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愛しい蛇足

「ところで……みさき?」

「ん? なあに?」

「えっと、その~、話を聞いたところによるとさ」

「うん?」

「七夕のときに書いてたあの短冊って……」


 彼は少し戸惑いを浮かべながら、そんなことを聞いてきた。

 言わんとしていることはとてもわかる。だからこそ、私は満面の笑みでもって答える。


「うん。よろしくお願いね、サンタさん」

「マジか……」


 うなだれる彼に、そんな難しいことを書いた覚えはないけどな……と思う。


「あれだな、お義母さんに似て、腹黒」

「うふふ。あ、ちょっと笹かま買ってきて」

「え?」

「笹かま買ってきて」

「いや……」

「さ・さ・か・ま。買ってきて」

「行ってきます!」


 大急ぎで準備をして出て行った彼を笑顔で見送ると、ソファに座り、さっき話した色々を思い返す。

 あの七夕の話は、ああいったこともあって七夕だけじゃなくクリスマスにも思い出す、自分の中で一番古い記憶のひとつだ。

 もちろん、笹かまの部分も含めて。


 彼はおそらく、わざと道化を演じたんだと思う。

 幸せな記憶を再現するつもりなのだ。


 ……いや、素なのかも知れないけれど。


 どちらにせよ、彼にはそういうところがあって、私は彼のそういうところにいつも“かなわないなあ”と思わされている。


 そんな彼に、あの日以来ずっと欲しくて、けれど短冊にも、サンタさんへの手紙にも書けなかったものを貰った。


「ありがとう」


 そう呟きながら、お腹をやさしく撫でながら。次の七夕にはサンタさんへ何をお願いしようかな、とそう思った。

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