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男子×2vs大クモ

季節は夏になった。もう、既に虫暑くセミが鳴いている。そんなある日の土曜日。



成一は自分の部屋にあるべんきょう机で勉強をしていた。基本的に彼にとって勉強も趣味のような物になっていた。


他の人が聞いたらどう思うかはわからないが成一にとって勉強は趣味のようにもなっていた。これと言って成一には趣味らしい物は無い。



因みに成一の部屋のスペースは広くもなく狭くもないと言う感じだ。窓が着いていて本棚があり、勉強机がある至ってシンプルな部屋だ。



ただ、集中は余り出来ない。


「美鈴、何してるんだろ」



頭の中には美鈴の顔ばかりが浮かぶ。

何故だかわからない。いつも見ている顔なのに早く美鈴の顔が見たくてしょうがない。頭に浮かぶ度に心臓が飛び出そうな程、脈を打つ。顔も暑くなる。



成一は首を振って頭の切り替えをはかった。


「ここはこうして」



わざと言葉に出しながら勉強を続ける。先ほどよりはマシになった。



「美鈴と遇いたい…って何言ってんだ!?」



教科書を読んでいたはずがまったく違う事を言ってしまった自分にツッコミを入れる。



(オレどうかしちまったのか!?)




前々からこういう事はよく有ったが高校生になってから余計に悪化した気がする。



成一は勉強に集中しようと葛藤していると携帯が鳴った。ピリリリリと言う音に一瞬心臓が跳ねた気がする。



「何だ…電話か」



成一は一旦気持ちを落ち着けて電話に出た。



「もしもし」



「助けて!」



声からわかる。電話の相手は美鈴だ。成一は、血相を変えて走り出す、鍵も閉めず家を飛び出し、隣の美鈴の家まで走っていった。玄関の脇に隠してある合鍵を取り、勢い良くドアを開けた。



「美鈴!!」



成一が美鈴の家に入ると。家の隅で固まっている美鈴がいた。



成一は美鈴の姿を見て何とも無かった事にホッとしたが何に怖がっているのかわからなかった。



「どうしたんだよ?」



「後ろ…」



そう言って美鈴は後ろをチラッと見た。体がかなり震えている。



「何だよ?後ろになに…か!?」



成一が後ろを見るとかなりの大きさはあるであろう大クモがいた。ゾクッとした恐怖が成一の首筋に襲ったが成一は平静を装って美鈴の手をとった。美鈴は相当怖いのか成一の手をギュッと握り返してきた。2、3歩まではなるべく普通に歩いたが…。


「走れ!」



「え!?」


成一と美鈴は猛ダッシュで家を脱出した。多分凄い顔していた事だろう。とにかく逃げなくてはと言う一心で走った。






玄関の外。



「何だよあのクモ!」



いきなりあの呼び出され方をして行ってみたらクモが居ました何て洒落にならない。



「わかんないの気付いたら居て…怖くなって…」



なるほど。それで電話したと言うことか。


美鈴は本当に怖そうだ。長年の幼なじみだからわかるが美鈴はクモが大の苦手だった。成一は有ることを思いつき、携帯を出して優人に電話した。



「優人か?直ぐに美鈴の家の前に来てくれ…頼む急ぎなんだ…あぁ待ってるな」



そう言って成一は電話を切った。



少しして優人が来た。隣には優里もいる。



「どうしたんだ…いきなり呼んで」



優人は成一に聞いた。まぁあの呼び方をすれば当然だろう。


取り敢えず言うより見て貰った方が早いだろう。


「取り合えず美鈴の家に入ってくれないか?…あ、花山さんと美鈴は外で待っててくれ」




「え?何でよ?」


当然優里は聞いてくる。説明ぶそく故に仕方がない。



「直ぐわかるよ。 それより入ってみろよわかるから」



成一は優里にそう言って、優人には再度入るように言った。



「ったく…何があるって言うんだよ」



前を歩く優人はぶつぶつ文句を言いながら玄関を開けて入って行った。



当然奥に大クモが居ることを知っている成一はついて行くフリをして外に出ている。



「一緒に行くんじゃなかったの?」



優里が怪訝な顔をして成一を見る。



「ちょっと訳があって…直ぐにわかるよ!」


優里の問いに美鈴が明るく答えた。



「はぁ…」



優里は訳がわからないと言った様子だ。



数分後



玄関から派手な音が聞こえたと思うと優人が猛ダッシュ出てきた。



「何だよ!あれは!」


優人は物凄い血相で成一に問い詰めた。ショックは大きいだろう。


訳がわからない優里は血相を変えて出てきた優人を見て呆然としている。



「ど…どう言うこと?」



優里からしてみれば状況が読めるはずもなく美鈴が状況を説明し始めた。



「私の家に大きいクモが出てね」



「それで優人に手伝って貰おうと思ってオレが電話したんだ」



美鈴と成一は取り合えず説明した。



「だったらそうって言ってくれれば良いだろ…ったく」



状況が読めた優人は騙された形になり、不貞腐れているが何だかんだ言って引き受ける気のようだ。


「そう言うことね」



優里もようやく状況が読めたようだ。





早速成一と優人はクモ退治作戦を練り始めた。



「殺すと言うのはいくらなんでもあれだから捕まえて逃がすって言うのはどうだ?」


そう提案したのは優人だ。


「確かにそれが良いな…問題はあの大きさのクモだからな…」



成一は迂闊な事をすると飛び掛かって来ると言いたい。



「お前ん家何が有る?」



優人が聞いてきた。



「オレん家に有るのは…」



成一と優人の作戦は。










「優人、準備は良いか?」



成一は真剣な顔をして優人に聞いた。



「あぁ!勿論だ!」



優人は力強く返事をしてくれた。



作戦会議の結果、成一と優人は正面から向かうことにした。



真夏でくそ暑い中、長袖に長ズボン、手袋と…さらに何処から持ってきたのかヘルメットまで被って完全防御をしている。



さらに虫取網まで持っている成一と優人の姿は端から見たら完全に不審者だろう。



「よし、行くぞ!!」



「おう!!」



成一の掛け声に続いて虫取網を手に2人は向かって行った。

いざ、戦場へ。



数十分後。



成一達は何とかクモを捕獲して虫かごに入れた。



「これがそのクモ?」



優里が虫かごに入っている大クモを見ながら言った。正直震えている様子だ。確かに怖かった。



「あぁ後は遠く離れた場所に持っていくだけだな」



そう言って優人は成一を見た。何故か美鈴や優里まで成一を見た。



「何でオレを見る!」



成一に行けと言う事だろうか。それなら断然、勘弁だ。



「だって捕まえたのはオレだろ?後は逃がすだけだ…頼んだぜ?」



と言って帰ろうとしたため成一は直ぐに優人を引き留めた。



「ちょっと待て、最後まで付き合うのが義務ってものだろ」



成一は何とかあれこれ説得して、優人と一緒に行くことになった。



2人はびくびくしながら遠くまで電車で行き、山にクモを逃がしたのだった。

もう、こんな事は2度とごめんだと成一は強く思った。


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