6.降臨の理由
サラッと流しているつもりですが、この辺りから大人向き表現が入ってまいりますので、未成年の方はお読みにならないようお願い申し上げます。
「相変わらずお前は美しいな、父上も変わらずか?」
応接室の長椅子に腰を下ろしたアレクシウスは隣に座った美しい妹をいつくしむ様に眺めた。
「ええ、変わらずです」
伸びてきた兄の手に頬刷りをしながらうっとりと言った。
「お前まで降臨しては父上が寂しがるだろうに、しかし、ここに俺が居るのになぜスタニラスガ王国に降りてきたんだ?」
「フローリアお姉様から使いが来たのです、早く降りてきなさい、と。それでどこに降りようか迷った末、ダーツをしてみました」
クスクスと笑いながら妹は話をしているが、兄はすでに妹を抱き寄せていた。
「そうしたらスタニラスガ王国にダーツが刺さりまして、こちらに降りることにしたのです」
妹の顔のあちこちに接吻を落としながら
「父上は何も言わなかったのかい?」
と聞いてみた。
「ええ、ちゃんとスタニラスガ王国に降りると申しましたが、取り立てて何もおっしゃいませんでしたわ」
「そうか」
(父上に何か考えもあるのかと思ったが、考え過ぎなのだろうか?)
そんなことを考えているとシルフィーナが話をつづけていた。
「私、お姉様にお声がけいただいたのも理由ですが、お菓子が食べたかったのです。だって神界では地上界のお菓子は食べれませんもの」
「すぐにお茶のご用意をいたします」
従者らしく壁際に立って話しを聞いていたグイドが言った。
「あら!嬉しいわ、でも神霊体では食べれませんので私の分は結構よ」
「大丈夫です、女官が持って参りますので一時だけ体を借りてみたら如何でしょう?食べれますよ」
そう言うと神従ダーレンが女神にウィンクを送った。
ダーレンはこんなノリの準神霊だったのか?とは思ったが嬉しい誘いには違いがない。
「それは良いアイディアですわね!」
「ではすぐに手配を」
グイドが菓子の手配の為に退出していった。
その間、兄の唇は妹の首筋から胸元にまで及んでいたが、誰もそのことに関しては何も言わない。
シルフィーナは貴族社会一般的なドレスではなく神話の世界によくあるようなトーガを着ていた。
とは言えとても薄く、とても軽い生地で少しの風でもフワフワとなびく神の世界独特の衣装である。
その衣装が美しい肩から背中まで剥がれ落ち、兄の手が撫でまわしていたが、神霊体での行為であるので兄の実体は両の手を膝の上に置いたまま椅子に座った姿勢である。
兄弟姉妹同士であっても乱れあうのは神界においては日常茶飯事なのである。
しばらくして、女官が金色のワゴンにティセットを4人分乗せて来た。
ダーレンがニコニコしながら女官の額に人差し指を触れると女官は脱力し、倒れる前にダーレンが受け止めた。
「シルフィーナ様、どうぞ」
まだシルフィーナにしがみ付いていたアレクシウスの腕からするりと抜けると女官の中に入った。
人の体は何だか動きにくさはあるがお茶は出来そうだ。
グイドがアベルやルーカスに体を貸すから一緒にお茶をしてはどうだと言ったが丁重に断っていた。
なので実体の持っている兄側の神従グイドとダーレンがお茶に参加することになった。
ぱっと見、王子、従者が二人、女官が王子の応接室でアフタヌーンティをしている光景は、城の者が見たら眉をひそめたかもしれない。
久しぶりの地上界のお菓子にシルフィーナは満足だった。