守護者 メジェドさん
突然だけど、俺の後ろに立ってるメジェドさんは謎すぎるんだよ。ガチャから出た直後はみんな(ハピしかいなかったが)も見れたんだけど、その後すぐに俺しか見えなくなった。
ハピにはメジェドさんは見られないって頑なに言ってるけど、ハイピクシーは嘘をつかないって力説されたから本当だろう。
実際、エジプト神話の中でも不可視な存在だって事だけど、俺に見えるのはその為だろうか?
メジェド、エジプト神話「死者の書」に描かれる神様のひとりだ。
人間の目には見えない不可視の存在でありながら、目から放たれるビームや火を噴くことで敵を殲滅する破壊兵器級の存在。そして主食は咎人の心臓とされている。
「メジェド」とは「打ち倒す者」と言う意味で、主であるオシリス神の敵を排除する役目から名付けられたとされる。
○AV○Rまとめより。何で覚えてたんだろう?
「………………………………」
喋らないけど、どうしたらいいんだろうか?
ちなみに、メジェドさんのステータスはこうだ。
名前・メジェドさん(レベル1)
種族・メジェド
体力・54000000
魔力・9500000
攻撃力・53400000
守備力・65000000
素早さ・1950000
運・0.5
スキル・守護神、不可視、正義、超能力、攻撃魔法(レベル5)、防御魔法(レベル5)
こんな感じだったな。魔法がレベル5だって!それは凄く強いって事だよな!あと、レベルがないスキルがいくつかあった。これは俺の統一と同じようだ。
これの意味は何だろう?レベルがないという事は既にカンストしてるって事なのか?
だったら、俺のスキルはどうなってるんだろう?てか、メジェドさんのスキルの中で気になるのが守護神と正義だ。
守護神は守り神って事だろ?それは俺を守るって事だよな。俺のステータス的に護られる必要はあまり無いけどな。
メジェドさんは全く喋らない。何か喋ってほしいけどメジェドって喋らない種族なんだろうか?いや、神か?
まぁ、もう時間でいうと夜の6時ぐらいだから晩飯を取り出すか。
ハピは花の蜜、アルはいつものサンドウィッチ、メジェドさんは…………心臓?
いや、咎人の心臓なんてどこから取って来いってんだよ!そんなの簡単に調達できるかっての!
「メジェドさん、どうする?」
メジェドさんに聞いても返事は無い。ただ、アルみたいに立ってるだけだ。牛ハツでもいいかなぁ?とりあえず、牛ハツの購入画面をメジェドさんに見せてみた。
そうすると、メジェドさんは自分の綺麗な脚をあげてちょんちょんと端末の画面をつついた。
メジェドさんの中身が気になるな。どう見ても目のついたお布団を被ったような感じだからな。ちょいと引っ張ってみるか。
引っ張ってみたら案の定、バックステップで逃げられた。逃げたら取りたくなるな。
掴もうとしても掴もうとしてもバックステップで逃げられる。ちょっと、下だけでもいいから見せてくれよ!
よし、ちょっと掴めた!これでメジェドさんの下を見る為にめくって…………っ!
めくったけどすぐに元に戻してあげた。いや、さ?あの下、何か後ろで手を縛ってる上に全裸のお尻が見えたし、何か亀甲縛りだったし…………
見てはいけないものを見てしまった気分だ…………
あぁ、何度こんな空気を体験したんだろうなぁ……
「メジェドさんごめんなさい、俺が悪かった…………です?」
あの、メジェドさんの目が光ってるんですけど?超お怒りモードじゃないんでしょうか?その目から放たれるビームは全てを滅ぼすビームじゃないんでしょうか!?
そして……………………
ビーーーーーーームッ!
「その効果音はちょっとどうかと思いますがー!」
ビームの効果音はどう考えてもメジェドさんの口から出たような気がした。
その後、めっちゃメジェドさんからビームされながら部屋の中を2時間ほど追いかけられた。備品は壊れなかったのは、メジェドさんの最低限の気遣いだろう。
〜●〜●〜●〜●〜
今日の侵入者は勇者ボルトのみ。勇者ボルトもつまんなかったな。火炎放射でやられるなんて勇者として役に立つのか?せめて即席の障壁でも張れば何とでもなるのに。
そんな事を思いつつ、俺はゆっくりと風呂に浸かっていた。この風呂は1人用ではなく温泉みたいな感じで大きくしてある。女の子はってハーレムに欠かせなさそうな気がしたけど、俺個人が温泉タイプの風呂が好きだから温泉っぽくそうした。
ぶくぶくと顔の半分まで浸かって息を吐く。こういう時が、1人になれる時だな。
こぽこぽこぽ…………こぽこぽこぽ…………
ん?1つのこぽこぽこぽお鳴らしてるのは俺だけど、もう1つのは俺じゃない。ハピには絶対に入るなって言ったし、アルはそもそも風呂に入らない。
じゃあ誰だ?まさか魔王が沈んで待ってるのか!?
