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第四十九話

 爆発とおもしき衝撃波が押し寄せてサクヤと《創始者》を呑み込むが、事前に指示させれて地に伏せていたサクヤにはそれほどの影響はない。男は魔法で作った何かで壁を形成しているが、それでもずるずると僅かに後方へ滑っている。サクヤも立っていたら最悪部屋の外まで飛ばされていたところだった。

 爆発が起こった現場は男の立っていた場所よりも奥で、装置があった辺りだ。そこには今煙が立ち込めていてどうなっているのかは見えない。

 サクヤと《創始者》はその場に固まり煙が晴れるのを待った。サクヤの体感では数十秒程度だったが、爆音の大きさを比較すればすぐだった方だろう。

 姿を見せた爆発現場を視認し、サクヤはこれまで以上の驚きを見せた。しかし、彼よりも愕然としていたのは意外にも《創始者》の方だった。なぜなら、サクヤたち四人が破壊しようとしていた装置が、破壊された状態でそこにあったのだから。

「なぜ、装置を破壊できた。ちゃんと結界で守られていたはずだ」

「魔法を作り出した本人がその弱点に気がついてないのは正直驚いたわ。そのおかげで壊せたんだけどね」

 マリナが代表して強気に言った。

 どうやって壊したのかはサクヤも分からない。というより、いつの間に移動していたのかさえ分からなかった。

「魔法は同時に一つしか使用できない。それはあなたが決めたことでょう? 同時に二つも使えば、この世界最高身分の富豪(ウエルス)と言えど体力の消耗に体が持たないから」

「……それがどうした」

「結界も魔法の一種。当然その規定に適応される。そしてあなたはサクヤに向けて魔法を放とうとした」

「まさか……」

「そうよ。別の魔法を使うときには一度も前の魔法は消される。だから結界が消えた僅かな時間でメグミさんとレイヤさんに最後の魔法を使ってもらって壊したのよ」

 サクヤの知らない世界で進む話においてけぼりにされているサクヤは起き上がることなくその場で呆然と聞いていた。

 魔法が同時に一つしか使用できない? 結界?

 よく分からないがいつからマリナたちはそんなことを知っていたのだろう。おかげで装置は破壊できたみたいだし、サクヤの不利な状態は逆転された。

 しかし、自分の知らないところで話が展開していく疎外感をつい感じてしまう。状況が状況で、サクヤは頭に血が上りかけていたからしかたないが早く作戦を説明してくれてればここまで感情的になったり別の方法をとっていたはずだ。

 場違いにもサクヤが拗ねている間にも話は進む。

「そんなことをして、装置が無ければ貴様らは元の世界に帰れなくなるんだぞ」

「……構わないわ」

 さすがにこのやりとりにはサクヤも思わず起き上がった。

 男の言葉はハッタリかとも考えたが、サクヤの見た夢は魔法だというようなことをマリナが言っていた気がする。なら、この世界に来ることもまた魔法によるものだということになる。

 だとしたら本当に帰れなくなった訳だが、サクヤがもう一つ驚いたのはマリナの答えの早さだ。

 サクヤもほとぼりが冷めた後でもしばらくはこの世界に滞在し、いずれは元の世界に帰るつもりでいた。だって、そここそがサクヤたちのいるべき場所で、帰るべき場所だから。

 ――マリナはもう、覚悟は決まってるってことか。

 元の世界の失ったものの数と同じくらい、この世界のたった数ヶ月で得たものもある。そう考えるのとこの世界での生活も悪くない気はする。

「元の世界に戻れないことより、あなたが魔法を使い放題でまた街を荒らされる方がよっぽど辛いわ」

 そうだ。マリナの言う通り、男の好きにさせておくことはできない。レイヤの村を焼き払った件、メグを利用して街を破滅へと導こうとした件。どれをとっても許されていいはずがないことだか、何よりメグを散々コケ使ってくれたお礼もしていない。

 とにかくこれで《創始者》は魔法が使えなくなったはずだ。だから今は自分のことより、男を倒すことの方を優先する。

「そうだ。そろそろ決着をつけないとな」

 歯ぎしりをして悔しさを浮かべる《創始者》の背後でサクヤは敢えて聞こえる声の大きさで言った。

「魔法が使えなくなったぐらいで勝てる思うなよ」

 どう捉えても負け惜しみのような言葉にしか聞こえないが、サクヤもそのことは充分に承知している。

 でも、明らかに態度の変わった男を見ても状況はサクヤたちの有利な方へと傾いている。剣だけで四対一なら負ける不安は皆無だ。

 今度こそ、勝たなくてはいけない。メグを利用してくれた恨みは晴らす。

 ――だからそのために。

「俺は、《革命者(アプセッター)》になってやるさ!」

 サクヤは叫ぶと剣を中段に構え、

我は闇に宿る光なりアイ・アム・ア・ディザイアー

 今度こそ祝詞を唱えるとオレンジ色のオーラが身を纏い、黒剣も薄く水色に輝きを放ち始めた。

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