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華と剣―fencer and assassin―  作者: 鋼玉
第四章 望郷追想
39/50

三十九、北天帰郷

更新遅れてすみません



白銀が支配する季節。

かつての故郷で彼女はそこで何を視るか。

嵐の前の静寂に何を得るか。



――榎州。

八州国東部の大部分を占めるその州はかつての謀反の折、洟州と寧州とともに粛清の嵐が吹き荒れた。洟州の様に優秀な官吏に恵まれず、悪く言えば田舎であるこの州はその傷跡を完全に癒すことはできていなかった。行政が弱体化している中、寧州ほどの荒廃が見られないのは……この州が豊かな自然に恵まれていることが理由であろう。州の大部分を良質な木材となる森に覆われて街は森を貫く街道によって繋がれている。当然それを元に物流があるのだが……問題は、その視界の悪さを利用した盗賊が多いという点である。


そして榎州の北部を冬が深まる中、雪の降りゆく暗い森の道を二台の馬車が行く。

刺すような冷気が馬車はさらに北の柏州を目指して南部からの荷を運んでいる道中にあった。その時、馬車の行く手に何者かが現れた。

「止まれ」

足を止めた馬車に向かって矢をつがえつつ男の一人が告げ、同時に後から現れた三人の男たちがそれぞれの手に持った得物を向ける。事態を把握した御者は仕方なく手綱を操り馬を止め、雪避けのために被った面布越しに首を一巡させて舌打ちする。

『囲まれた、か』

数からして十人ほどか、森特有の暗さと視界の悪さを利用されたようである。

ここが一番の難所だと思ってはいたが、実に手慣れた様子の連中に当たるとは運が悪い。

「どうしたんだ? 」

「決してそこを動かないでください」

馬車の荷台からかかる不安げな声に振り向くことなく御者は雇い主に警戒を促す。後ろの馬車も止まっていることを考えると事態には気が付いているようだ。しかしここで動揺を見せては相手の思う壺であるので、目立たぬように深呼吸した後に彼は口を開いた。

「どうもこんにちは。良い天気ですね、というと白々しいですが……しがない商人である私達に何のご用でしょう? 」

世間話をするかの様な穏やかな口調の御者に、男たちは爆笑する。

「何のご用でしょうだと。馬鹿じゃねえの? 」

「俺らが人畜無害な旅人にでも見えるか」

「とにかく荷と有り金置いていけば命だけは助けてやんよ」

包囲の輪を狭めつつ男たちはできるだけ友好的な態度を保とうするとする御者を嘲る。

こちらは複数、加えてこのような盗賊業への慣れが彼らに余裕と同時に隙を生んでいたのは否定のしようがない。御者は彼らの様子を沈黙したまま冷静に観察する。

「……見逃してはもらえませんか」

盗賊たちの様子に苛立ちを感じたのか御者は布の間から覗く釣り目がちの目の端を震わせ拳を軋むほどに握り締める。だが、荒事は避けたいと心の中で思い、最後に懇願した。

「見逃すと思うか? 」

「いえ、ですが穏便に……」

次の瞬間風を切る音がし御者の脇に矢が突き刺さる。相手はこれ以上待ってくれないらしい、御者は唐突のことに目を見開き息をのんだ。

「次は無い」

十数えるうちに答えを出せと頭目らしき男は宣告し、己が手に持った弓の照準を御者の頭に定めた。


「どうします? 」

盗賊の声が十を数える間、御者はほとんど声に出さず主に問う。

その様子にはまだ余裕が見え隠れして雇い主への問いもごくごく軽い様子だ。ただその声や身のこなしには余裕はあっても油断は無い。

「仕方ない、できるかね? 」

馬車の薄闇の中から溜息と押し殺した返答が聞こえ、御者に何らかの許可を出した。

「問題ありません。俺も、相棒も」

その返答に小さく頷き御者は顔を覆う布の下でにやりと笑った。


三、二、一。

心の中で数を数え終わると同時に御者に向かって矢が数本飛来する。

到底避けられるものでは無かったにもかかわらずそれは彼に触れるか触れぬかの内に全て地面に落とされた。盗賊はそのあまりに信じられない光景に目を見張り、対応しようとしたが……もう遅い。

