プロローグ
「ウッ……」
今まさに僕は近所のビル13階から飛び降りて、地面に叩きつけられたところだ。
痛い。
だがそんな不快な感覚も一瞬で消え、僕は立ち上がる。幸い目撃者はいない。不幸なことに怪我は無い。僕はなんとなくお腹を抑えながら家に帰った。
ガチャ
静かな家の扉が開く。母は小さい頃に家を出た。父は精神病院に入院、兄は2年前に全寮制の高校に進学。音沙汰はない。
「ふぅ〜っ」
ドアに繋いだ縄を首にかけ、思い切り脱力する。
「っ……!」
自分の体重が首にかかり、顔の血圧が一気に上がるのを感じた。このまま、上手くいけば——
兄とは仲が良かった。人生であった人間のうち、1番好きだったかな。家では父の暴力から、外ではいじめから守ってくれた兄。高校に進学してからは手紙も、メールの返信もくれなくなった。唯一の家族である僕を無視することなんてなかったのに、一体どうして……
「ああもうっ!」
僕は縄から顔を出して勢いよく立ち上がる。そして机の上に置かれた紙をむしり取った。それは兄の学校からの特別推薦枠の知らせだった。
「えーと……(1)高等学校または中等教育学校に在学し、20xx年3月卒業見込みの者(2)本学のの卒業(修了)生、在学生、兄弟姉妹である者
(3)本学への入学を第一志望とする者(4)本学への特色を十分に理解し、入学を強く希望する者……」
よく読んでいないため知らないが、とにかく兄弟のいるものは特別に願書のみで入学できるという事だ。今の僕には兄の後を追うという選択しかない。もうどうなってもいい、いや、どうにもなりたいから高校に行くのだ!
兄のいる"私立幽峰学園"、そこに僕は死ぬために行く——