人間界の街に行ってみよう
テロレロレン♪テロレロレン♪
デイリーボーナスを獲得する音が最近の目覚ましになっている。早寝早起きは魔王の襲来に備えられるぜ。
目を覚ましたらメジェドさんと目が合う。これは避けられない運命なのか。いや、メジェドさんが天井に張り付いてるからどうやっても目が合うんだが。
そんな事は置いといて、今日は人間界の街に行こうかなと思っている。魔界の事情は魔王直々に聞けるけど、流石に人間界の事情は魔王から聞けることは出来ない。
なら、自分から人間界の街に行こうと決めた。テイマーとしてならハピを疑問無く連れて行く事が出来るからな。
ハイピクシーは価値が高いらしい(某魔王より)自身の強さも計り知れないから腕試し的なものも…………
「おはよーございまぁーす…………」
「おっ、早起きするか?」
「……………………ぐぅ」
ハピは二度寝コースに入った。ま、寝る子は育つって言うしね?
俺はどうしようか?ハピと一緒に行くから、起きるまでぼーっとしておくか?アルとの手合わせは、魔王が来るからやめといた方がいいと思うし。
ハピが起きるまで何もしないでおこ
「…………………………………………」
「……………………なんスかメジェドさん?」
メジェドさんが天井から降りてきて俺の眼の前でじっと見つめてくる。一体、何なんだろう?
「…………………………………………」
「近い近い近い」
10cmも近くまで近づいてじっと見つめてくるメジェドさんが怖い。俺が何をしたんだっての!メジェドさん離れてくださいお願いします!
ハピが起きるまで、メジェドさんはずっと俺の前でじっと見つめていた。その時間、約2時間。その間、なぜか俺は動けなかった。
「おはよーございまぁーす!」
「よし起きたなハイ飯にしよう!」
「何でそんなに慌てるんですか?」
「…………………………………………」
「ハピの目に見えない存在のプレッシャーが思ったより大きくてね…………」
ちょっと精神力が削がれた。気を取り直して朝飯にしようか。その時にハピに話を持ち掛けよう。
〜●〜●〜●〜●〜
「ほえぇー?ご主人様は街に行くと、ハピも行きますよ!」
うん、知ってた。ついでにメジェドさんも一緒に来るだろうから一緒に行こうや。
あ、アルはお留守番な?侵入者に対しての対応と、魔王の相手を頼むぞ。
「シュコー…………シュコー…………」
嫌そうな気がするが、誰かが残るならアルしかいない。メジェドさんを残したら逆に魔王が消されかねないからな。
「面倒なのが来る前に行くぞ」
「ハピの持ち物は首飾りとウインドロッドだけです!準備はいつでも万端です!」
「よろしい、メジェドさんは…………」
「…………………………………………」
「よし、行こうか」
「ちょっと待ってください!」
端末からテレポートを選んで外に出ようと思った矢先、ああ、テレポートの位置は魔王城に飛ぶ魔法陣と重ならないように調整はしておいた。
じゃなくて、テレポートしようとした矢先、ハピが俺を呼び止めた。
「失礼なのは承知です。ご主人様はその格好で外に出るのでしょうか?」
「あっ……………………」
よく考えたら俺の格好は完全にパジャマスタイルだ。向こうの世界にいた時も、ほとんどこの格好で逆に疑問に思わなかった。
しまったなぁ、俺は服のセンスとか分からないからなぁ?最悪、天夜叉の着物を着ればいいんだけども目立つしなぁ…………
あ、そうだ。いっその事天夜叉の着物を着てその上にローブみたいなので隠せば問題ない!
そうと決まれば早速ローブを購入してっと。
「ごめん、ちょっと着替えるから待ってて」
「ハピはいつでもお待ちしてます!」
「…………………………………………」
いや、メジェドさんはそんなに俺をじっと見ないでくれ。
さて、天夜叉の着物を着るのはすぐに終わった。なぜか知らないけど着物は馴染む。日本人だからかな?
そしてローブを上から着る。ローブはフード付きでその中にハピを隠せる仕様になっている、と俺は考えている。
「よし、ハピ?フードの中に…………いや、街に着くまでローブは要らないか。街に着いたらフードの中に入ってくれ」
「はーい!」
よし、テレポートするぞ。アル、留守を頼むな。
「シュコー…………シュコー…………」
テレポートをタップ!