彼らの視界から御者の姿はかき消え、頭目の右手側の男がうめいて倒れる。

「何が……」

刹那、嫌な予感がし、彼は弓を盾に後ろに跳んだ。

彼がいたところに黒い影が降り立って銀が一閃される。そしてさらに逃れる彼を追跡する様に振るわれた一閃は一瞬にして弓を真っ二つにした。影の動きは止まらない。流れるように無駄のない目にもとまらぬその動きはさらに彼を追い詰める。

しかし男も一方的にやられることをよしとしない。盗賊というものは小説ではやられ役と相場が決まっているのだが、彼にも生活が人生がある。早々やられてたまるわけがない。

剣花が薄闇に散る。

影の正体は予想通り先ほどの御者。御者でもあるのだろうがその本分は護衛なのだろう。

速く重い斬撃に歯を食いしばりつつ、盗賊の男は何とか抜きざまに振るった短剣で斬撃を防いでいた。荒事に身を置く者の矜持と今相対している相手への恐怖が脳裏で爆ぜる。

「化け物が」

何とか剣の流れを読みながら短剣を突き出したがすでに影はそこにいなかった。

御者の男は深追いをせず、馬車に近づいていこうとするものから沈めていっていた。どうやら護衛の本分を優先するらしい。まさにその動きは人外としか言いようのない、同時に見惚れてしまうほど洗練されたものであった。

「だが……」

確かに御者の男の腕は人としての限界に達している。だがそれだけだ。この狭い道……十対一で二台の馬車は守りきれないだろう。森という土地条件にはこちらが精通している。

そう思いつつ傍らでのびている仲間の手から槍を引き剥がしつつ、後方の馬車のほうへ駆ける。

次の瞬間。

後方の馬車に彼に先行して接近していた仲間たちを何かが切り裂く。御者の男ではない、距離的に不可能であるし、ほんの一瞬見えた影は明らかに剣ではなかった。

そう思った瞬間彼の耳が風を裂く音を捉え、その方向に向かって槍を旋回させる。

縄票(じょうひょう)か」

その飛来物の正体をしかと捉えて彼は呟く。

どうやら……考えれば当然であるが護衛は一人で無かったらしい。

頬から流れた血が彼の口に届く前に馬車の影から何者かが姿を現した。

体格は御者より小柄で匕首よりやや小ぶりな黒い刃を先端に取り付けた紐が死角を縫うように踊り、馬車に近づく二人を牽制しつつもう一方の手に持った長剣が彼に向かって突き出された。

御者より速い。

槍でそれを何とか弾きつつ、槍を旋回させ追い来るように飛来した縄票を弾く。

剣筋からして御者とかなり似ているもののこちらは斬撃の重さはそれほどではない。

ただ速さと変則的な動きは厄介であり、そして黒と銀の刃は見えにくい黒に集中すれば銀が迫り来て、銀を防げば死角から黒が迫り彼を惑わす。

何とか槍で間合いを取りつつ倒すしかない。そう思って時折迫りくる縄票を巧みにかわしつつ地を蹴ると同時に再び剣が繰り出された。

咄嗟に槍の柄で受けた瞬間、影と目があった。

「女?! 」

服装は外套のせいでよくは分からないが面布の下から見えた顔は薄く化粧をした女のもの。

「悪いか? 」

女は右手に持った剣を引き、代わりに縄票を投げ放ちつつ後ろへ大きく跳び退る。その背後で彼女と交戦していた三人が次々に崩れ落ちた。

今、刃が触れていなかったはずであるのに崩れ落ちた仲間に気を取られ、視線を戻した瞬間彼女の姿を見失っていた。相手の技量を考えれば致命的な隙であるのは明白。


あたりを見回すが彼の仲間をほとんど片づけた御者以外には人影は無い。

初めから存在しなかったように錯覚するが……そんなはずは無い、目の前に倒れている仲間は一体何なのだ。

無意識のうちに一歩踏み出そうとした瞬間、彼は力が抜けたように地面に倒れこんだ。

何が起こったのかわからなかった、ただ分かっているのは足どころか指先一つ動かせない状況ということ。己の置かれた状況を完全に悟らぬうちに彼の意識に急激に靄がかかりはじめた。


