白は何も語らない
あれ?ここは…?
暗い。
どこまでも続くトンネルを俺はただ歩いていた。
あぁ…。そうか。
俺は死んだんだ。
向こうに白い何かが見える…。
ドア?誰もいないけどとりあえず開けてみよう。
カチャ。
そこは全てが真っ白なボールルームだった。
床も壁も天井も何もかも白い。
さらに白い光に包まれた空間で、人々は目元だけ覆う仮面をつけ、ワルツを踊っている。
おかしなところと言えば、俺を含め、全員の体が白く透けていることだ。
俺はしばらくその様子を端から見ていた。
すると仮面をつけた一人の女性が
「一緒に踊りませんか?」と誘ってきた。
ワルツを踊ったことがなかったので断ると
「私もです。でも踊ってみたくて。お付き合いしていただけませんか?」と。
乗り気ではなかったが、言われるがまま、彼女の手を取った。
その時、その手の温度を知っている気がしたが、踊る不安が勝り、気に留めなかった。
初めて踊るはずなのに、不思議と息が合う。
俺は自分の状況を忘れて、この時間を楽しんでいた。
すると、俺たちは別のペアとぶつかってしまった。
と、カタンッと、彼女の仮面も外れてしまった。
俺は仮面を拾い、「はい」と彼女に手渡そうとした。
彼女は「ありがとう」と仮面を受け取り、俺を見つめていた。
だが、その表情から何も読み取れない。
それでも俺の体は、驚きと恐怖で震えていた。
嘘だろ…。
そんなはずがない。
だって目の前にいるのはーーー
今朝俺を殺した妻なのだから。




