73.神帝
ガイは落ち着いていた。
神帝の言葉に頷き、シルフィーナを抱いていた手を緩めると、女神は眠ったままゆっくりと空中を移動し神帝の膝の上に着地し、神帝の腕に支えられた。
神帝はシルフィーナの額と自分の額を重ね動かなくなった。
ガイはその様子をじっと見つめていたが、フローリアに控えるようにそっと言われたので跪いた。
「やれやれ、シルフィーナ、どこだい?儂だよ、お前の父様だよ、どこに居るのかな?シルフィーナや」
シルフィーナの心の奥深く、夢のように視覚的に形が成り立っているが、誰も入ることの許されないエリア。
やはり辺りは真っ白の雲がふわふわ浮いているような場所で、眠りについたシルフィーナの意識はここに居る。
神帝ゼウニオスはその中でシルフィーナを探す。
白くふわふわの世界の一角に光り輝くエリアをようやく見つけた。
「シルフィーナや、父様だよ、いったいどうしたのだい?」
光の中から銀色の髪をふわふわと揺らしながら女神が飛び出してきた。
「お父様!」
ゼウニオスは勢い良く飛びつく我が娘を抱きしめた。
「おお!おお!びっくりした!かわいい我が娘よ、相変わらず美しいな」
ギュッと抱きしめてあげた。
「うふふ、お父様、大好きよ」
「ははは、儂も大好きだよ。それで、いったい何があったのかな?」
父を見上げるシルフィーナの紫色の瞳はキラキラと明るく輝いている。
「この頃ものすごく神力が漏れちゃうの。特にお兄様とお兄様の神族に女神の愛を授けたときと人間に憑依した時に。度々眠って原因を探してたのだけれども起きる時間を気にしてたらなかなか見つからなくって、困ってたの」
ゼウニオスは娘の顔を見ながら娘と一緒の困った顔をした。
「それは困るね。どれどれ、儂が見てあげようか」
「本当?とても嬉しいわ」
娘を離すとゼウニオスは原因を調べ始めた。
ゼウニオスは大きく手を広げ、柔らかい光を大きく広げ、シルフィーナの心の中の世界にいきわたらせた。
「あら?」
「うむ、あったな。アレクシウスの神族と交わるのが嫌だったのだな。それでアレクシウスにも背を向けようとしたんだな」
「そんなことは無いわ!お兄様もお兄様の神族も大好きよ」
ゼウニオスは娘の頭を撫で、にっこりとほほ笑んだ。
「シルフィーナ、儂の言っているのはお前の心の本心の片隅の極々小さな気持ちだ。お前が意識しない程度の気持ちだ」
抗議していたシルフィーナの顔は力の抜けた顔になっていった。
「私、そんな区別をするようなことをしていたの?女神なのに」
「いや、それは違う。切っ掛けがあったんだろう。気に入らないことだったのかもしれない。儂はその件についてはアレクシウスが神族を叱咤したと聞いた。それにアレクシウスの神族にはもう女神の愛を与えなくて良くなったんだろう」
「ええ、だから原因を探すために眠ったの」
「原因は分かったね。もう解決した原因だ。あれの神族は二度とお前と交わることを儂が許可しない。もう気に病むことは無いのだよ。わかるね?」
シルフィーナはコクリと頷いた。
ゼウニオスはシルフィーナを安心させるようにギュッと抱きしめた。