『よい夢を』

こんな雪の降っている状況で寝たら死ぬ、そんな間抜けなことを考えていた彼の意識が完全に闇に落ちる前に声を聞いた気がした。


「全く……」

女が崩れ落ちた男の背後でため息を吐きつつ彼の首筋のあった高さに合わせて振りあげていた手刀を下ろし、面布をはぎ取って素顔をさらす。特徴的な大きな眼がぱちぱちと数度瞬きし、足元で倒れている男の方を向いた。

「貴様の敗北は最初の一撃で決定していたんだ。薬が回るのが遅かったことは予想外だったけど」

女、黎は相手に意識がないことを知っておりつつも淡々と告げる。そう、彼女は縄票に己が調合した麻痺毒を塗っていた。それは手に入りやすい薬草から調合でき、致死性と即効性には欠けるがほんの少し身体に入れば確実に効くと言ったものであり、さらに激しく身体を動かせばその毒の周りは加速する。祷州で使った毒は無理だが、彼女は大概の毒を調合できる。まあ、不本意ながら夜哭党にいた頃の賜物である。

「薬の回りが遅かったのはやはり気温のせいか……検討する気は無いが」

彼女は一人ごちつつ白い息を吐き、毒をぬった縄票の黒い刃を倒れた男の服で毒を拭きとり再び袖の中に仕舞った。

動きやすいように高い位置で長い髪の毛を一本に括っている彼女の首筋は正直寒そうであるが特にそう言った様子を見せない。彼女の出身はここより北の柏州、故に寒さには昔からかなり耐性があったしもこもこと着こんでしまっては彼女の戦い方に多いに支障が出てしまう。

「さて、あちらの方は……当然の如く終わっているか」

視線の先には地に伏す残りの盗賊の間に立って息をつく御者の姿があった。

毒が普段通り効いていればこちらが早かったのに、と眉を顰めつつ彼女はそちらに向かって歩を進める。

「殺したか? 」

「いや、無傷じゃないもののきっちり全員生きているはずだ。剣は鈍器でもあるしな」

そっちは? と問う相方に対して黎は殺しても仕方ないだろうと返した。

「相変わらずあり得ない腕だ。毒の効きより速いとはな、舜」

呆れと、どこか誇らしさの混ざる黎の言葉に舜水は面布を僅かにずらして愉しげに笑う。白い息がその呼吸に合わせて白い歯の間から漏れた。

「ま、戒瑜(かいゆ)の盗賊団に比べたら赤子の手をひねる様なもんだ」

「戒瑜、か。あの男どうしているだろうな? 遼明を出て結構たったな……」

「あいつならなんとかやっているだろう。運だけはいいみたいだし」

互いに労をねぎらうように顔の位置に手を上げて打ち合わせつつそんな言葉を交わす。彼らにとってこの勝利はあって当然のもので特に大喜びする様子は無い。本来二人は様々な過程を経て恋人と言ってよい関係になっているはずであるがそんな様子は微塵も見せず、互いに頼りになる相棒と言った様子である。

その理由は勿論……


「終わったか? 」

その時馬車の中から声がかかり、二人の表情が急に真顔に戻り声のした方に向き直った。二人の眼は倒れ伏す盗賊たちにおっかなびっくりと言った視線を向けつつ二人の元に向かう数人の男女をとらえていた。

