40.意地っ張り
翌朝、いつものようにフローリアに朝の挨拶に行った。
相変わらず、ガイはシルフィーナの斜め後ろに控えているが、シルフィーナは居ないような態度をとっている。
フローリアから、思わずため息が漏れた。
「シルフィーナ、こっちへ来なさい」
張りのあるフローリアの声に呼ばれ近づくと、両手を握られグイッと引き寄せられ顔が近づいて来た。
「仲直りしたの?」
「誰とですか?」
「ガイとよ。それにその顔!あなた色が白いから眼の下のクマがくっきり出るの。全く寝てないのでしょ!寝ないでガイと話をしたの?寝ないで女神の愛を与えたの?そうじゃないのでしょ!つまらない意地を張っている場合じゃないの!アベルとルーカスが腹の中なのだから頼れるのはお互いしかいないのよ」
シルフィーナの目に涙がゆらゆらと浮かんできた。
「だって、だって、ガイったら私にあの接吻をねだるのよ。私のことを見つけられないのよ。私、あんなに待っていたのに見つけてくれないんですもの。接吻だってどうしていつもの接吻じゃダメなの?なんで私の気持ちを考えてくれないの?私、そんなにダメな女神なの?私、ガイに尊敬されてないの?私、私、何がいけなかったの?お姉様、私、ちゃんと女神が出来てないの?」
立って姉と手をつないだまま、しくしくと泣きだした。
姉は妹を抱き寄せた。
「シルフィーナ落ち着いて、かわいいシルフィーナ。あなたはちゃんと女神だわ。みんなの上に立つ女神なのよ。そんなにボロボロと泣いてたら示しがつかないわよ。接吻をねだったのはいけなかったわね。フラウたっぷりで仕返ししたのでしょ?かくれんぼはあなたの勝ちじゃない。ガイが反省しているのは知ってる?ガイがあなたに無視されてとても寂しい思いをしているのは知ってる?あなたガイの顔を見た?いつまで神使をあんな顔にさせておくの?あなたはガイの女神なのでしょ?」
もう姉にしがみ付いてぐずぐずと泣くだけだった。
「まだ朝だけど、寝てないようだから少し休みなさい。眠って気持ちの整理を付けるの」
頭を振って拒否する。
「また神力不足になるわよ。休みなさい。ゆっくり眠って大丈夫だから」
フローリアはそういうと、ゆるく神技をかけてシルフィーナを眠らせた。
「そう、落ち着いて、眠って」
シルフィーナを寝落ちさせるとガイを呼んだ。
「ガイ、シルフィーナをいつものように抱っこしてお前も眠りなさい。お前も酷い顔よ。シルフィーナの気持ちは聞いたわね。起きたらちゃんと仲直りするよの。この子はかなり意地を張っていたけど、聞いた通り、お前に甘えたいだけ。この子はお前の女神だから、お前がこの子の手と足になって尽くしてあげなさい」
「はい、フローリア様」
カイルとセムスがフローリアからシルフィーナを神技ではがし、ガイに抱っこさせてくれた。
愛おしそうに、大切そうに、シルフィーナを抱きしめた。
「ありがとうございます、フローリア様。失礼します」
部屋に戻ったときにはすでにシルフィーナの無意識の結界が自分の周りにも張ってあった。
その周りに自分の結界を張り、シルフィーナの涙をぬぐって愛おしく顔を見た後、頬に接吻をした。
シルフィーナを自分の頭を自分の肩に乗せるように抱っこをし直し、いつものように左腕がシルフィーナの背中、右腕は膝裏を支え安定させる。
「おやすみなさいませ、シルフィーナ様」




