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優人の行動

あの遊園地に行ってから3週間は立つ。



美鈴は優里と話している。いつもは世間話とか洋服の話が多かったが今日は違った。



「最近優人の行動がおかしいと思うのよ」



「優人君の?」



美鈴はそうかなと一瞬考えた。



「ほら、この前までは一緒に帰っていたけど最近先に一人で帰っちゃうでしょ?」


そう言えばそうだ。優人は1週間前くらいから先に帰ってしまう事が多い。



「家でやりたいことがあるとか?」



美鈴は思った事を言った。


「そう思って昨日優人の後を着けたけど、駅の方に向かったのよ」



優里はそう言って一瞬考えるように黙った。



「美鈴ちゃん」



「な、何?」



話の流れ的に嫌な予感がする。優人の事になると行動が360度変わるのは何故だろうか。


「今日、優人の後、着けましょう」


案の定、美鈴は優里に優人尾行作戦に巻き込まれてしまうのだった。





放課後。




結局成一も優里に巻き込まれて優人の後を着ける事になった。





優人は学校を出てすぐ、駅の方に向かった。



「昨日はこれ以上後追えなかったのよ」



「え、何で?」



成一が優里に聞いた。



「現金持ってなかったから」


普段弁当だから現金は持ち歩いて居なかったのだろう。


優人が切符を購入したため、


3人も直ぐに切符を購入して優人の後を追った。



駅のホームに入ると、ちょうど電車が来た。



優人はその電車に乗り、少し距離を取って、3人も乗った。



(何か優人、そわそわしてるよな)



成一は優人の様子を見て思った。



何処か落ち着きが無いような気がする。




優人は隣駅で降りた。



3人は優人に気付かれないよう、後を着けている。



優人が向かった先はデパートだった。



このデパートは10階まで有る。結構広いデパートだ。



優里は優人がここ最近誰かと会ってるのでは無いかと疑っていた。



前を歩く優人をじっとみる優里の様子はまるで夫の浮気相手を探す妻のようだ。


成一は苦笑しつつ、優人の後を着けた。



優人はデパートに入りエスカレーターで3階まで乗って、女性物の服が売っている店に入った。



「え?」



この声を出したのは成一だ。


「何で?」



思わずそう言ったのは美鈴だ。



「……」



優里は目を見開いている。信じられないものでも見ているような感じだ。



優人は女性店員と話をしている。かなり緊張している様子だ。言葉を噛んでいる気がする。優人は勧められるまま。何やら女性ものの服を購入した。



優里は疑いをさらに強めた表情で優人を見る。



だが優人は誰に会うでもなく、そのまま帰途についた。


結局今日は優里と別れて、成一と美鈴も帰り道に着いた。





「なぁ、何で優人、女物の服を買ってたんだ?」



「何でだろう?」



美鈴は首を傾げた。その仕草も可愛らしい。

成一は思わず顔を赤くした。成一は慌てて違う違うと首を振った。



(何考えてんだ!今は優人の事だろ!)



幸いその動きは、隣にいる美鈴に気付かれていない。


成一は何とか心を立て直した。



「明日聞いてみるか」



「そうだね、明日聞いてみよう」



答えは明日優人に聞こうと決めて、成一と美鈴は家に帰った。



次の日の朝。




「昨日、何でデパートに居たの?」



教室で優里が優人を問い詰めている。



「な、何で知ってるんだよ?」



優人は慌てた様子だ。



「良いから答えなさい」



口調は落ち着いているが迫力が凄い。



「ちょ、ちょっと用事があったんだよ」



「用事って?」



「あ!、用事と言えばこの後大事な用事が有るんだった!早退しなきゃ!」



とわざとらしく言って優人は教室から走って出た。



「ちょっと!」



「いや、ちょっと待てよ!」


成一は優人の後を追いかけた。



廊下を少し走った所で優人を捕まえた。



「な、何だよ」



「何でそんなに慌ててるんだ?」



「別に慌ててなんか…」



「絶対慌ててるだろ、わざわざ早退までするんだから」



優人の事だから冗談ではなく、本当に早退しそうだ。


「誰にも言うなよ?」



念押すように言ってきた。


「あぁ、言わないからオレに言ってみろよ」



「…実は優里がもうすぐ誕生日何だよ」



「誕生日?もうすぐって…」


「十月一日」



今日は九月二十九日だから三日後だ。



「明明後日かよ」



「あぁ優里には言わないで欲しいんだけど昨日デパートに行ったのは誕生日プレゼントを買いに行ったんだよ」



「そうだったのか」



昨日電車の中でそわそわしていたのはそう言う事かと納得した。



「じゃあ、そう言う事で」



と言い帰ろうとした。



「いやいや…教室戻ろうぜ」


「教室に戻ったらまた優里に問い詰められるだろ?」



「取り合えず誤魔化しておけよ」



優人は結局、教室に戻るのだった。



一方。



成一と優人の話を知らない優里は明らかに勘違いをしている事になる。



優里は悪い方に考えている。



(優人、私の事嫌いになったのかしら。それとも好きな人でも…)



優里は切ない気持ちになってしまっていた。



三日後の事を知らずに。








この日の帰り道。



「優人君、何だって?」



美鈴が成一に聞いてきた。


「え?」



「朝、優人君に聞いてたでしょ?昨日デパートに居た理由」



成一はその事かと思いつつも、言わないと言った手前言う訳にはいかないと思った。



「悪い、言わないでくれって言われたんだ」



「そうなんだ、優里ちゃん、元気なくなっているように見えるから、…悪い話しじゃないよね?」



美鈴は不安そうにしている。優里の事を心配しているみたいだ。



美鈴まで元気が無くなっている。


「実はな、花山さん、誕生日らしいぜ」


成一は思わず言ってしまった。


「そうだったの?」



美鈴は意外そうな顔をしている。


成一は優人から聞いた事を話した。


最近一人で帰っていた理由や昨日デパートに行った訳を話した。



「そう言う事だったんだ」


美鈴はホッとした顔をしている。



「あぁ、花山さんは誤解してるみたいだけど後三日立てばサプライズが待ってるって訳だな」



「うん 」


「あ、花山さんには言ったら駄目だぞ」


「うん、わかってるよ!」



美鈴は笑顔でそう言った。


成一は思わず言ってしまった訳だが、美鈴の笑顔を見て、言って良かった思った。美鈴なら黙っててくれるだろう。

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