「見てのとおりです」

「ご安心を」

二人は口々にそう言って手に持った刃を収めて雇い主達に向かって会釈した。

そう、恋人であると言った様子を欠片も見せない理由はただ一つ。現在この商人達に護衛として雇われているからである。さすがに二人ともそのような道に関しては玄人。彼らの前でいちゃつくなどという馬鹿な真似はしない。ただ、互いが傍にいるだけで十分なのだ。

「してこの不届き者どもいかがいたしましょう? このまま放置しておいては凍死すること確実ですが」

舜水が会釈したまま問う。確かに特に黎のやった相手は一日は動けなくなるらしい。この気温の中そんな状態で放置したら凍死しかねない。

「役人に突き出すという手もあります」

その言葉に商人達は顔を見合せてどうするか誰となしに問う。役人に突き出すにしても十人の人間を運ぶのは至難の業であり、盗賊といえど殺すのも寝覚めが悪い。

「放置、しかないかな……」

結局状況から見て紡げる回答なぞ大した種類が無かった。その解答に二人は顔を見合わせる。二人にもそれ以外の妙案は特になかった。





「運よく生き残ってまっとうに生きることを祈っているよ」

「舜がやった分は数刻すれば目が覚めるだろうから大丈夫だと思うが」

舜水と黎は口々に言って薪の火を起こす。さすがに何もなしで放置は良心が痛んだのでとりあえず一か所に集めて、それを囲むように焚き火をしてやることにした。もちろん適当な木の端切れを彼らの頭の首にかけ『この者ら愚かな盗賊也』と書くことは忘れてはいない。

可能性は低いが他の馬車が通りかかったら役所に突き出すのもまあありな話だ。

処理を終え、馬車に戻ろうとした二人に商人の代表である中年の男が声をかける。

「本当に助かるよ、君たちのおかげで難所をやすやすと抜けることができる」

柔和なその顔は防寒用の毛皮に包まれそこだけ実に暖かいように見える。その言葉に二人は顔を見合せて、礼には及びませんよと答える。

「こちらは貴方に雇っていただいている立場ですから」

「こちらこそ感謝しております、馬車にのせていただいて」

そう、二人と商人達はこんな契約を交わしていた。

柏州までの間、隊商に加えて貰う代わりに護衛の任を果たすこと。

王宮で色々やらかした二人は夜が明ける前には宿を引き払い、遼明の東の街で武器を揃えた後に路銀を稼ぐために賃仕事をしていた。そして一月ほどたった時に出会ったのが商人達である。初めにどちらが出会ったのかは今になってはよく分からないが二人と彼らは妙に意気投合し二人が柏州に向かうことを告げた時、彼等は自分達についてくることを提案した。

それは二人にとっては馬車という足を得るという幸運であったし、商人達にとっては腕の良い護衛を足を貸す代わりに安く雇えるまたとない機会だった。

もちろん彼等は舜水と黎が何者か知る由もなかったし、彼女らも余計な摩擦を避けるためにそのことに対しては微塵も話題にしなかった。

純粋なる利害の一致。

そのような経緯で榎州回りの北への旅が始まったのであった。

その旅もはや七日。

彼等は雇い主達と良好な関係を保ちつつ、ところどころの街で交易を行い、時折現れる盗賊を追い払う旅はそろそろ終わりに近づいていた。





二日後。

「今までありがとう。本当に助かった」

「こちらこそ本当にお世話になりました」

柏州との州境を超えた南部の大きな街、柏州の北部で産出され王都に向けて出荷される玉が集められる鷲楼(しゅうろう)の街の午門の外に二台の馬車と、その近くに立つ三つの人影があった。

