第2話 追い風吹き付ける山里
快速列車から降り、改札口を出て金時計に向かった。
あとは俺が行けば全員集合らしい。
相変わらず人が多いのだが、遠目でも"追風村1年移住"
の文字が書かれた旗を見つけることができた。
その付近には、同い年くらいの、というか同い年の少年少女がいた。
「あ、来た!」
「やっとか…。」
「よろしくお願いします。」
「やほー!」
…急に話しかけられて、俺は固まってしまった。
幸伶「ゴメンゴメン!ボクは伊佐幸伶!よろしく。このピンク髪のが、朝倉望美、紫服が橋ノ口疾照、黄色のだんまりが加藤和城さ。」
…一気に紹介をされて、追いつけなかった…。
なんなんだこいつ…。他人の配慮ができないのか…?
望美「ちょっと!私たちの説明が雑すぎない!?」
疾照「そうですよ!印象がよくありません。そもそも何なんですか紫服って!」
幸伶「え、だっていつも紫の服着てるじゃん。」
和城「…はあ、このバカ…。」
やはり、話について行けん…。ここまで無神経で、素直に人と関わる人間は珍しい…。…あまり、こういうのと仲良くはできん…。…いじめてきた奴らは、たいていこういう性格をした人間だったからだ。
俺たちを見殺しにした、あのよどんだ目を、コイツラ
らも持っている。
幸伶「まあいいや。とりあえず仲良くしよ!」
英春「……。」
俺は、無視をすることにした。何も言わない。コレは一番相手には効くらしい。
幸伶「なんで無視ばっかりするのさ。」
英春「……。」
和城「…やめろ幸伶。コイツは僕たちと話したくないらしいぞ。」
…よくわかっているな…。俺は、やはり人間そのものが嫌いらしい。でなければ、ここまで会話を嫌悪したりしないはずだ。
望美「ねえ君、名前なんて言うの?」
疾照「ちよ、望美さん…!」
望美「いや、名前くらいは聞いてもいいでしょ。で、君の名前は…?」
英春「……。」
望美「……何か話してくれてもいいじゃん。」
…俺の手には、新城駅までの切符が握られている。別に、今から豊橋行の電車に乗り、そのまま新城行きに乗り換えて追風村に直行してもいいわけだ。
…正直、相当居心地が悪い。とうとう俺は耐えられなくなって、その場から逃げるように東海道線のホームに上がった。
幸伶「…行っちゃったね…。」
疾照「まあ、とりあえず、私たちも行きましょうか。時間もありませんし。」
和城「……。ムカつくやつだな…。」
一日数本しかないバスに乗り、俺たちは追風村にたどり着いた。その間も、幸伶とかいうやつは粘着してきた。正直だるい…。
ーー間もなく、追風中央、追風中央です。追風中央を出ますと、次は、飛行村です。ーー
アナウンスも鳴り、さて降りようとしたときに、車窓に絶景が広がった。
それは降りてからも変わらず、見渡す限りの山と田んぼ、そして遠くに見える湖に、点在する家々…。
極上の田舎と言えよう。
望美「うわ〜、キレイ〜!」
和城「…これはいい。」
幸伶「いい景気だなあ〜。」
疾照「幸伶さん…、景気じゃなくて景色ですよ…。」
幸伶「あ、ヤベ!って、それより、いい加減名前くらい教えてよ!赤服くん!」
英春「……誰が赤服だ。…高倉英春。以上。二度と話しかけんな。」
和城「うわ、お前、話せたのか。」
英春「……。」
…平然と他人の心の中に土足で入り込む…。身勝手にもほどがある。
幸伶「それにしても、本当にここで暮らすのかぁ!」
望美「いやー、最高!空気が美味しい!」
疾照「よいところですよね。心が安らぎます。」
周りを見渡すと、桜の木が花を咲かせている。
春、真っ最中といったところだ。
「いやー、気に入ってもらえたようで何より。」
突然横から声がしたので振り返ると、同年代に見える子供が3人いた。
素朗「はじめまして。私は木戸素朗。小4さ。」
幾斗「オレは佐藤幾斗!!YOROSHIKU!!」
瑞穂「うちは、山口瑞穂だ。うちも幾斗も小4だ。よろしくな。」
そうして、双方自己紹介を済ませていく。俺はもちろん何も話したくないので黙っていた。俺らのような年齢の子供がたった3人でここまで来るとは思えないから、ここに住んでいるのだろう。
幾斗「おいおいおい!何しけたKAOしてんだ!HIDEHARU!仲良くしようぜ!」
絡んでくる幾斗を、俺は無言で突き飛ばした。
幾斗「ちぇ、TSUMARANぞ!」
こういうのこそ、俺が一番苦手とする人間だ…。
なぜなら、人の話を聞かないから。
素朗「それで、例の短期移住児童ってのは、君たちかな?」
幸伶「そうだよ。僕らみんなで来たんだ!」
素朗「なら、さっそく村を案内するよ。君たちも新居は気になるだろうし。よっぽどのことがない限りは、シェアハウスになるけどね。」
…え、シェア…、ハウス…?
もうすでに、俺の絶望は頂点に達しすぎているのかもしれない…。




