35.女神の愛
いったん止まったかに見えたガイの赤い瞳から、また涙がボロボロと零れ落ちた。
「ガイ、腕が痛いわ、手を放して」
ハッとしたガイは手を緩めた。
自由になった腕をシルフィーナは前に伸ばし、ガイの両頬をとらえた。
「ガイ、もう泣かないで。ガイ、私の大切なガイ、女神の愛は主神を守る力になるわ。でも私はそれよりも私の神族を大切にしたいの。愛したいのよ」
親指で頬に伝わる涙をぬぐい、そっとガイに接吻をした。
「シルフィーナ様、もうお体は大丈夫なのですか?私はシルフィーナ様の負担にならないのですか?」
「私たち、いつも4柱でじゃれ合ってたわよね。その時には神力の枯渇なんて無かったわ。お兄様の神族に女神の愛を与えて思ったのは、私の神族たちは私にとてもやさしく接していた。違って?」
「はい、これほど他の神族と違いがあるとは知りませんでしたが、アベルが常に、シルフィーナ様を丁重に接するように、と言っていました。私は常に我が女神を尊重するように触れさせていただいているつもりです」
「そう、だからガイが私に触れても私は大丈夫なの、おいで、私のガイ」
ためらいが見られたが、ガイはそっとシルフィーナを抱きしめ、体が溶けそうな感覚になった。
「シルフィーナ様、シルフィーナ様、お慕い申し上げております」
顔中、首筋に優しく接吻を施しガイが絞り出すような声で告げる。
胸元にも接吻をしようとして街のお嬢さんの衣装の脱がし方が分からず、神技で消し去った。
自分の衣装も脱ぎ方が分からず、一緒に神技で消した。
そしてしばらく我慢をしていたが、思い切って中に入った。
「きゃああああああ!」
シルフィーナの劈くような悲鳴が上がり、ガイはいつもと様子が違うシルフィーナに慌てた。
「シルフィーナ様?」
「動かないでぇ」
あ!っと思った、自分もいつもよりきつい。
「シルフィーナ様、いつもの大きさに戻ってください、子供の姿ではきつくて抜くことも出来ません」
シルフィーナは浅く呼吸を数度して、ゆっくり13歳の姿から20歳くらいのいつもの姿に戻ったが、まだ辛そうだ。
「大丈夫ですか?一度抜いてもよろしいですか?今日はもう止めましょう」
シルフィーナはガイにしがみ付いたまま動かない。
「・・・まだ動かないで・・・うっかりしてたわ、子供の体のままだったなんて・・・」
「申し訳ございません、私は子供のお姿と分かっていたのにそのまま入ってしまって」
シルフィーナは首をフルフルと振って
「大丈夫よ、少しの間このままでいて、痛みが引くまで、接吻をして」
「シルフィーナ様お願いがあります。フローリア様の神従にしたような接吻を私にも施してください」
あのお礼のつもりの濃厚な接吻がガイにとって一番の屈辱だったのだろう。
「ダメよ」
ガイはその言葉に衝撃を受けた。
「なぜ?あの神従にして私にはなぜダメなのです!」
「動かないでってば!・・・あの接吻の後、カイルとセムスが倒れたのは見なかったの?」
あ、そういえば、ガタンと何かが、怒りでそちらに注視をしていなかった。
「ガイには素敵な接吻を、そのあとは、女神の愛を。時間と神力はたっぷりあるわ、ゆっくり愛を注ぎ与えましょう」
ガイにとって女神の愛は実に十二日ぶりのことだった。




