68.零れる喜び
「お兄様、大好きよ。私、お兄様のお役に立てなかったけど、お兄様に甘えて良いの?」
シルフィーナの頭をなでながらアレクシウスは言った。
「お前は俺の期待以上に頑張ってくれたよ。もう十分だ。俺は俺の欲望よりお前の健康の方が大切だ。これは俺の神族みんなの意見だ。お前は元気で、笑顔で俺たちの近くにいてくれれば、それでいいんだ。分かるな」
泣きそうな顔で頷く妹を抱き寄せ、背中をさすってあげた。
「泣くな、済まなかった」
「お兄様、大好きよ」
アレクシウスをギュッと抱きしめ、頬に接吻をした。
「さあ、従者に朝食を取らせなければな、まだ途中だ。お前も離れろ、ガイが悋気するぞ」
「うふふ、そうね」
アレクシウスはシルフィーナが離れるとテーブルの鈴を鳴らして従者を呼び寄せた。
神族がぞろぞろと入ってきたので、シルフィーナはガイを連れて部屋に戻った。
「ガイ、抱っこして」
なにも言わずに当り前のように抱っこをし、空中に浮いてゆったりと回転した。
「シルフィーナ様、お眠りになるのですか?」
「ええ、時間だと思って無理やり起きたから、まだ眠いわ」
「時間ですか?」
「今日はグイドの日だったでしょ?それにお兄様が呼んでいるのが分かったから早く起きなきゃって思ったの」
「グイドの日!」
「怒らないの、さっきのお兄様のお話を聞いたでしょ。もうお兄様の所は終わりなの。ご用が済んだから城を出てゆくって言ったら、ここで笑顔で楽しく過ごせ、何もしなくていいって、ここからアベルとルーカスを見守ってやれ、と言ってくださったわ。それと2年後の私の定着はお兄様がしてくださるそうよ」
ガイの表情がぽかんとした感じになったが、きゅっと引き締まった。
「ご用が済んだのならやっぱりこの城を出て行きましょう」
「ガイ、ジーンがね、ガイと仲良くしたいのですって。それに元気が続けば憑依が出来るから、私はここで良いわ」
「次は、何が食べたいものあるのですか?フローリア様の所でお菓子はいっぱい希望を出してましたが」
「聞くところによると鱒のソテーがやたらと美味しいらしいのよ。食べたいからここで居てもいい?ねえ、ガイ?」
ガイは、うちの女神様は食いしん坊だなぁっと言う表情を隠さなかった。
「分かりました、シルフィーナ様のおっしゃる通りにします。それと、無理やり起きたとおっしゃったのは?」
ガイの顔をなでながらシルフィーナは答えた。
「いつも予定の時間は気にしながら寝ているわ。でも、この間のジーンの時は起きれなくてジーンには悪いことをしたわ」
ガイが声をたてて笑った。
「あはは、あの時のジーンの顔は見ものでしたね!シルフィーナ様は手が付けられないほど大泣きしておられるし、はは!」
シルフィーナがふくれっ面になったのをガイは見たが、笑いを止めれなかった。
「ガイ!笑い過ぎよ!」
「あはは、済みません。止まらなくって、ははは!でも私は本当に嬉しいのです。シルフィーナ様がやっと私の元に戻ってきてくださった、私は嬉しいのです」
可笑しくて笑っていたはずのガイが、嬉し笑いになり、泣き笑いになって、ついに笑わなくなり涙だけ残った。
シルフィーナはガイの涙をぬぐってあげ、ギュッと抱きしめてあげた。
「ガイ、私はガイの腕の中に居るわ。ガイは私の側にずっといるのよ。私の神使はガイ一柱だけなのだから」




