2.降臨
スタニラスガ王国の王都スタニス
王都としては近隣の国々に比べると比較的大きな都市だ。
王城を囲むように貴族の邸宅が建っており、それを囲むように町がある。
都市全体をぐるりと城壁がかこっており、城門は東西南北の4か所にある。
常に人々の出入りがあり栄えているのが分かる。
その王都スタニス、スザリオ伯爵の邸宅前に神霊のシルフィーナ、準神霊のアベルとルーカスが立っていた。
「先にアベル、このお屋敷にしましょう。子供がたくさんいるようだわ、賑やかそうね」
「男の子が二人と女の子が三人ですね」
「アベルのお兄さんとお姉さんになるわね、今夜主夫婦には交尾をしてもらいましょう」
そういうとシルフィーナは邸宅に向かって少しだけ指を動かした。
「これで良し、2週間後にまた来ましょう」
まだ日が高く、平民がそれほど行きかわない貴族の邸宅前と言えど多少の人通りはある。
だが、この神霊と準神霊の存在に気が付く者はいない。
「シルフィーナ様」
アレクシウスの神使ジーンがふわりと天から降ってきたように現れた。
「ジーン、もう見つかっちゃったの?」
「はい、シルフィーナ様、お久しゅうございます」
シルフィーナは片膝をつき深々と頭を下げる神使を見下ろした。
「この国に降り立った時からお兄様の神気を感じていたわ、お兄様はお元気?」
「はい、アレクシウス様もお気づきになられました。兄君は現在この国の第二王子としてご降臨されており、現在16歳でございます」
「まあ、16歳のお兄様?」
普段は落ち着いた涼しい顔をしているシルフィーナだが、よほど可笑しかったのか花が綻ぶ様にほんの僅か微笑んだ。
「シルフィーナ様、兄君にご挨拶に伺っては?」
シルフィーナ様の後ろに控えてたルーカスが提案した。
「そうね、お兄様にお会いしたいわ、ジーン、先触れをお願い出来るかしら?」
「御意にございます」
ジーンが消えるとアベルが
「ルーカスの定着先は如何なさいますか?」
「先にアベルを定着させ、安定したのちにルーカスを定着させるわ、ルーカスそれでいい?」
「シルフィーナ様のお考えのままに」
シルフィーナはほんの少しだけ頷く。
彼女の動きはいつも最小限のようだ。
「ガイ」
「ここに」
「フローリアお姉様に、神従の定着が終わったら参ります、と伝えてきて」
「かしこまりました」
白髪、薄赤い瞳の神使は軽やかに消えた。
「さて、16歳のお兄様のお顔を拝見に参りましょうか、ふふふ」