69.眠る女神
シルフィーナがガイに
「時間を気にしなくても良くなったから眠るわ」
と言って眠ってから、5日目の朝を迎えた。
フローリアの城へ移動する日なのだが、起きないのでガイは眠ったままフローリアの所に行くことにした。
アレクシウスに出発の挨拶に向かう。
「部屋から出てこないと思ったら、あれからずっと眠っているのか?」
「はい、一向に起きる気配がありません。フローリア様とのお約束があるのでこのままラナダ王国へ向かおうと思います」
アレクシウスはシルフィーナの眠りの深さに胸騒ぎを覚え、近づいて額に手を当ててみた。
「何ともないようだな、眠る前に何か言ってたか?」
「はい、時間を気にしなくてもいいから眠る、とおっしゃっておりました」
アレクシウスが顎に手を当てて少し考え、一つの仮説が思い浮かんだ。
「俺もこいつを起こして女神の愛をもらったな。神力の異常な減り方に引っ張られて眠り続けているのかもしれない。一度神帝に神気を注いでもらうのもいいかもしれないな」
「神帝に神気を?そんな重大なことになっているのですか?」
ガイの顔色がサッと変わった。
「いや、大丈夫だ。フローリアの所で目覚めればそれで良しだ。来週こちらに帰ってきても眠っているようなら神帝の所に行った方が良いだろう。その時は俺も付き添う。そう心配するな、とりあえず起こすな、自然に目覚めるのを待て、いいな」
ガイは言葉を失った。
「ジーン、お前はガイと一緒にフローリアの所に行って状況を説明しろ、終わったら帰ってこい。ガイはしゃべるな、シルフィーナが起きてしまう。フローリアの城に行ったら部屋にこもってシルフィーナの目覚めを待て、さあ行ってこい」
ジーンの説明を聞いたフローリアは持っていた扇子を落とし、シルフィーナに駆け寄った。
ジーンに
「フローリア様、どうぞお静かにお願い申し上げます」
と言われたので声を出さずにそっとシルフィーナの額に触れてみた。
アレクシウスの言うように異常は感じられないのに、かわいい妹はとても深い眠りを続けている。
「ガイ、心配はないみたいだからお部屋に行って一緒にお眠りなさい。絶対に起こしてはダメよ。この子が自然に目覚めるまで待ってね。起きたら真夜中でも教えて欲しいわ」
と言って涙をこらえているのが分かるほど口元が揺れていた。
ガイが部屋へ下がると、帰ろうとしたジーンを引き留めた。
「キア、私の体に入りなさい、私はお兄様の所に行ってくるわ」
「フローリア様!」
カイルが思わず声を上げた。
「おだまり!ジーンはお兄様の所へ案内して、キア、早く!」
13歳の王女の体から出てきた女神は大人の魅力たっぷりの妖艶な美女であったが、その顔は怒りに震えていた。
「お前たちなるべく早く戻るから、キア、上手くごまかすのよ、ジーン行くわよ」
「はい」
鬼の形相の女神はスタニスラガ王国の王城に降り立った。
執務中だったアレクシウスは、フローリアが来たことに驚いたが、その顔を見て話を聞かなくても内容が分かった。
「フローリアよく来た。シルフィーナのことだな」




