休む時間、無い」
「まぁ、それもそうか。てか、久しぶりに長く喋ったな」
「黙れ」
スミスが長く喋るのは珍しいのか。確かに自己紹介の時はすごく手短に終わらせたもんね。
次はウルフスポーンの階だったな。今度は狼系の魔物だから集団行動になる筈だ。一階があんなに鬼畜だったんだ。気をつけて行かないと。
テロテロテロレン♪テロテロテロレン♪
また端末からメールの着信音が聞こえた。今度は何なんだと端末を見てみた。
差出人:デス
宛先人:北町健五
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申し訳ないありません
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ウルフに関してはまだ教育中でその階にメンバーはいません。ゆっくり宝箱を探すのが得策だと思いま
「頭蓋骨叩き割ってやろうか!」
「いきなりどうした!?」
端末を思いっきり地面に叩きつけてしまった。不審がられたがあの骨のドヤ顔、骨なのでドヤ顔は出来ない筈なのにドヤ顔が思い浮かんでその顔をぶっ壊してやりたいと思った。
「何でも無い。ただ少しだけの殺意が芽生えただけだ」
「相当ストレスが溜まってるように見えるが………何かあったのか?」
「何でもない。早く終わらせてやろう」
「う、うん」
全部終わったら、あの骨殴る。俺は金ピカスライムを抱きながらそう心に誓った。
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