85.兄と兄の神族の決心
「あの、シルフィーナ様、私の話をお聞き願えますか?」
泣き叫ぶシルフィーナに声をかけてきたのはジーンであった。
泣きわめくシルフィーナには届かない声であったためにガイが宥めた。
「シルフィーナ様、ジーンがお話したいことがあるそうです。もうお泣きにならないでジーンの話を聞いてあげてください」
暫く泣いていたが、ガイの言葉は聞こえていたようで落ち着きを取り戻し顔を上げた。
ジーンの方に振り向き手を伸ばしたが、ジーンに首を振られた。
「神帝陛下のご決定には、シルフィーナ様に触れてはならぬ、とはございませんでしたが、我々アレクシウス様の神族は、今後シルフィーナ様に触れることを辞退することにいたしました」
シルフィーナの顔がますます曇った。
「我々は神帝陛下の決定に不服はございません。当然の決定だったと思っております。シルフィーナに触れないというのは神族内での決め事です。シルフィーナ様が不快に思われないように、ここで楽しく過ごして下されるように、フローリア様のお城よりこの城の方が心地よいと思っていただけるように努力しようと決めたことです」
またガイにしがみ付き誰にも聞こえないような小さな声でつぶやいた。
「私、誰の役にも立てれてないのだわ。みんなの自由を奪って、不名誉を授けただけの役立たずな女神なんだわ」
ベッドに居たアレクシウスが立ち上がってシルフィーナに近づいた。
「おいで、俺の可愛い妹よ」
両手を広げて迎え入れようとするアレクシウスを見てジーンの話を思い浮かべ躊躇した。
「俺は俺の妹を抱っこもするし、頬に接吻もする。しないのは女神の愛だけだ」
ガイの腕が緩んだので、行っても良いという合図だと思った。
アレクシウスに抱っこしてもらったら、頬に接吻をされた。
涙でグチャグチャな顔をしているのが、恥ずかしかった。
「俺の神族の決心を聞いたか?あいつらはお前のために出来ることを考えたんだ」
ジーンがどんな表情をしているのか見たかったが振り返る勇気が持てなかった。
「今後お前がこの城で心地よく過ごせたのなら、あいつらの努力が報われるということだ。どうだ、たまにはここに来てあいつらの努力を見守ってやる気はないか?」
暫く考え込んでいたら、ガイが近づいて来て頬の涙をきれいに拭ってくれた。
「シルフィーナ様、綺麗なお顔に戻りましたよ。さあ、アレクシウス様の神族にお言葉をおかけください」
ジーンへ振り向くとそこにはグイドとダーレンもいつの間にか来ていた。
騒ぎを聞いて駆けつけたのだろう。
「・・・夜分に大騒ぎしてごめんなさい。・・・私の力不足でみんなが不名誉な結果になってしまって、ごめんなさい。・・・こんな役立たずな女神だけど・・・これからも遊びに来ても、いいのかしら?」
アレクシウスの神族の顔がみるみる明るくなって口々に言葉を発した。
「もちろんです、シルフィーナ様」
「また私に憑依なさって美味しい物を食べてください」
「シルフィーナ様、宝物庫に遊びに行くお約束をお忘れになってないですよね?」
シルフィーナは嬉しく思ったとたん涙があふれてきて兄にしがみ付いた。
「お兄様、お兄様は細くて抱き心地が悪いわ」
「おいおい、それはあんまりなご意見だな。まだ16なんだから仕方がないだろう?」
そういうとアレクシウスはガイへシルフィーナを渡した。
「お兄様、皆、今日はお姉様にスタニスラガ王国に行くって言ってなかったから、ラナダ王国に帰るわ。アベルとルーカスも順調だから安心したわ。また来るからその時はたくさん遊んでくださいね」




