第22話:過労
「大丈夫ですか!?」
冷たい床にいつまで倒れ込んでいたのだろう。
ローワンの声にステラはかろうじて目を開けた。
「しっかりしてください!」
「ローワン様……?」
次の瞬間、ふわりと体が浮いた。
力強い腕の感触に、ローワンに抱きかかえられたとわかる。
「あの、私……」
「工房に様子を見に来たら倒れていたんです。すぐに医者を呼びますから!」
まだ頭が朦朧としている。頑張ってみたが、指一本動かせない。
ステラはただローワンに身を委ねるしかなかった。
ステラはそのまま寝室へと運ばれた。
ローワンの手によって、ベッドにそっと寝かせられる。
(意外……すごく優しい手つきだわ)
ぼんやりした頭でも、ローワンがとても丁寧に扱ってくれているのが伝わってくる。
ローワンが侍女たちに指示するのを聞きながら、ステラは密かに驚いていた。
(てっきり迷惑をかけて怒られるかと思ってた)
ひんやりした大きな手が額に当てられる。
「熱はないようですね。おそらく過労でしょう。どう考えてもあなたは張り切りすぎで働き過ぎです」
しばらくして医師が来て診察をしてくれた。
医師の見立てはやはり過労だった。
大きな病気ではなかったことにホッとしつつも、情けない思いがこみ上げてくる。
(これしきのことで倒れてしまうなんて)
「これでわかったでしょう? あなたは頑張り過ぎです!」
医師が帰ると、枕元にローワンがやってきた。
「ずっと気になっていました。あなたはいっときも止まらない!」
ローワンが珍しく強い口調で言った。
「そ、そうですか?」
「忘れたんですか? この屋敷に来てすぐ、あなたは鉱山に行ったんですよ!?」
「あ、はあ……」
「いきなり王宮にまで行って試験を受けるし、遠方のお茶会に参加したと思えば、魔宝石の鑑別をしたいと言う」
はーーーーっとローワンが深いため息をついた。
自分では当たり前のことをしていたつもりだったが、言われてみれば予定をぎゅうぎゅう詰めにしていた。
これまでじっと屋敷に閉じこもっていた生活が長かったので、役目を得られてつい張り切ってしまった。
「お互い自由に過ごしましょうと言った手前、口を出しませんでしたが……」
ローワンがじろっと睨んできた。
「倒れるまで頑張るなんてあり得ない」
「すいません……」
「謝ってほしいわけではありません」
ローワンがぴしゃっと言う。
「これに懲りて、ちゃんと休むようにしてください。決して無理はしないこと」
ステラはハッとした。
「あの、ノエルは? 昼ご飯を一緒に食べられなかったんです。あと、お茶会のお礼状を――」
言いかけたステラだったが、ローワンの呆れ顔に口をつぐんだ。
「言ったそばからあなたは……。ノエルはちゃんとご飯を食べたそうですし、お礼状は私から出しておきます。あなたはまず自分の心配をしてください」
食事を持った侍女がやってくる。
「消化のいい食事を用意させました。まずはこれを食べて寝てください」
「あの、ノエルは……」
「夜に一度来させます。だから、とにかく何も考えずに休んでください。わかりましたね?」
「はい……」
ステラはしょんぼりとうつむいた。
(ああ、やってしまったわ)
気負いもあって、公爵家に来てからがむしゃらに働き過ぎた。
その結果がこれだ。ステラはそっと目を閉じた。
(寝よう……とにかく回復しないと……)




