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17~18-1話 生き残り


 軍靴が聞こえた。

 また来たか、我らはもう、何も差し出せない。


 どれだけの同胞が、この世の成らざるモノにされたか。

 どれだけの資源を、我らの土地から搾取したか。


 ならばいっそうここで、全てを捨ててでも戦おうか。

 ならばいっそうここで、全てを終わらせて、子どもたちに過酷な未来を見せない。

 それがせめてもの救いか。



「兵長、村を確認出来ました、生き残りではないかと…」

「全軍、保護に向かうぞ。絶対に傷付けるなよ」



 奴らが来た。


 皆構えろ!

 女子どもは下がれ!

 1000年東部に生き延びて来た我らの力を振り絞る時だ!

 男ども!ここで死ぬぞ!

 

 しかし、可笑しい。

 以前の奴らとは面持ちが違う。白い鎧いの死神も居なければ、黄金の髪の商人でもない。

 

 可笑しい、奴らは何故武器を掲げた。


 なに?!何故武器を地面に捨てる?!


 一人の青年が前に出た。


「えっと、こんちゃ!わしらは仲間やで!少しお話しせんか?

 

 …てか言葉通じるんやろうか、いや生き残りやし、いや1000年もたちゃぁ厳ぃか?」


 なんだそのふざけた言葉は。

 どこの田舎もんだお前。



 ぽかーんとした顔で見つめられた。

 精一杯の笑顔で応えてみせた。


「あれやっぱ言葉違うかな?白騎士の言語なんて知らないよ…」


 身なりが比較的まともな中年の男性が近づいて来た。


「おめぇバーカにしとんか、おぉ?どこの田舎もんっぺよ?!」

「へ?」

「何大勢のふと連れで来てんだおめ!どってんすちまうびょん!」

「…ええと、はい?」


 なんだこの田舎モン、喧嘩か?

 よし全軍、ヤルぞ。



「はえぐいってけ!西の白豚どもがど思ったでねが!ガハハ」

「いやはや!おずさん達も早どぢりすねでぐれよ!」


 どうにか村人と誤解を解く事が出来た。ロッキー副官がどうにか村長と話をつけ、場を収めてくれた。

 同じ言語を話しているのだろうか、当人達の独特な会話にどうにも付いて行けないと悟り、全て丸投げした。

 ていか何ぜロッキー副官と会話が通じるんだ。

 本人曰く、ウェストドラガン出身の中でも、ワジャ民族にルーツを持つ家系で、地元で離されている訛りに近いらしい。

 大変助かった。思わず全軍突撃の号令を出しそうだった。

 

 焚き火を囲い、宴を開催し、親睦を深める事にした。

 


 生き残りの民、彼らは東ワジャ生粋の民。


 彼らと、歴史、現状について共有を図っていった。

 しかし彼らには国という体系的な枠組みを持っておらず、原始的な暮らしに近い事もあり、口伝に近い歴史事実しか擦り合わせる事が出来なかった。


 整理すると、彼らは始まりの王の歴史について知っている者は居らず、生まれた時から白い軍勢に支配されている記憶しかない。

 しかし、彼らの中には白い軍勢に抵抗した、守り神、竜が一部信仰されていた。村野中で竜を象った祭具、彫刻などが見られており、悪魔祓いとしていた。

 500年の歴史で、ナーガの歩みは無駄ではなかった。


 白い軍勢は、強制栽培や定期的な人員の供給を強いて、抵抗すれば残虐な制裁を加えていた。

 東ワジャの民は、強制栽培で、本来自分達が営んできた作物を作れず、やがては食料困難に落ちいていった。

 また定期的な人員の供給も村にとって重いものだった。

 定期的にマンパワーが失うことにより、村の生活は成り立たたない事が多くなっていた。

 

 そして何よりも受け入れがたい事実は、


「あの白い悪魔は、彼らだったのか」


 白い軍勢は、ワジャの民を悪魔に変える術を持ち合わせていた。


 亜人の誕生原理を応用した魔法であり、元来亜人の祖は人間と同一だった。土地の魔力や周辺の魔物などから、長年影響を受けて、徐々に体が魔物に近い性質を発現する。これが、亜人の由来だ。

 日出国の民の魔力量が少ない理由も恐らく同じ原理。


 白い軍勢は亜人を研究し、ワジャの民を戦闘要員として活用した。


 しかし、ここ数ヶ月、白い軍勢が村に来ることはなかった。

 数ヶ月前の地響き以降、彼らは一度も来ることはなかった。

 この村でも、他の村と連携し事実確認はしたが、少なくとも西の遠くの村まで白い軍勢を見かける事はなかった。

 彼らは白い軍勢の脅威が居なくなった事に、何よりも喜ばしい事だが、しかし、いつ彼らが帰って来るか、気が気でなかった。

 いつまたあの恐怖の支配が戻るか、恐怖の日々が過ごした。


 そんな矢先に、田舎者が突然重武装で村に襲撃して、いよいよ終わったと思っていた。


 おい待て、田舎者だと?

 全軍、ヤれ。



「…どうしますか兵長」


 夜が更け、焚き火もその明かりを潰えようとしていた。

 幸い月明かりがはっきりと村を照らしていた。


「本国に調査報告を送って、団長の判断を仰ぐ事になるけど…幻妖薫川を拠点にする。そして、東ワジャ民とある程度親睦を深めたら、更に西に行く」

「はっ」


 副官は早々に団員達に指示を送った。一つの方針で十の行動をしてくれる優秀な副官だ。本国への調査報告、そして拠点作りの同時に生き残りの民たちの保護。丸々一つの国家をワジャ東部で立ち上げるみたいだ。


 一つ気がかりなのは、生き残りの民、彼らは、黄金髪の商人、と口にした。


 黄金髪の商人…彼らは、村人とは最低限のやり取りしかしなく、むしろ村人は彼らから無償の施しを受けており、悪い印象は持っていなかった。


 白い騎士は、鎧の隙間からしか確認出来ていなかったが、髪の色は白だ。

 そして、西大陸に到着した時に確認した、崩壊した街、そして港。


 リバ大陸の西部の海域には、深きものが潜んでおり、海路による移動は困難を極める。

 最近頭角を表した黄金の継承者、海洋の主、海洋都市クタランティスの造船技術でもあれば、深きものを潜り抜ける事は出来るだろう。

 それを数百年前から実行出来る力、この500年で急速に力を付けた者、それが出来る者は一つしかない。


「世界を開拓するにもまずは地盤固めか…ロッキー、報告書に追加してくれ、

 ”中央の黄色い花を見繕って欲しい”ってね」

「…かしこまりました」


 副官が司令部を退出しようとした所、その退路が、屈強なる戦士に阻まれた。

 副官ロッキーは礼節を重んじる青年であり、屈強なる戦士に、畏怖の敬を示した。

 戦士は副官の肩を叩き、ハイジに近づく。


「ちょうど退屈な時間をどう潰すか考えた所だ、俺様が処理しよう」

「…殿下」


 魔力の躍動。


「貴様らは憂いなく西を開拓しよう、新たな玉座は、俺様が頂く」


 王者に、久方の高揚感が沸き上がった。


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