この季節にしては珍しく抜けるような、いやどこか寒々しさを感じさせる青空の下、朝靄の中で二つの手の間を硬い音を立てて小さな麻袋が受け渡された。

商人の言葉とともにその重さを確かに感じつつ舜水は快活な笑みをその顔に浮かべ、黎は静かに頭を下げた。

「では、ここで」

それ以上言葉を交わす必要は無いとばかりに二人は同時に会釈し踵を返した。

「君たちの行き先に幸あらんことを」

商人もそんな二人の背中にそんな言葉をかけた後、踵を返し馬車に戻り、やがて馬車は柏州の北部へ向かっての道を進みだした。





柏州南端の村、南峰(なんほう)村。

北部に小さな山を有するその村は山の近くだけあって柏州南部にしては随分と寒い気候を有する村である。しかし夏は割りかし過ごしやすく鷲楼からは一日もかからない距離にあるためかなり人の流れが多い村であった。ただ特に見るべきものがなく、人の流れも素通りして行ってしまうため栄えるということとは無縁な村である。二年前までは大きな孤児院があったのだが今は謎の火災で半数の子供が死に、持ち主であった女が謀反の罪で処刑されたため今はそれらの墓が建てられているのみである。

そんな過去の悲劇を思わせる場所、村人のほとんどは処刑された元の主、雪娥と言う女との関係を疑われることを恐れ供養どころか近づくことさえ拒否していた。

しかし、夕暮れにその場所に一人の青年が姿を現した。

几帳面にまとめ上げた黒髪、温厚さが滲み出ているものの日頃の苦労を深々と顔に刻んだ彼は淀みない足取りで雪に埋もれつつあるその盛り土の群れに向かって歩いていく。

彼は孤児院の生き残り。

今年独立したばかりだったが、かつての同胞への供養は忘れずに行っていた。

その日も誰に会うことなく、せめてもの供養に墓に手を合わせて帰る予定だった。


しかしその日は盛り土の中に二つの影を見た。

「舜兄か? 最近来ていなかったし」

こちらに背を向け墓に手を合わせる二人、そのうち一人は七年前に孤児院を飛び出し剣客となった兄貴分であることを確認する。

おそらく背格好から見て確実だろう、もう一人は女のようだが恋人だろうか。

「もう二十半ばだし無理は無いか」

頬が緩むのを感じつつ彼は二人に声をかけようと歩み寄ろうとした瞬間、ほぼ同時に男の方が振り返った。



(けい)じゃないか。久しぶり」

瞳に宿していた警戒の色を薄れさせつつ男、舜水は突然振り返られて驚いたように眼を見開く青年に向かって快活に笑いつつ手を上げる。

そして気配には気づいているようであるが振り返ろうとしない傍らの女、黎の背を軽くたたき、ほら、と振り向くように促した。

「……」

「何を恐れているんだ? 桂も喜ぶさ」

それでも沈黙し悩む彼女に舜水は心配するな、と後押しする。

この状態で拒んでもしょうがないのは明白で、黎はあきらめたように口を開きつつ振り向いた。


「……ひ、久しぶりね。白桂(はっけい) 」

パタパタと手を振りつつ何とか微笑もうとするがうまくはいかなかった。


青年、白桂は振ろうとした手を硬直させその女の顔を凝視する。

己を知っているようであるが誰だろう、という感情が次第にそんなはずは無いという驚きの色に染まる。

そう、彼の中で黎はこう結論づけられているのだ。



二年前に死んだ、と。

舜水も数か月前までそうであったので無理は無い。

彼自身もそれを望まぬはずがなかった、だがいま目の前にいる彼女の存在を信じることができなかった。


故に彼の唇は僅かに震え、そして吐いた息は声帯によってこのような音に変換された。


「幽霊? 」


二人はその言葉に一瞬硬直した。

予想はできていたのだがあまりにそのままな答え。

しかし間髪入れず耐えきれず舜水は吹き出し、口を押さえて笑いだしす。

そんな彼の頭を軽く小突き、黎は不機嫌そうに眉をしかめつつも苦笑した。


長い文章をお読みいただきありがとうございました。多忙のため更新が遅れがちであることを申し訳なく思います。さて、今回の話は榎州→柏州への旅、そして二人は故郷へ帰ります。時期的に前よりひと月以上たっていることになります。これから再び物語は進んでいくことになるかと思います……なるべく早く更新したいものです。ご意見ご感想お待ちしています。


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