泡が出てる方から力ずくで引っ張り出す。
ざばんっ
「…………………………………………」
「……………………メジェドさん何やってんの?」
引っ張り出たのはメジェドさんだった。なぜメジェドさんが沈んでいたのか分からない。いや、守護者だからずっと俺の近くにいたんだろう。全く気がつかなかった。
てか、メジェドさんってその、何て言えばいいんだろう?目のついた布団(?)ごと風呂に入ってたのか。色々とおかしいでしょ!
布団(?)の目でじっとこっちを見てくる。いや、そんなにじっと見ないでくれよ。そもそもメジェドさんって男?女?
気になるけど、どうせ教えてくれないんだろうな。謎が深まっていくばかりだよ。
「よし、上がるか」
ざばんと俺が風呂から上がったらメジェドさんも一緒に上がった。何なんだろう、忠誠心から俺について来てるのか?一応、メジェドの主人はオシリス神だけどな。
この後のメジェドさんは俺が体を拭いている時も着替えている時もじっとこっちを見ていた。
まだポイントに余裕があるし、スポーンを重ね掛けしてみるか?2階のスポーンをウルフだけじゃなくてスライムスポーンも追加してみようかな?それとも、また新しい階層を作ってみようかな?
んー、迷うな。時間はたっぷりあるし、明日にじっくり考えてみるか。そうだ、どうせ明日も魔王が来るからその時にメジェドさんと戦わせてみよう。
メジェドさんのステータスってアルよりも高いから魔王はどんな反応をするんだろうな?
さて、早いけど寝るか。どうせ魔王が朝8時から襲来してくるんだから早めに寝てても損じゃない。ハピはもう疲れてすやすや寝てるし、アルは…………立ちっぱなしだし。
そうだらメジェドさんの寝床が無いぞ。
「メジェドさんはどこで寝るんだ?」
「…………………………………………」
黙ったままか。どうしたものか、石棺でも用意したらいいのか…………っ!
浮いてるだと!しかも、そのまま上に飛んで天井に張り付いた!
ちゃんと俺のベッドの真上に張り付くなんて、きちっと見張るつもりだな。仕事熱心な事で。
よし、俺も寝るか。夜中に浸入されてもアルが対処してくれるでしょ。
〜●〜●〜●〜●〜
これは北町健五が眠っている時の話である。この話は本人も知らない事だ。
テロロンテロ
「…………………………………………」
夜遅く、深夜2時になる前に机の上に置いてあった端末から浸入者が確認された音が少しだけ響いたが、すぐにその音は止んだ。
なぜ止んだか、メジェドさんが足で端末を使って音を止めたからだ。主人を起こさせないようにする為にワザと知らせずに止めたのだ。
「…………………………………………」
メジェドさんはそのままふわふわと浮遊しながら超能力で音を立てずにドアを開けた。ボス部屋につながる隠し扉を開け、ボス部屋に待機していたアルを見た。
「シュコー…………シュコー…………」
「…………………………………………」
何をしに行くつもりだ?
排除しに行くだけだ。
互いに無言だが、まるでそんな会話がされたようだった。
アルに背を向けてメジェドさんはふわふわと2階に上がっていった。その間、アルはずっと立ちっぱなしだった。
少し時間が経ち、浸入者は早々と1階を突破、そして2階に突入した直後の事だ。
「お前達、2階だが気を緩めるな。報告だと勇者ボルトは余裕だと言っていたがボス部屋に入る前にやられた。何か言う事はあるか?」
彼はとある国の密偵部隊第11部隊長だ。他に3人の密偵部隊がいるが名前は言う必要は無い。なぜなら今日で彼らの命日になるからだ。
隊長の言葉に何も返事をしない為、言う事なし。さっさと進めようとしていた。
だが、彼らは知らない。不可視の守護神がもう既にそこにいる事を。
突然だが、本当に突然だが密偵部隊の1人が誰にも気づかれずに消えた。どこに消えたかは本人も知らない。実は消えたのは心臓以外の身体だった事も今この場にいる者は知らない。そして、残った心臓もすぐに消えた。まるで捕食されたように跡形も無く。
気づかないまま2人、3人と不可視の守護神の不可視の光線によって部隊長を残して消えていった。
「……………………っ!消えた?」
ようやく気付いた部隊長だが、目の前に、数cm先に不可視の存在と目が合っている事に気づいていない。
もう遅かった。部隊長の最後の言葉を発した時、部隊長も心臓を残して消えた。
「…………………………………………」
残った部隊長の心臓は不可視の守護神の眼の前で浮いている。メジェドさんはその心臓をじっと見つめていたが、やがて布団(?)の下に潜り込ませ捕食した。
浮くのが面倒になったのか、てくてくと歩いて自分の部屋、もとい健五の部屋に戻った。
メジェドさんの主人はすやすやと安らかに眠っている。その顔を見るだけでメジェドさんは安らぐ…………らしい。
そして、主人が寝ているベッドの天井に張り付き守護する為にずっとメジェドさんは起きていてるのだ。
その事は主人の健五は知らない。知らなくてよかったのだ。少なくとも、メジェドさんにとっては。
夜は明ける。誰が死のうと誰がどうなろうと世界は変わらない。さあ、彼の物語を続けよう。
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