優人の相談
放課後
成一と美鈴は優人席に向かった。優人の席は前から2番目で教室の出口よりだ。
「優人話しって何だ?」
成一は早速聞く。
「あぁここだとあれだからお前ん家でも良いか?」
誰かに聞かれたく無い話のようだ。優人は何故か教室の出口よりの方をチラチラと気にして見ている。
そこには茶髪の女子が座っていた。ただ、けして派手な雰囲気ではない。どちらかと言うと落ち着いた雰囲気だ。茶髪がよく似合っている。容姿は美人と言っても大袈裟ではない。ただ、茶髪が校則に引っ掛からないのは何故だろうか。
「…あぁわかったじゃあ行こうぜ」
成一は茶髪の女子に疑問を持ちつつも余り気には止めず、優人に直ぐ了承して教室の出口に向かった。後に美鈴と優人が続いた。
下校して歩く事20分。
家の玄関の前に着き、黒い玄関を開け。美鈴と優人を家に入れた。
因みに成一の家は小麦色で屋根が紺色の1階建と言う至って平凡な一軒家だ。部屋数は3LDK。
「麦茶しか無いけど飲むか?」
「あぁサンキュー」
「私も飲む」
成一はキッチンの冷蔵庫から麦茶ポットを出してグラスに全員分の麦茶をテーブルに並べてた。
「それで優人君、話って?」
早速美鈴が優人に話を聞いた。
「…実はお花見に行きたいんだ」
優人は言いずらそうに言った。
「お花見?」
成一が優人に聞き直す。
「…気になる…奴が居るんだよ」
優人は更に言いづらそうに言っている。
「気になる奴?同じクラスか?」
成一は脳内で記憶を照らし合わせて見たが該当が無い。
「あぁ同じクラス」
(なるほど…そいつと友達になりたいと言う事か)
成一はそう思ったが次の瞬間。
「要は好きな子を誘う口実を作りたいって事でしょ?」
美鈴が冷やかすようにイタズラっぽい笑みを浮かべて言っている。
「好きなって…ただ気になるだけで…それより!明後日の土曜日何だけど頼めるか?」
優人は顔を真っ赤にしながら弁解して成一と美鈴に大丈夫か聞いた。だがそれよりも成一は驚いた。てっきり男子かと思ったら女子だったとは…。
「ああ、オレは大丈夫だけど…て言うか女子だったのかよ」
成一は正直意外に思って声に出した。
「成一、鈍感過ぎるよ…」
美鈴は少し呆れた様子で成一に言う。
「え?」
成一は何故呆れられて居るのかがわからず、首を傾げた。今の会話からすれば普通に男子と思わないだろうか。
「まぁ成一が鈍感なのが今に始まった事じゃないからな」
優人まで言った。どういう事だ、と思いつつ、成一はもうひとつの方の疑問の方に気を取られた。
「そう言えば予定が決まってるって事は…もう話したのか?」
「あぁもう話してお前らが来ることは言ってある」
ん…何か話しの順序がおかしい…
「…と言うことは」
美鈴も同じ事を思ったようだ。
「最初っから」
「オーケーして貰うつもりだったみたいだね」
成一と美鈴の言葉は見事に繋がった。
すると何故か優人はニヤニヤしながら此方を見た。
「な…何だよ」
「な…何よ」
また同時に言ってしまった。
「お前ら息ぴったりだなぁ」
さっきのお返しとばかりに冷やかすような口調で言ってきた。
「……」
「……」
成一は思わず顔を頬を赤くした。顔が熱い。
「そ…それより土曜日だったよな?」
成一は1秒でも早く話を反らしたくて優人に聞いた。多分まだ顔は赤くなってるだろう。
「あぁ土曜日。時間は午前の9時が良いんだけど大丈夫か?」
「あぁオレは大丈夫だ」
無事に話は逸らせたようだ。成一は心の中で一安心した。
「美鈴ちゃんは?」
「私も大丈夫だよ」
美鈴は笑顔で優人に言った。
「それで皆の弁当はどうするんだ?」
成一は気になって優人に聞いた。
「その事なら大丈夫。持ってきてくれるみたいだから」
「そうか…それなら大丈夫だな」
ふと成一は優人の好きな子の名前が気になり聞こうとしたら…。
「私もお弁当持っていきたいんだけど良い?」
美鈴は一瞬成一の顔を見た
「え?」
疑問を浮かべる成一とは逆に
優人は納得したような顔をして。
「それなら両方で持ってくるって事で良いな?」
と優人は美鈴に聞いた。
「うん良いよ!」
美鈴は嬉しそうに言う。
この時美鈴がまた成一の方を見てきた。
成一は意味がわからなかったが。
「じゃあ頼んだぜ?」
と美鈴に言った。
「うん任せて!」
美鈴は満面の笑顔で成一に言った。
成一はこの時美鈴の笑顔を見てドキッとした。
成一の様子に美鈴は
「どうしたの?」
「べ…別に何でもねぇよ」
美鈴の笑顔を見てドキッとしたとはさすがに言えない。成一は咄嗟に誤魔化した。
因みに美鈴の容姿は可愛い。髪型はショートヘアーでパッチリした目が特徴だ。
成一は前から美鈴の何気ない仕草にドキッとさせられる事が多かった。この事は言えないが実はここ数ヶ月、この気持ちが何なのかがわからず悩んでいる。
どういう訳か何をしていても美鈴の顔が頭に浮かぶのだ。
これは昔からだったが気に止めては居なかった。だが最近は何でなのか気になってしょうがなかった。
「じゃあ、オレそろそろ帰るな、麦茶ご馳走さま」
「ああ、ハイよじゃあ明日な」
とだけ言った。成一は立ち上がって玄関に向かった。
優人を見送った後、美鈴はキッチンで夕食を作り始めた。中学校の終わりの頃から毎日、今に至るまで美鈴が作ってくれて食事を共にしている。両親が中学校の終わりから海外に行ってしまったのだ。
「出来たよ」
「おう、サンキュー」
今日のメニュは焼き肉にサラダ、卵スープと言ったメニューだ。
「頂きます」
「はい、召し上がれ」
と言うやり取りを終えると同時に成一は夕食に手を着けた。
美鈴の料理はそこらの料理屋より断然美味しい。
成一はすっかり悩みを忘れて料理を堪能した。