89.ルーカスの誕生
この日、といっても夜なのだが、シルフィーナは赤子のアベルを眺めていた。
昼間ではこの家は賑やか過ぎて、いくら人間には見えない神霊体だと言っても全く落ち着かない。
夜だと子供たちも寝静まり、落ち着いていつまでも飽きずにアベルを眺められた。
ジャシス伯爵夫人の様子を見に行っていたガイが戻ってきた。
「シルフィーナ様、ジャシス伯爵夫人が産気づきました」
「え!アベルが産まれてまだ1週間よ、ちょっと早いわね」
「お立合いになりますよね?キアを呼んできます」
待っている間にアベルの頬に接吻をし、結界を張った。
「アベル、ルーカスを迎えに行ってくるわね。沢山眠るのよ」
空中にガイとキアが現れた。
「シルフィーナ様」
「キア、ごめんね、度々呼び出して」
「いえいえ、おめでたいことで呼び出されるのは大変光栄です。おお!おチビちゃんアベルはお休み中ですね」
「可愛いでしょう。将来かっこよくなるのよ。私のアベルだもの」
「はい!」
「さあ、ルーカスを迎えに行きましょう。アベルには結界を張ったから大丈夫よ」
そういうと三柱はジャシス伯爵夫人の元へ飛んだ。
ジャシス伯爵夫人は、4度目のお産になる。
三柱が駆け付けたときにはすでにお産が始まっており、ガイはさっさと退出した。
「ルーカス、頑張って」
と母体ではなく赤子に声援を送ってしまうシルフィーナだったが、キアは何も言わずシルフィーナの手を握りしめていてくれた。
ルーカスが予定より少しだけ早かったのが幸いしたのか、かなりの安産だった。
金髪の可愛い赤子が元気な産声を上げて誕生した。
キアとキャアキャアと手を取り合って喜び
「この子の名前はルーカスよ」
とジャシス伯爵と伯爵夫人に訴えて、赤子の名前はルーカスに決定させた。
「シルフィーナ様、これから忙しくなりますね」
とキアが言うが、嬉しくて忙しさなんて考えなかった。
「アベルとルーカスをいつまでも見ていたいけど、今はまだ意思の疎通が出来ないから見守るしかできない。早く一か月にならないかしら。そうしたら神霊体で話が出来るのよね」
「はい、一か月ぐらいからですね。それまではおねむの時間が多いですし、でも話は結構短時間ですよ、赤ちゃんですから」
「ええ、そうよね。でもいいの、初めは大好きよって伝える時間があればそれでいいの」
そういうとアベルの時同様にジッと生まれたてのルーカスの顔を嬉しそうに眺めるのだった。
キアが帰った後、朝にガイに連れられスタニスラガの王城に戻った。
アレクシウスにルーカスも無事に誕生したことを伝えたら、アレクシウスが
「お前の神従が無事に実体を手に入れた。祝おう」
と言って一緒に朝食を取った。
すっかり夜行性が板についたシルフィーナとガイは、朝食の後、いつものように抱っこをして一緒に眠るのだった