テレポートをタップした瞬間、視界がブレて、いつの間にか外にいた。やっぱり森に囲まれてるなぁ。これだったら発見しづらいかも。
いや、勇者ボルトが来たんだからある程度の話題にはなる筈だ。もしかしたら恥を隠したいから黙ってるという事もあるけど…………
ま、ポイントは魔王との手合わせで何とかなるからぼちぼちやって行こう。
「お外だー!」
「そう言えば、ハピは外は初めてだったな」
「いえ、初めてじゃないんですけど…………」
ん?初めてじゃないだと?よく考えたらハピはガチャから出てきたんだったな。それなのに初めてじゃないんという事はこの世界のどこかで生活してた訳だ。
じゃあ、アルやハピ、メジェドさんはどこから来たんだ?
「あ、ちょっとそれは言いたくないんですよ……」
「今サラッと心を読んだのか!?」
「いえ滅相もないです!ただ、言いたい事は分かってたので…………」
嘘をつかないハピが秘密にする事ならあまり追及しない方がいいと思った。嘘をつかない種族が秘密にするなんてただ事じゃないのを隠してる事だ。
この世界では新参者で矮小な俺には聞く権利は無い。
「んじゃ、街に向かって歩いていくか。アテは無いけどね」
「…………………………………………」
「ぼっうけん!ぼっうけん」
ハピは楽しそうに俺の周りを飛んでいるが、メジェドさんはじっと俺を見ている。何か不満でもあるのだろうか?
アテが無いのは端末のアプリに地図が無いからだ。俺はこの辺りの地形はさっぱり分からん。でも、テレポートで帰れるからどうって事はない。
だが、街への移動手段は歩くしかない。歩こう、俺は元気だからな。
「よし、まずは北の方を目指してみるか」
「ご主人様のご自由にー!」
「…………………………………………」
メジェドさんは最後まで無言だった。
〜●〜●〜●〜●〜
彼が出発してから約1時間後。
「遊びに来たのだ!」
「シュコー…………シュコー…………」
しかし、最下層にはアルしかいない。何故なら健五達は既にいないからだ。
キョロキョロと魔王は辺りを見渡した。しかし、アルしかいない。隠し扉を開けて無断で健五の部屋に押し入った。しかし彼はいない。
「アルよ、ケンゴはどこへ行ったんだのぅ?」
「シュコー…………シュコー…………」
彼は答えない。どこに行ったのかも、何をしに行ったのかも答えない。
「ま、帰ってくるまで待つとするかのぅ?さ、手合わせをしてみるか?」
「シュコー…………シュコー…………」
アルはやる気だった。最近、魔王と手合わせする度に強くなっていると実感している。実際、彼自身は知らないがアルのレベルは既に30を突破している。
少なくとも、生半可な輩、魔王の幹部が束になってやっと勝てるくらいの強さになっている。それでも魔王や自分の主人には敵わないが。
「ささっ、帰ってくるまで居座るつもりだからのんびりじっとりやるかのぅ」
「シュ、コー…………」
早く帰ってきてほしいとアルは初めて思った。
〜●〜●〜●〜●〜
「おっ、見えてきたな」
しばらく歩いていたら街が見えてきた。そろそろローブを着る頃だな。いやー、着物で整備されてない道を歩くとちょっと怖いな。
肩にハピを乗せてるからこけられないしね。
「ハピ、ローブ着るからフードの中に入ってくれ」
「わーい!」
ハピはぽすっと喜んでフードの中に入った。メジェドさんは多分透明になってるから別に大丈夫でしょ。
「くれぐれも余計な時に透明化を解除するなよ。お前が透明かどうか俺には分からないからな」
「その時はハピが警告します!」
「おっ、頼もしいな」
「…………………………………………」
メジェドさんの視線がなんか痛い。気のせいか目も少し『心外な!』という感じになってる。
よし、メジェドさんの事は置いといて街の中に入ろう。約5mくらいの高さの壁が囲む街には何があるんだろ?
異世界初の街に北町健五、穏便に突入します!
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